第35話 王都シードの自警団
犯罪者集団仇なす者。
彼らは数日前、ウンディーネ騎士団を襲撃し、金を奪い逃走した。
金を奪われた原因は大きく3つ。
1つ目、騎士団長が戦闘不能となったこと。
2つ目、副騎士団長を騎士団の事務所の地下に拘束し、副騎士団長に化けた仇なす者のメンバーがいたこと。
3つ目、騎士団の去年の入団メンバー120人のうち13人が仇なす者のメンバーであったこと。
これほどの失態を犯したウンディーネ騎士団は全員解雇され、再編成が行われることとなった。
「僕が隙をつかれたばかりに......。団長......仇はとります」
ホトがそう呟き、頭に包帯を巻いたアルスに言う。それに答えてはくれないが、ホトの気持ちは届いていることだろう。
「俺もそばについていながら何もできなかった」
「ベルクのせいではないよ」
アルスはもう目覚めないだろう。医者がそう言った。
脳はまだ解明されていないことが多く、治癒魔法も下手に使えないらしい。ただ脳幹は無事であり、死ぬ心配はないようだった。
「そうだ、ベルク。僕たちと一緒に仇を取る気はない?」
「取れるものなのか?」
「元ウンディーネ騎士団の中に協力してくれる人が3人いる」
「3人......。無謀すぎないか?」
「そうだね。馬鹿げてるとしか言いようがない。でも、それでもアルスの仇をとりたいんだ」
「だけど奴らがどこにいるかも......」
「僕たちはもう騎士団じゃない。裏のルートで莫大な費用を使ってつきとめた。それに、辞めさせられる前に騎士団の倉庫から道具もくすねてる」
「決行日は?」
「やるんだね。ベルクならやってくれると思ってたよ」
***
1ヶ月後。
「調べはついたよ。今日の夜みんなに顔合わせして、明日決行なるだろうね」
夕方に宿に訪ねてきたホトがそう言った。
「わかった。でも、ほんとうに俺が調査に参加しなくてよかったのか?」
「大丈夫だよ。一緒に戦ってくれるだけで十分さ」
「それならいいが」
「じゃあ酒場で」
ホトが去った後アルスのことについて思いを巡らす。
「ねぇ、お腹すいたよー」
レナの声で現実に戻される。もう夕飯時。レナのお腹が空くのも当然だった。
「ごめんな。今作るから」
急いでありあわせのもので夕飯を作る。その料理の途中も、アルスのことが頭に浮かぶ。
「ほら、できたぞ」
3品作った料理を机に並べる。
「しょっぱ!」
オーギが叫んで気づく。
「あ、砂糖と塩間違えたかも......ごめんな」
「ベルク大丈夫?」
「そうだよ。大丈夫なのかよ」
「ああ、多分。そうだ、今日夜出かけるから、先寝ててくれ」
「わかったよー」
「無理しないでね?」
***
そろそろ行くか。
そう言いベルクは部屋の扉を開ける。
外はひんやりと冷え、吹いていた風は海風から陸風となり、肌をなぞる。
歩く足音はまだ多く、ベルクはそのひとつに混じり指定の酒場へと向かった。
少し年季の入った木の扉を開けると、閑散とした店内に座る異質な4人組を見つける。
ホトと白髪の老人、女の子に青髪若い男。
「こっちだよ!」
ホトが手をあげ、ベルクを呼んだ。ベルクはそれに応えるように席に着く。4人組を至近距離で見ると、猛者だとひと目でわかるくらいの風格があった。
「こんにちはじゃ。ベルク殿」
「よろしくな、おっさん」
「こら、カシウスちゃん!ダメだよそんなこと言っちゃ!ベルクさんごめんね」
「なんだよガキのくせに......」
「カシウスちゃん......マメになんて事言うのさ!」
「2人とも落ち着いて。ベルクごめんね。この3人が協力者達だよ。こんなだけど、腕だけは確かだからね」
マメは持っていたテディベアを振り回し、カシウスは殴られながらぶつぶつと悪口を言う。
「はぁ、まあいいや。ゼル、自己紹介お願い」
「わしはゼルじゃ。使う魔法は死霊魔法。よろしくじゃよ」
「改めて、僕はホト。武器創造魔法を使うよ」
「あー、俺はカシウス。剣技魔法を使う」
「マメはマメよ。マメは可愛い糸魔法を使うわ」
「俺は火精霊魔法使いのベルクだ」
ひと通り自己紹介が終わり、ホトが明日の作戦を話し始める。
ベルクは適当な酒を頼み、その話を聞く。
「まず明日やるのは仇なす者の幹部達だよ。騎士団がまだあった時に、奴らの戦力はかなり削ってあるんだ。だから、幹部さえ倒せば奴らの全滅も見えてくるはず」
「それで幹部たちの居場所は......」
「仇なす者は、複数の店のケツ持ちをしているんだ。それで、その店からみかじめを取っている。その集金は幹部が行っているんだ。だから、集金をする時に襲う」
「幹部の数は?」
「僕たちと同じ5人。それで、1番強いやつ以外は2人1組で行動しているんだ。それで、僕が1番強いやつを倒すから、マメはゼルと。ベルクはカシウスと一緒に幹部たちを倒して欲しい」
「ゼルおじいちゃんよろしくねー」
「マメ殿、よろしくじゃよ」
そんな和気藹々とした2人と対照的なベルクとカシウス。
「よろしくなおっさん」
「あ、ああ。よろしく......」
「挨拶も済んだね。それじゃあ細かい動きを確認するよ?」




