第42話 みんなで特訓
朝ごはんを終えて帰ってきたオーギとレナはベルクに何かをお願いしていた。
「ねぇ行きたいー!」
「そうだー!連れてけー!」
「うーん。でも危ないし......」
ベルクは2人に腕をひっぱられていた。
1時間ほど前、アーシュとラニアが一緒にドラゴン狩りに行かないかと誘いに来て、それを聞いた2人が私たちも行きたいと言ってくるのだ。
「あーもうわかったよ」
ベルクはため息をつきながらそう言った。
「まじ?やったー!」
「ベルクありがと!」
抱きついてくる2人にベルクは付け加える。
「ただし、俺が2人を鍛える」
ベルクはドラゴン狩りは1週間後とアーシュが言っていたので、それまでに2人が怪我をしないように鍛えようと思ったのだった。
「じゃあまず武器でも選ぶか」
はしゃぐ2人を連れて武器屋に行く。
「まず、自分に合う重さを選ぶんだ。片手で振れるくらいがちょうどいいと思う」
そう言うと、レナが自分の身長ほどの戦鎚を持ってきた。
「話聞いてたか?」
「聞いてたよ!ほら見て」
巨大な戦鎚を片手で振り始めるレナ。
「......?」
固まるベルク。
そういえば亜人は力が強いって聞いたことがあるような......。
「ま、まあいいんじゃないかな......ははは......」
レナが喜んで戦鎚を持ってとぶ。
柄が黒いその戦鎚は先端の銀色のつちがとても大きく、振り下ろされたらひとたまりもなさそうだとベルクは思った。
「これよくない?」
今度はオーギがベルクの身長ほどのバスターソードを持ってくる。
「それはいくらなんでも重すぎるぞ」
オーギは剣を持ち上げるが、手がプルプル震えていて両手で構えるのがやっとだった。
「はあはあ、も、持てた......」
「振れないだろ。このショートソードとかにしたら?」
「わかった......」
意外にも聞き分けのいいオーギは渋々ショートソードを取る。そのショートソードはベルクが勧めるだけあって、無駄な装飾もなく鋭い刃が使いやすさを物語っていた。
ベルクはオーギにショートソードとは別に投げナイフをいくつか買った。
3人は武器を持って、王都の外へと出た。
「猶予は1週間しかない。だから、身を守る方法を中心に教えるからな」
ベルクが長めの木の棒を拾いながらそう言う。
「なにするの?」
レナがそう聞くと、ベルクはブンと音を鳴らしながら棒を振って答えた。
「俺に思いっきり攻撃してこい。俺に攻撃が当てられたらドラゴン狩りに連れて行ってやるよ。その代わり、俺の持つ棒が体に3回当たったら負けだぞ」
そう言ってベルクは、木の棒を振り上げ近づいてくる。そのベルクに振り下ろされた戦鎚は空を切り、その瞬間に尻に衝撃が走る。
「ひゃっ。なんで当たらないの!?」
「武器で攻撃した後の隙が大きすぎる。常に攻撃の後のことを考えるんだ。ほらオーギもかかってこい」
「怪我しても知らないぞ!」
オーギはそう言い放ち、デタラメに剣を振り回す。ベルクはその剣を避け、オーギの手元を叩く。
「いてっ!つ、強っ!」
「デタラメに振り回すな。相手の攻撃が出る瞬間を捉えるか、目なり首なり急所を狙うんだ」
その後もベルクの特訓は続く。
5セットが終わった頃、2人はもうへとへとだった。
「疲れたよー」
「ベルクお尻ばっか狙い過ぎ」
「そこが1番痛くないだろ?それに後ろに注意しなさ過ぎだ」
地面に寝転がる2人は、いまだに真上にある太陽を見つめ、全然時間が経っていないことに気づく。
「次は魔法の使い方だな」
「なんか楽そう!」
オーギの顔が少し明るくなる。
「確かにさっきよりは楽かもな」
「レナつかえないよ?」
レナは心配そうな声でそう言う。
「じゃあ素振りしようか」
「やだぁぁ」
「うーん、でも魔法が使えるようになる方法なんてわからないしな。迷信めいたやつなら何個か知ってるが......」
「それやる!」
「痛いぞ」
「が、我慢するよ」
そう言ったレナをベルクは立たせる。そこから5メートルほどのところにベルクは行き、レナに向かって手を伸ばした。
「絶対動くなよ。【火精霊魔法夜明けの光芒】」
レナの髪を掠める炎。あまりの速さに反応できず、恐怖を感じる。
「ひ、ひええ」
「命の危機を感じれば使えるって言われたことがあったんだが、どうだ?使えそうか?」
「な、なんか使えそう......」
「まじかよ......迷信かと思ってた。どんな魔法だ?」
誇らしげな表情で魔法を唱え始めた。
「見てて!【水魔法 銀の水飛沫】」
レナの持つ戦鎚が水を纏い、それを地面に振り下ろすと戦鎚の先に水が集まり鋭くなる。それは地面を大きく抉った。
「うう、疲れたよー」
レナフラフラと歩き、ベルクに寄りかかる。
「すげえ!」
オーギがレナにそう言う。
「へへ、レナすごいでしょ」
「戦い向きの魔法だな」
レナを木陰に寝かせて、次はオーギの魔法を見る。
「オーギはいくつ魔法が使えるんだ?」
「3つ......いや2つ。3つ目は消費魔力が多過ぎて使えたことがない」
「わかった。妄想癖の独創的創造を上手く使えるようにしよう」
ベルクはオーギに投げナイフを1つ渡す。
「どうするんだ?」
「死角からの攻撃をできるようにする」
そう言った後、ベルクはオーギに何かを説明する。そしてベルクはオーギから少し離れた。
「行くよ!【生命創造魔法妄想癖の独創的創造】」
持っていたナイフが動き出し、手足が生える。それをオーギはベルクに向かって投げた。だが、そのナイフはベルクの横を通り、ベルクには当たらない。
横を通り抜けたナイフはベルクの背後の木にあたり、180度回転してベルクの背後に飛ぶ。それをベルクが避けて行った。
「うまいぞオーギ!」
ナイフはベルクの背後で、足で自分を弾き、とぶ方向を変えたのだった。
「やったぜ!」
そんな感じの特訓を1週間続け、ドラゴン狩りの日になった。
【魔法解説】
銀の水飛沫
レナの持つ戦鎚に水を纏わせる魔法。
攻撃範囲、攻撃力共に上昇させる。
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