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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第1章 ハイドニア帝国編①
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第5話 ワイバーンの尾のステーキ

ベルクとレナは、ワイバーンを出す珍しい店、狼の大皿に来ていた。

 油を敷いたフライパンに肉を並べながら、店主が口を開く。


「お前さんが本当に冒険者狩りを捕まえてくれるなんて思わなかったよ」


「ほとんどオスカルって言う奴が捕まえたようなもんだけどな」


「オスカルはかなりの腕だもんな」

 

 うんうんと頷く店主。

 オスカルを知っているような口ぶりに違和感を覚える。

 もしかして......。


「なぁ、もしかしてワイバーンを安く売ってくれる知り合いの冒険者っていうのは――」


「オスカルのことさ」


「でも前、冒険者狩りに襲われて怪我したって言ってなかったか?」


「あれは調査してんのを悟られないための嘘らしいわ」


「敵を騙すにはまず味方からってことか」


 店主は火を止め皿に肉を並べる。


「できたぞ、ワイバーンの尾のステーキだ」


 ベルクとレナの前に料理が並べられる。肉の香ばしい匂いが店中に広がった。

 

「まずそれで素材の味を感じてくれ。」

 

 店主は先ほど肉を焼いたフライパンに、調味料を入れ何かを作りながらそう言う。


 ナイフを動かし肉に切れ目が入ると、そこから肉汁があふれる。

 一切れ食べてみる。塩コショウのシンプルな味の肉の中心部は、弾力があり噛めば噛むほど肉の味が染み出てきた。外側は、脂が多く、とても柔らかい。


 芳ばしい香りのするフライパンを持った店主が、肉にフライパンの中身をかける。ステーキソースを作っていたのか。

 

 よく肉に絡むドロっとしたソースと共に口へ運ぶ。


「うまいだろ。玉ねぎとニンニクを使ったソースだ」

 

 玉ねぎの甘みと、ニンニクの香りが肉に合う。

食べる手を止めない俺を見て、店主は満足そうに笑う。


「ほんとに美味しいなこれ、頑張った甲斐があったよ」

 

「はっはっはっ、そう言ってくれて嬉しいよ」

 

 豪快に笑う店主に、空になった皿を渡す。

 

 隣を見るとレナが口の周りにソースをつけているのに気づかないほど夢中になってステーキを食べていた。

 

「口の周りについてるぞ」


 口の周りを丁寧に拭いてあげる。


「んっ、ありがとー」


 拙い食べ方のせいで再び口の周りにソースがつく。


「そういえば、お前さん珍しい食べ物が好きなんだろ?」


 レナを見て笑っていた俺に店主が話しかけてくきた。


「ああ、食べ物のためにそこら中旅するくらいにはすきだぞ」


「それなら、俺と一緒に俺の故郷の伝統料理食べに行かないか?」


「行く!もちろん行くぞ!」


「おいおい、詳しい話も聞かずに返事するもんじゃないぞ」


 そう言い店主は詳しい話を始める。


「俺は2週間後一回故郷に帰ろうと思ってるんだが、そこでお前さんに故郷までの道の護衛を頼みたいんだ」


「その伝統料理とやらを食べられるなら、俺はなんでもするさ」


「はっはっはっ、頼もしいな」


 会話が途切れた頃ちょうどレナが食べ終わった。再びレナの口を拭き、お代を払う。


「そうだ、俺の故郷はかなり寒いから、コートなんかを準備しておいてくれ」


「ああ、わかった」


 そう言い店主に別れを告げ、店を後にした。


「ベルク、またステーキ食べようね」


「そうだな、また食べに行こう」


 心地の良い昼下がり、仲良く並ぶ2人を暖かな陽気が包む。


 お腹も心も満たされた2人が宿屋に帰ると、宿屋のおばさんに声をかけられる。


「あんた、長いことうちの宿屋使ってくれてありがとねー。よかったらこれいらないかしら?」


 おばさんが、大きく膨らんだ布袋を差し出してくる。

 受け取って中を覗くと、大量のジャガイモが入っていた。


「こんなの貰っていいんですか?」


「いいわよいいわよ、どうせ余り物だしね。あと、声をかけてくれれば調理室も使っていいわよ」


「何から何までありがとうございます」

 

 これがあれば......食べたばかりなのに考えただけで涎が溢れ出てくる。

 ニコニコしながら部屋に戻るとレナが声をかけてくる。


「レナあんまりジャガイモ好きじゃない」


「おいしいぞ、ジャガイモ」

 

「ジャガイモってなんかシャリシャリしてて土くさいじゃん」


 ん?シャリシャリしてて土臭い......?

 そうか、奴隷だった時、しっかり調理されてないのを食べていたのか。辛い思いしてきたんだな......。


「じゃあ俺がなるべく美味しいの作るから、気が向いたら食べてね」


 わかったと、小さく頷くレナ。

 作るなら、子供が好きそうなものがいいよな。

 そうだ。

 ベルクは市場に行ったときのことを思い出す。

 あれがあれば......。


「レナ、ちょっと市場に行ってくるから待ってて」


「レナも行く......行っちゃった」

 

 ベルクは、レナが話終わる前に駆け足で部屋を出ていった。


「もう、ベルクがいないとつまんなーい」

 


 市場に来たベルクは、一直線にお目当てのお店をまわっていく。


「卵に油にチーズにお酢、ひき肉、チーズ。よし、全部買えたな。待ってろよレナ、美味しいの食べさせてあげるからな」


 ベルクはすぐに帰路につき、宿屋に戻った。

 部屋に入った瞬間レナが飛びついてくる。


「なんでレナおいてくの」


 頬を膨らませ怒るレナをなだめる。


「ごめんごめん、次は連れてってあげるから」


「ぎゅーってして。そしたら許す」


「わかった、わかった」


 手を横に広げているレナを抱きしめてあげる。

 

「へへへ、ありがと」


 その後、散歩をしたり、昼寝をしたりなど、ダラダラ過ごしているとあっという間に夜になった。


 レナがお腹が空いたことを確認し、調理場を借りる。

 よし、作るか。

 まずは、卵を割り入れ塩を入れて混ぜる。そこに、お酢を入れてさらにかき混ぜる。そのあと油を少しずつ入れまた混ぜる。

 これで、マヨネーズの完成。


「なにそれー」


「これはね、美味しい調味料だよ」


 興味津々にマヨネーズを覗き込むレナに、スプーンで少しすくったマヨネーズを渡した。


「ちょっとすっぱくておいしい」


「気に入ってくれてよかったよ」

 

 次は、ジャガイモを蒸して、ひき肉を炒める。その二つを皿に入れて、マヨネーズと細かくしたチーズをかけて、魔力オーブンで焼き色がつくまで焼く。


 チーズのまろやかな匂いが香る、ひき肉とジャガイモのマヨグラタン完成。

 

「よし、できた」


「もうたべてもいい?」


 隣で尻尾を振って、キラキラした目でグラタンを見つめるレナが言った。


「ああ、いいぞ」


 いい匂いにつられ、冷まさずにグラタンを食べるレナ。熱かったのか顔を赤らめハフハフ言いながらたべている。

 よほど美味しかったのか、満面の笑みでこちらに話しかけてくる。


「ジャガイモってこんなに美味しかったんだね」


 笑顔を見るとこっちまで嬉しくなる。

 

 俺も食べてみるか。

 熱々のグラタンを口に入れる。ホクホクのジャガイモがチーズとマヨネーズによく合う。それにひき肉の旨みもあって、これならいくらでも食べられるな。


「もうおなかいっぱーい」


 あの後も勢いよく食べ続け、2人前をぺろりと平らげたレナが言う。


「本当に美味しかったな」


 その後満腹による眠気に襲われて、2人とも満足そうな顔で、朝まで眠った。

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