第45話 ジャイアントリザードのサンドイッチ
ティルシ王国、150年ほど前に魔道回路という魔道具が発明されてから目まぐるしい発展を見せた国。
ベルク達は長い馬車での旅を終えティルシ王国に来ていた。
「冒険者になるぞー!」
「おー!」
「冒険者ギルドに行くのは宿を探してからな」
盛り上がるオーギとレナにベルクは冷静にそう返した。
3人は宿屋の並ぶ通りを歩き、少し高い宿へと入る。宿の部屋には様々な魔道具が並んでいた。
そして、ベルクは一目散にキッチンに行く。
「これもしかして......」
そこには大きな箱が置いてあった。それを開けると中がひんやりしている。
これは、冷蔵庫だ。それに、キッチンテーブルのこれはミキサー?す、すごい......。魔力をこんな形で役立てているのか。
「ベルクこっち来て!」
オーギの指差す方向を見ると映像の映る板があった。仕組みは違えどそれはまさにテレビそのものだった。
「すごいな......」
テレビには冒険者の活動の映像を見ることができた。それらの映像は大きくふたつに分けられ、遺跡のような場所を探索するものと魔物を討伐するものがあった。
そして、どれも研究資料など、そういうもの寄りの映像ではなく、娯楽として見る映像という感じだった。
「2人ともそろそろギルドに行くぞ」
シーフ王国よりも涼しいティルシ王国の王都レナーテで、優しい日差しに照らされながら3人はギルドへの道を歩く。
ギルドはかなり賑わいを見せており、受付にやっとのことでたどり着いた。
「依頼を受けたいんだが」
「冒険者ライセンスの提示をお願いします」
「今日が初めてで持ってなくて......」
「それでしたらあちらで手続きをお願いします」
案内された方向へ向かい手続きを行う。
手続きは簡単なもので、魔道具に血を垂らすとライセンスが生成された。その後、この国での犯罪歴や、魔法について幾つか質問され、無事ライセンスをもらえた。
「すみません」
ライセンスを持ち再び受付に行こうとしたところで声をかけられる。
「撮影などは行われますか?」
撮影?ああ、さっき見たあの映像のことか。
「何か利点があったりするのか?」
「そうですね。市民から支援のお金がもらえたり、知名度が上がって個人向けの依頼が来て稼ぎが増えたりと、色々な利点があると思います」
押しに弱いベルクは少し高い撮影する機材を買い、受付へと向かう。
カメラは空に浮き、自動で後を追いかけて撮影してくれるらしく、リアルタイムで映像が一般に公開される仕組みらしい。
ベルクは今度こそ依頼を受けに行く。
「この依頼をお願いしたい」
「初心者には向きませんが大丈夫ですか?」
「別の国で冒険者をやっていたから大丈夫だと思う」
「そうだったんですね。それなら受理いたします。本日から2日以内に成功の報告がない場合失敗として処理いたします。それと、失敗した場合も必ずギルドに報告してください」
説明をしっかりと聞いた後、早速準備をして王都の外へ行く。
「2人とも準備はいいか?」
「うん!」
「任せとけ!」
ベルクは依頼を確認する。
「ジャイアントリザード3匹の討伐か。まあ要するにでかいトカゲだな。毒持ちの」
「毒持ってるのは怖いな」
少し怖がるオーギ。
「大丈夫。死ぬような毒じゃないし、薬は買ってきた」
「それじゃあ行こー!」
レナがそう言い、3人は王都の外のジャイアントリザードがいる森へ入った。少し暗い森は、ざわめき立ち緊張感を与えてくる。
しばらく歩くもなかなか見つかることはない。
「うーん、見つかんないね」
小石を蹴りながらレナが呟いた。2人はもう森の暗さに慣れ、少し退屈していた。
別の魔物には時々会うものの、お目当てのジャイアントリザードにはまだ出会えない。
「あ!ベルクの後ろにジャイアントリザードが!」
オーギがそう叫び、ベルクは咄嗟に後ろを向く。が、何もいない。
「おいオーギ、ふざけるな」
ベルクがオーギの頬を摘む。
「冗談だってー」
笑うオーギの頬を掴むベルクの手が急に離れ、ベルクの目線がオーギの後ろに向く。
「オーギ......後ろ......」
「へへ、騙されないぞ」
そう言ったオーギの首元に生温かい空気が当たる。少し血生臭いその空気が流れてきた方向を振り向いたオーギは叫ぶ。
「うわぁぁぁ!」
ベルクは身をひるがえし、逃げるオーギを後ろに庇い笑う。
「ははは、情けない声だな。さっきのバチが当たったんだな」
「ううう、くっそー」
3人は少し距離を取り、武器を構える。3人の目の前には、ジャイアントリザードがちょうど3匹。
「レナとオーギは左の1匹をの頼む!」
「わかった!」
「お前らのせいで恥かいたんだ。覚悟しろ!」
オーギは投げナイフを2本取り出し投げた。1本は右目に、もう1本は前足に刺さった。
「ナイスオーギ君!」
レナがそう言いながら、ジャイアントリザードを右から攻める。
「いっくよー!【水魔法 銀の水飛沫】」
水を纏う巨大な戦鎚が、ジャイアントリザードに襲いかかる。
素早い動きでジャイアントリザードは避けるも、後ろ足に命中し少しよろめく。
それを見たレナが再び戦鎚を振り上げると......。
「シャーーー!」
ジャイアントリザードが大口を開けて、レナに襲いかかろうとした。
「まずい!【生命創造魔法妄想癖の独創的創造】」
ジャイアントリザードの目と前足に刺さったナイフに手足が生え、左右に刀身を揺さぶり始めた。そのせいで、さらに深く刺さったナイフは、ジャイアントリザードの攻撃を止める。
「ありがと、助かった」
レナは気を取り直し、戦鎚をジャイアントリザードに思いっきり振り下ろした。
「つ、疲れたぁー」
「ベルク大丈夫ー?」
レナがベルクの方を見ると、ちょうど2匹目の首を刀で斬り落としていた。
「これで終わりだな。牙と毒腺が売れるらしいからそこの部分と少しだけ肉をもらっていくぞ」
そう言いテキパキと作業を始めるベルク。
「ベルク強すぎ」
「もう俺疲れたよ」
木陰で座る2人を背に、ベルクは素早く解体を終えた。
「2人ともお腹空かないか?」
そう言いベルクは卵とレタスとパンを取り出した。
「レナめちゃくちゃ空いてるよー」
「俺もー!」
ベルクはその言葉を聞き、腕をまくってジャイアントリザードの肉をパンほどの大きさに切り分け、オリーブオイルと塩の入った袋に入れる。
その後に鍋に水を入れ、卵を煮ていく。
「今日はどんなご飯?」
ベルクの背後からから覆い被さるように寄りかかってくるレナが、鍋の中を覗く。
「今日はサンドイッチだな」
「俺3つは食べる!」
「レナはもっと!」
「わかった。たくさん作るよ」
ベルクは茹でた卵の殻を剥き、それをフォークで押しつぶす。その後そこにマヨネーズとレモン汁を垂らし、そして高そうな小瓶に入った黒い粉を入れる。
「何それ?」
「これは胡椒っていう高い香辛料だよ」
卵を混ぜ終わった後、袋から肉を取り出し、焼いていく。
いい感じに焼き色がついたところで、パンにバターを塗って肉とレタスとソースを挟んで。
「ジャイアントリザードとタマゴのサンドイッチの完成だ」
ベルクは切り忘れてたカメラを切って、3人は昼食を楽しんだ。




