第50話 悪魔崇拝者たちの遺跡
「そろそろチーム名を考えませんか?」
あの騒動から数日。
ベルクの傷は癒え、冒険者活動を再開していたそんなある日、ギルドの受付嬢からそんなことを言われた。
「そこまで困ってはいないが、いるものなのか?」
「お三方は人気が徐々にでてきていますので、あった方が支援してくれる方々もわかりやすくて、よろしいかと思います」
「人気......俺の魅力が世間に知れ渡っちまうな」
「俺たち、そんな人気になるようなことしたか?」
ベルクはオーギを無視してそう受付嬢に聞いた。
「かなり強いですし、チームの関係もよく、それに、魔物を捌いて料理できる能力。それはもう指名依頼がくるほど......あ、忘れてました。指名依頼がきてました」
受付嬢は紙を取り出し見せてきた。
「遺跡探索?」
「ええ、学者さんからの依頼です」
「危ないものなのか?」
「魔物が住み着いている可能性がありますね」
「その、報酬の方は......」
「数日かかる可能性があるので、かなり高いですよ。運が良ければ1日で終わりますし」
「じゃあ受けようかな」
***
「よ、よろしくお願いします......」
依頼を受けてから2日後、3人がギルドで待っていると、黒髪の小柄な女性が丸眼鏡を押さえながら走ってきて、そう言った。
「こちらこそよろしくお願いします」
「あの、敬語じゃなくても大丈夫です。わ、私は守ってもらう側なので......」
「そうか。あ、俺はベルクだ。隣のこいつはオーギで、この子がレナだ」
「あ、わ、私はコル」
4人は自己紹介を終え、目的地へと向かう。
王都の外の、舗装されていない獣道を4人は歩く。
「えっと、今日む、向かうのは、多分悪魔を崇拝している遺跡です」
「悪魔崇拝について研究しているのか?」
「いえ、ほ、本当は嫌ですけど、でも遺跡を調べないわけには行かないので......。まぁ、嫌なし、仕事を新人だから押し付けられただけなんですけど」
少し悲しそうな顔のコル。
「コルは優しいんだね。レナだったら駄々こねちゃうもん」
「そ、そうですかね。あ、ありがとうございます。あ、見えてきました。あれです」
コルの指差す方向には、小さな60センチ四方ほどの立方体の石の建物があった。
「あんなに小さいものなのか。でも、ギルドでは数日かかるって言われたんだけどな」
「し、下に広い空間があるので」
そう言われて、建物の中を覗くと、下に続く階段があった。
「それじゃあさっそく行くか」
進もうとする3人をコルが引き留めた。
「ちょっ、ちょっと待って......」
膝に手を置き、肩で呼吸するコルは、眼鏡をとって、長髪を耳にかける。少し汗が滲む額は、彼女が疲れていることを示していた。
「休憩しよっか」
みんなで石の遺跡に寄りかかり、座り込んだ。
ベルクはふと立ち上がり、鞄から水筒とコップ、そして布袋を取り出した。
「みんな汗かいただろ?これとこれで塩分補給して」
ベルクは1人1人にアイスティーとクッキーを手渡す。そして、レモンを輪切りにし、コップのふちにさしてあげた。
「あ、ありがとうございます」
コルはアイスティーに口をつける。
「おいしい......。私心配だったんです。そ、その、私って迷惑かけることが多くて、こういう依頼しても雑に扱われることも多くて......」
「こんな綺麗なお姉さんを雑に扱うなんてなんて野郎だ!」
急にオーギが立ち上がりそう叫ぶ。
「そうだ!そうだ!」
レナはコルの肩に手を回してオーギに同調した。
***
4人は遺跡の中へと入った。
太陽の光は届くはずがなく、頼りないランタンの灯りだけが真っ暗な通路をわずかに照らす。長年こもった空気が埃っぽい。
「ほんとうにいいの?地図なら私が書くよ」
敬語をやめたコルが、紙とペンを握り目を細めるベルクに言った。
「大丈夫。こういうの好きだから」
ベルクのその言葉を聞き、コルは遺跡の所々にある石碑を見ながら、何かを紙に書き写す。
「ねえ、何が書いてあるの?」
「知らない方がいいかも。面白いものがあったら教えるね」
静かな遺跡には、カリカリと紙とペンが擦れる音だけが響く。
「なんか不気味だな......」
「オーギビビってるのか?」
「ち、違うし!」
「でも、魔物が出ることもあるらしいし、警戒して損はないかもな」
そんなことを話していると、空気を読んだかのように何者かの足音が近づいてきた。
「コル下がって!」
コルを後ろに庇い前を照らした。
「いやぁぁぁ!」
叫ぶレナ。その先には骸骨が立っていた。
「気持ち悪っ!」
オーギも少したじろいでしまったので、ベルクがその骸骨を斬り刻む。
「3人とも大丈夫か?」
粉々になった骸骨を見て3人はほっと胸を撫で下ろす。
「これ料理できそう?」
レナが意味のわからない質問をしてくる。
「仮にできたとしても病気になるぞ」
「私もベルクさんの料理見てみたかった」
「食材は持ってきてるから安心してくれ」
***
ぐぅぅぅ。
レナのお腹の音がお昼を告げた。
「お昼にするか」
ベルクは鞄から食材や調理器具を取り出し、準備を始める。
その近くでレナとコルが座っていた。
「纏う波は全てが持つ。神が前を見、後につける。悪しき波は自然へと返し、良き波は神へと帰す?どんな意味?」
レナが勝手にコルの書いた文字を読む。
「人はね、前世の行いに応じて正のオーラか負のオーラを纏うの。それでね、悪いオーラを纏った人は昔、善行を積ませるために災害を抑えるための生贄に使われてね、来世では正のオーラを纏えるようにしていたっていうのが、今まで発見された遺跡の文献の内容だったんだけど」
「だけど?」
「この遺跡にはね、この負のオーラを纏った人を、悪魔崇拝の儀式をするための生贄にしてるの」
「オーラって見えるの?」
「見えないけど、占いでその人のオーラがわかる人たちが、何人もいたらしいよ」
「それってほんとうなの?」
「どうなんだろうね」
ニコッと笑いコルはそう言った。
「2人ともーお昼できたぞ」
コルは紙を片付けて、レナと共にベルクとオーギの方へ歩いて行った。




