第44話 急な旅立ち
ベルクとアーシュはレナとオーギを殺そうとする男3人に怒っていた。
「いくぞアーシュ」
「ああ、捻り潰すぞ」
ベルクは刀を抜き、素早く振り上げる。それを見て、小柄な男がロングソードを突き刺そうとする。それをベルクは受け流し、剣を持つ手をへし折った。
「い、痛いかもです」
ひしゃげた指は、もう剣を持つことはできなかった。それにもかかわらず、ベルクは小柄な男の脇腹に峰打ちを決める。メキメキという音をたてながら肋骨が折れた。
「次はどいつだ?」
そう言うベルクの横からアーシュが飛び出す。
「あんまり私たちを舐めるな!」
山羊の被り物のをした男が振り回す剣の先を踏み台にし、アーシュは飛び蹴りを首に喰らわす。
「うぐぅぅ。コヒュコヒュ......」
まともに呼吸できない山羊の被り物をした男は倒れ込んだ。
「まだやるか?」
ベルクが倒れた小柄な男を蹴りながら言った。
「退散退散退散。早く逃げなければ」
情けなく2人を抱えて大男は逃げて行った。
「レナ!オーギ!怪我は?」
「ないよ。大丈夫......」
「ごめん、俺たち何にもできなくて......」
落ち込む2人をベルクは抱く。
「俺が悪かったんだ。ごめん」
「そうだぞ。飲み過ぎたベルクが悪いんだ」
「アーシュだって寝てたじゃないか」
まだ酔いの覚めない2人を連れて帰路を急いだ。ベルクに肩を貸すレナとオーギは改めてベルクの強さを実感し、誇らしげな気持ちになった。
***
レナとオーギはベルクをベットに寝かせ、窓から外を見ていた。外には夕陽を背にして飛ぶ鳥が甲高く鳴いている。その声のせいか、ベルクが体を起こした。
「今日は疲れたな」
「もうあんな奴らに絡まれるのはごめんだよ」
「レナも疲れたな」
「にしても、あの男たちはなんで2人を襲ってたんだ?」
「それがベルクを襲ってたみたいなの」
「俺を?」
ベルクは少し悩んだ様子を見せた後決心する。
「明日この国を出るぞ」
ベルクはベルが王都に邪教徒がいたと話していたことを思い出す。あの山羊の被り物から判断するにあの男たちが邪教徒だろうと思った。そういう輩は、周りの人間も傷つけるだろう。だからベルクはこの国を出る判断をしたのだった。
***
翌日ベルクたちは急いで荷造りをする。アーシュたちにだけ会い、アルスにはアーシュたちからベルクたちが王都を出ることを伝えてもらうことにした。
「行っちゃうんですね......」
「みんなを巻き込むわけにはいかない」
「次はどこの国に行くんだ?」
「ティルシ王国っていう国をある人から教えてもらってね。魔道具作りが盛んな国らしいんだ」
「ティルシ王国か。時間があったら行くよ」
アーシュとラニアに別れを告げ、急いで王都を出る。
***
王都の一見普通の建物の地下に、怪しい施設があった。壁には逆五芒星が書きなぐられており、教壇のような場所にはフードを被った老人が立っていた。
「貴方達......なぜ手ぶらで帰ってきているのですか?」
老人が3人の男にそう話す。
「すみませんすみませんすみません司祭様」
「捧げの儀式で魔力がなかったからかもしれないです」
「魔法なしで連れ去るには強過ぎた」
「それはルシファー様への侮辱と受け取っても?」
司祭と呼ばれるその老人がものすごい気迫で男達に言う。
「い、いえ」
「すみませんすみませんすみません」
「侮辱は決してしないかもです」
「それでは引き続きあの男を追いなさい。貴方達の他にも2人の信者をつけますから」
「「「ありがとうございます司祭」」」
***
3人はティルシ王国行きの馬車へと乗り込んだ。
ティルシ王国はシーフ王国の北、ハイドニア帝国の南東に隣接する国で、シーフ王国からティルシ王国まで馬車を乗り換えずに行けるらしい。
「お客さんずいぶん物騒な武器持ってますけど、もしかして冒険者になるんですか?」
「ああ」
「シーフ王国と違って、冒険者ギルドがあるのでいいと思いますよ」
「ティルシ王国のギルドはやっぱり自警団みたいな感じなのか?」
「ティルシ王国に隣接するハイドニア帝国なんかの騎士団は、戦争と領地の管理を主な仕事としますが、ティルシ王国は自警団的役割を騎士団が担うので、冒険者の仕事は基本魔物を討伐することですね」
「ねえねえ、魔道具が沢山あるのって本当?」
御者が説明をし終わった後に、レナがそう聞いた。
「外から来た人には驚くようなものばかりだと思いますよ。まだ世界に出回ってない魔道具が沢山ありますから」
「楽しみー!」
ベルク達はまだ、5人の邪教徒達が後を追ってきていることに気づいてはいなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これで第4章は完結となります。
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