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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第3章 シーフ王国編①
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第36話 荒く卑劣で美しい剣技

 真上に上がる眩しい太陽、その恩恵を受けられない暗い道の影にベルクたちは隠れていた。


「これ本当にすごいな」


 ベルクは右耳につけた魔道具を撫でながら言った。

 その魔道具は補聴器のような形をしており、耳にピッタリとくっついている。


「俺とおっさんは準備できた」


 隣にいるカシウスの声が右耳の魔道具から聞こえてくる。


「了解」


 姿の見えないホトの声も魔道具から発せられた。


 何かのお店の裏口だろうか。路地裏に面した壁に取り付けられた扉がキィキィと音を立て開く。

 

「チッ、しけてんなぁ」


「あと2店あるし、大丈夫でしょ」


 見たことのない黒フードの男2人。1人は小柄で、もう1人はガタイがいい。


「【剣技魔法 白般若(ステレオタイプド・オーガ)】」


 魔法を唱えるとカシウスの手に般若の面があった。それを被り刀を抜き言う。


「作戦を決行する。行くぞおっさん」


「ああ」


 歩く2人をベルクとカシウスは刀で斬りつける。


「【防御魔法 完全無欠の防御(アブソリュート・プロテクション)】あぶねえじゃねえかお前ら」


 大男の腕の直径15センチほどの盾に刀を弾かれる。


「やべ。僕帰る」


 小柄な男がベルクたちと真反対の道を走っていく。


「おっさん!弱そうなあいつを追いかけてくれ!」


「わかった、ここは任せる」


 大男の横を通り、追いかけようと走る。


「通らせるわけねぇだろ」


 腕を大きく横に広げる大男。


「邪魔だ」


 そいつを蹴り飛ばしそう言い放った。


「おっさん意外とやるな」


 そのままベルクは路地の奥へと消えていった。


「おいガキ。お前の最後の言葉を聞いてやる。早く言え。終わったら殺す」


「よくまわる口だな。もしかして腕っぷしに自信がないのか?」


「それが最後の言葉だな?」


 大男のその言葉を火蓋に戦いが始まった。

 カシウスの剣技は美しく、まさにお手本と呼べるものだった。だが、その刀捌きを難なく男は盾で弾く。


「お利口な刀捌きだな。だから見極めやすい」


「そうか、ならこれはどうだ?【剣技魔法 黒般若(カウアルドリー・オーガ)】」


 カシウスの仮面が黒く染まる。


「見た目が変わっただけじゃ勝てねえぜ?」


 そう余裕をこく大男の前で地面を蹴りあげる。まった砂が大男の目に入り少し隙ができる。そこを斬った。


「【防御魔法 積乱雲の盾(クラウド・シールド)】 あ、危ねえ」


 大男の前に大きな白い弾力のある盾が現れた。それは、カシウスの刀に着られると萎んで消えた。


「こんな剣技はどうだ?」

 

「黙れガキ。傷をつけてからイキリやがれ」


 そう言った途端、大男の頬が斬れる。

 カシウスの刀捌きはさっきのものとは違い、剣を習ったことのない盗賊のような卑劣なものとなった。だが、それに大男はなかなか対応できない。


「イライラしてきたな。団長の仇。1人くらい殺してもいいか」


「確かにお前の刀が当たっちまった。だが、まだ致命傷を追わされるほどお前との実力差はねえ」


「そりゃ俺が本気を出していないからな。【剣技魔法 赤般若(アウトレイジド・オーガ)】」


 カシウスの刀身が大男の腕の盾を避け、男の腕ごと身体を斬り裂く。


「団長、見ていてくれたか?」


 魔力を使い果たしたカシウスは、道端に座り少し休んだあと、ベルクの後を追った。


***


「はぁはぁ、追いついたぞ」


「そんなに付き纏わないでよ」


「お前は拘束させてもらう」


「僕の自由は誰にも奪えない。【遊戯魔法 賽を振る神(フェイト・イズ・ラック)】」


 小柄な男が指をぱちんと鳴らすと男の手からカードが現れる。


「狂い戦士の斧か。まあまあかな」


「遊戯魔法......お前アルスを殺した男か?」


「もしそうだったら僕を殺すの?」


「どうだろう......自分を抑えられる気がしないな」


「へー。まあいいや。死ぬのは君だと思うし」


「そうかよ【炎纏いの刃 (ソード・クラッド・イン・フレイムズ)】」


 いつもより大きな炎を纏う刀を構える。すると小柄な男の手の中のカードが斧へと変わった。その斧は大きく、とても小柄な男が振れる武器に見えなかった。


「面倒臭いけど倒してあげる」


 振るわれた巨大な斧は重く硬い。

 一度距離を取り魔法を唱える。


「【火精霊魔法 夜明けの光芒(サンライト・ビフォーダウン)】」


 ベルクの手から放たれた炎は斧と柄の接合部分を吹き飛ばし、斧の刃の部分を地面に落とす。


「あーあ、壊れたな。まあいいや。1分経ったし」


 小柄な男は再び指をパチンと鳴らす。

 

「ハズレかよ」


 男はそう呟き、地面にカードを捨てて、元々持っていたナイフをホルダーから取り出して構える。

 その小さなナイフを弾いてやろうと思い近づくと......。

 

 ズボッ!

 

 片足が地面に足首くらいまで埋まってしまう。

そこは男がカードを捨てた位置だった。


「まさかハズレの落とし穴にハマるなんて。やっぱり僕は運がいい」


 体制を崩したベルクにナイフを突き立てる。そのナイフをベルクは手で受け止めた。


「いってぇ」


 手のひらに刺さったナイフを握り離さないように力を入れる。


「僕のナイフ離してよ」


「無理だ。後、離れるのはお前だ」


 ベルクのパンチが顔面にめり込んだ。そして、変な音を立てて吹き飛んでいく。


「うぐぁぁぁ!やっと1分だ......」


 再び指を鳴らそうとする小柄な男。だが、その指が吹き飛ぶ。


「【火精霊魔法 夜明けの光芒(サンライト・ビフォーダウン)】」


 小柄な男は路地の隅に急いで隠れ、反対側の手で指を鳴らす。


「ゴブリン戦隊かよ。くそっ!」


 召喚されたゴブリン。そんなものはベルクにとって障害となり得ない。

 すぐに一刀両断され、小柄な男は追い詰められた。


「アルスは底の知れない恐怖の中、大怪我を負わされた」


「ぼ、僕だってやりたくなかったさ!でも命令だったんだよ!」


「黙れ!」


「やめろよ、復讐なんて何も生まない!」


 そう言っているところにカシウスが駆けつけた。


「お前が団長を?」


「い、いや......その」


「お前、遊戯魔法とかいう舐めた名前の魔法で団長に怪我を負わせたらしいな」


「ま、まってくれよ!」


「ひとつゲームをしようか」


「おい!あんたはいいのか?復讐なんて虚しいだけだろ!」


「カシウスに任せるよ」


「だそうだ。じゃあ始めようか」


「な、なにをするんだ......」


「度胸試しゲーム!」


「ひ、ひぃぃぃぃ」


 カシウスは徐ろにナイフを取り出し、素早く指の間に刺していく。


「ほら、お前の番だぞ」


 そう言ってカシウスは小柄な男にナイフを差し出した。


「は?い、イカれてんのかよ!」


 そう話す小柄な男にカシウスは刀の刃を向けた。


「やれ」


「ふー、ふー、うぐぅ」


 荒い息を立てながら小柄な男は震える手でナイフを握り、指の間に突き刺そうとした。


「わっ!」


 カシウスが小柄な男に向け、そう声を出す。

 小柄な男はビクッと震え、手元が狂う。


「うぎゃぁぁぁ」


 路地には肉と骨をナイフで断つ音と、叫び声が響いた。

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