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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第4章 シーフ王国編②
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第40話 悪魔は微笑む

 少し生ぬるい風が肌に当たり不快感をもたらす。そんな夜にベルクは宿の外に出る。


「やあベルク」


「なにを話すんだ?」


「そんなに焦らないで。ほら、一緒に歩きながら話そ」


 ベルクが隣に来たのを確認したベルは、ゆっくりと歩き始めた。


「ベルクは悪魔が召喚されたのを見たことあるんでしょ?」


 唐突なベルの質問。


「ああ」


 かつてエドワードという男が、カルロスという指名手配犯に悪魔にされていた。そしてベルクはそれと戦い勝った。それをベルクは思い出す。


「なんだっけ、カルロス?あれの悪魔を呼び出す魔法は成功率がすごく低い。高確率で弱点を持つ下級悪魔を呼び出しちゃう」


「成功したら?」


 興味本位でそんなことを聞く。


「成功すれば、本来の力を持った悪魔を現世に呼び出すことになるね」


 白い歯を見せそう言うベルは少し恐ろしかった。


「それね、普通の人でも悪魔を呼び出せるんだよね。カルロスとか言うやつの魔法とは違って、下級悪魔を呼び出すことすら困難を極めるんだけどね」


「それに俺となんの関係が?」


「言わなきゃいけない事が2つ」


 ベルクの質問を無視してベルは言う。


「まずひとつ、ベルクは負のオーラを纏いすぎてるんだよね」


「負のオーラ?」


「うん。前世で悪いことをした分、神が罰として与えるんだ。それを纏ってると、不幸なことに巻き込まれちゃうんだよね」


 前世。その言葉を聞いて少しドキッとする。


「あれ?もしかして前世の記憶が?じゃあ人に優しくするのは、自分を許したいから?」


「や、やめてくれ」


「なんだかベルクの人間っぽい部分知れて楽しいよ」

 

 悪戯好きの子供のように笑うベル。


「あ、それとね、ふたつ目は僕が悪魔ってことかな。それも上位のね」


「そうなのか」


「あんまり驚かないんだね」


「普通の人間が人の心読んだりしないだろ。それにあの禁忌魔法ってやつも」


「ははっ、確かに。それでね、ベルクの負のオーラは悪魔とかそういうものも寄せ付けちゃうんだよね」


「だから今日ベルと会ったのか」


「そうだよ。もしかして偶然だと思ってた?ベルクが不幸な目に遭うのも、僕に働いてる店でばったり遭うのも全部原因があるんだよ。因果律ってやつさ」


「なんでそんな事を教えるんだ」


 肩をすくめやれやれと言いたげな顔をするベル。


「単純にベルクが好きだからだよ。料理上手いし優しいしね。ていうか、僕が知らない料理を作れるのは前世の記憶があるからかー」 


 ベルは1人で勝手に納得したようだった。


「そういえばベルがくれた魔法は?」


「あれは悪魔にも多少効くものだよ。アイスクリームのお礼さ」


 いつのまにか宿の前に戻ってきた2人。


「僕が話したいのはこのくらいかな?」


「じゃあな」


「そうだ、ここら辺に邪教徒たちがいるらしいから気をつけてね。あとこれあげるね。じゃあねー」


 ベルからおそらく呪いを解くための小瓶を受け取り、立ち去るベルの後ろ姿も見ずに宿へと戻った。部屋に入ると、レナとオーギはとっくに眠っていた。

 2人が眠るのを見ながら、ベルの言葉が頭に浮かぶ。


『前世で悪いことをした分、神が罰として与えるんだ』


 ベルクは鞄から酒を取り出しひとくち含む。いつもよりも苦い酒を飲みながら昔のことに思いを馳せる。

 ベルクは前世、地球の日本という所に住んでいた。


「今日は帰れそうだな」


 モニターの立ち並ぶ仕事場で、1人の男がそう呟いた。


 今週は久しぶりに土日が休みだし、家族サービスしちゃおうかな。


 そんなことを考え、終わりかけの仕事に取り組む。

 少し時間が経ち、手をぐっと伸ばして欠伸をする。腕時計を見ればまだ18時。しかし、男は帰る準備を始めた。


 会社から出た男は、電車に乗り帰路を急ぐ。


 早くつかないかな。


 男には妻と子供がいた。子供は1歳になったばかりで、とても可愛い。

 

 家族のことを思っていると、あっという間に家に着く。扉を開けて、靴を脱ごうと足元を見た時、見たことのない男ものの靴があった。

 男はこの時、さほど給料がないにも関わらずブランド品を持っていたり、息子を実家に預けてたまに外出することを思い出した。

 

 でも、妻に限ってそんなことするわけが......。


 廊下の奥に進むに連れて、その足取りが重くなる。寝室の方で、妻の声が聞こえてきた。その声は、男を絶望の底へと突き落とした。


「な、なに勝手に入ってきてるのよ!」


「お、お前.....浮気してたのか?」


「そうよ!あんたが寂しい思いをさせるからよ!」


「こいつがお前の言ってたくそ旦那か?ハハっお前の息子はな、お前と血が繋がってないの知ってるかー?」


「ちょっとそれは......」


「......」


 男は押し黙ったままその場を動かない。しかし、男の中で何かが壊れた。


 

 今日未明、〇〇市の△△交番に『妻と子供そして男を1人殺した』という通報が寄せられました。

 警察が現場に向かった所3人の遺体が発見され――



 俺は妻のために自由を殺した。朝から晩まで働き詰めた。

 俺は家族のために自分の中の男を殺した。妻以外の女性には特別な感情を寄せなかった。

 俺は家族のためにたくさんたくさん殺してきた。でも、裏切られた。

 

 俺は1人の男を殺した。俺を罵倒するその汚い口から血を吐かせた。

 俺は妻を殺した。男に汚されたその体を刺した。


 そうして俺は、この世の不条理に殺された。


 

 計2人を殺害した死刑囚。彼は死に、別の世界で産声を上げた。


***


 今冷静になって思う。俺はクズだった。そんな俺が、2人の子供と一緒に生活していていいのか?

 

「ベルク?」


 突如不安に襲われたベルクに、寝ぼけたレナが声をかける。


 俺は何を思ってたんだ。この子達は俺がいなくなったら生きていけない。だから俺は、自信を持って育てなくちゃいけないんだ......。だからきっと、一緒にいても......。


「寝ないの?」


「今日は、寝なくてもいいかな」


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