表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第3章 シーフ王国編①
34/79

第34話 2分の1の確率

「2人とも、ちょっと手伝ってくれ」


 午後2時頃。

 お昼ご飯の材料の買い物と共に買った特注の金属の型を、キッチンテーブルにのせて、ニヤニヤしながら眺めていた。


「どうしたの?」


「今からおやつを作るんだ」


「手伝うよ!」


 ベルクは鞄からお昼に作り、寝かせておいた生地を取り出す。


「この生地をこの棒で伸ばしておいて」


 レナに木の長い棒を渡し、昼寝しているオーギを起こしに行く。


「オーギ、少し手伝え」


「えー」


「おやつ抜きでいいのか?」


「何すればいいの?」


「バナナを剥いて切っておいてくれ」


 2人はキッチンに立ち、一生懸命手伝いをする。

その横でベルクは魔導オーブンをいじる。


「予熱は180度くらいかな」


「できたよー」


 生地をのばし終わったレナの頭を撫で、生地を油を塗った型にのせる。


「べ、ベルクなにしてるの!?」


 一心不乱に、レナが一生懸命伸ばした生地に、フォークを突き立てる。


「こうしないと生地が膨らんじゃうんだよ」


「へー」


 そしてこの生地をオーブンへと入れる。

 生地を焼く間に、チョコを湯煎する。


「レナ、これ混ぜておいて」


 溶けかけの湯煎したチョコを混ぜてもらう。そこにベルクは卵と、バターを溶かした牛乳を加える。


「切り終わったぞ」


「お、上手いな。ありがと」


 オーギを褒めた後、ベルクは焼けた生地をオーブンから取り出した。

 甘く芳ばしい香りが、3人の期待を膨らませる。


「手伝いありがとな。あとは1人でやるからもう大丈夫だぞ」


 ベルクは溶かしたチョコを、丸い受け皿のような形に焼き上がった生地に流し込む。そして、再びオーブンへとそれを入れて、焼く。


 最後に焼き上がったものにバナナをのせて......。


「チョコレートタルトの完成だ」


 タルトを切り分け、少し味見をする。

 まろやかなアパレイユと、サクサクの生地、ふんわり香るバターの匂い。


 大成功だな。


 切り分けたタルトを皿に乗せ、テーブルに持っていく。

 

「ちょっと騎士団のところに行ってくる」


 チョコレートタルトを食べる2人にそう告げ、2切れほどタルトを箱に詰めて外に出る。

 

 今日はアルスに仕事が忙しいから、と騎士団の事務所まで届けてくれと頼まれたのだ。

 宿から見える海を眺めながら歩く。いつも穏やかなはずの波が今日は荒れている。

 いつも海に反射する眩しい光も今日は陰り、姿を消していた。


「なんだか今日は天気が悪いな」

 

 雨が降るとまずいので、少し早足で騎士団の事務所へと向かった。

 

 騎士団の大きな事務所、その重い扉を開ける。

 中に入ると、アルスが出迎えてくれた。


「忙しいんじゃなかったのか?」


「いや、今から忙しくなるところだ」


「そうなのか。じゃあ俺はこれで」


「待て、少し付き合ってくれないか?」


 アルスはそう言いどこかへ歩いていく。

 

 なんか今日は様子がおかしいような......。


 そんなことを思いながら、後に続く。たどり着いたのは応接間。


「入って。中にホトがいる」

 

 扉を開けると、ホトが座っていた。

 部屋の中は大きめのソファーが2つ。真ん中に机を挟んで置いてあった。

 右側のソファーに座っていたほどが口を開く。


「団長。急に呼び出してどうかしたんですか?」


「ベルク。巻き込んですまない許してくれ。頼れるのはベルクしかいなかった。それと頼りにしている」


「団長?無視しないでくださいよ」


「私はな、仲間が大好きなんだ。この騎士団が大好きなんだ。それに手を出したお前は何で償う?」


 アルスがホトを蹴り飛ばした。


「ふぐっ。き、気づいちゃってたのかー。一年も準備したのに、完全に模倣できたのに。なんでわかったのー?」 


「目だ。ホトは決意に満ちた勇敢な目をしている。だがお前は濁った薄汚い目だ。つまり、一目瞭然ってわけだ」


「そんな直感に頼るなんて......。やっぱり馬鹿の考えはわかんないや」


 男は騎士用の直剣を抜き、構えた。それに応えるように、アルスが男に突っ込んでいく。

 

「何が起こってるんだ?」


 困惑を極めるベルクの前で、激しい戦いが行われる。だが、勝負は決まっているようなものだった。男は、アルスの攻撃を防御するのに手一杯なのだ。


「狙いはなんだ!?」


「教えないよ」


「どーせ金だろ?今日は国に金を納める日。1番金が溜まっている日だからな。金なんかのために命を捨てるな!」


「もしかして僕が勝てないとでも?」


「逆に私に勝てるとでも思っているのか?」


「確かに実力だけで平民から騎士団長にのし上がったあなたに勝てる奴なんて一握りもいないだろう」


「それなら、うぐっ。やりやがったな!」


 アルスが話している途中で銃声が鳴り響く。


「これを、魔力銃を使えば、勝てなくはない」


 再び銃声が鳴るが、アルスは魔法も出さずに銃弾を避ける。これは、アルスにしかできない芸当だろう。


「唯一の頼みの綱も無駄だったようだな」


「唯一の頼みの綱?何言ってるの?僕はまだ秘密を残してる。僕がなぜホトに化ける役を担わされたか知ってる?イカれた魔力量で、イカれた威力の魔法と体術、それに剣術を使う君と戦って勝つ確率は、幹部で1%もないだろう。ボスでも10%もいかない。でも、僕なら自分の命をかけさえすれば50%の確率で勝てるのさ」


「何かまずい!【火精霊魔法夜明けの光芒(サンライト・ビフォーダウン)】」


「もう遅いよ。【遊戯魔法 脳漿の漏れる音(ガンショット)】」


 ベルクと2人の間に見えない壁が現れる。そして、壁の中には木でできた古ぼけた二つの椅子が、回転式拳銃がひとつ置かれた机を挟んで置いてあった。

 

「なんだこれは!?」


「僕の魔法だよ。初めて使った魔法。君か僕が初めての犠牲者だね」


「やあやあ皆様ようこそおいでくださいました」


 2人しかいなかった空間に、1人の真っ白なのっぺらぼうのような仮面をつけた男が現れる。


「仲間か!覚悟しろ」


「お待ちください!ここでは一切の暴力行為は禁止です。もしルールに背けば死んでしまいますよ。ふふふふふ。失礼」


「ちっ......」


 そのふざけた男の言葉は何か重みを感じ、信じさせる何かがあったように思えた。


「それでは皆様、遊戯を始めましょうか。ルールを説明しますね。机の上をご覧ください。そこに置いてある回転式魔法拳銃。これを交互に自分の頭に当てて、引き金を引いてもらいまーーす!」


「そんなことしたら......」


 アルスの顔が少し青ざめる。


「そんなことしたら死んじゃいます!そう思っていますね?安心してください!この装弾数6発の銃には弾は1発しか入っておりません!つまり、頭を吹き飛ばしてお花を咲かせるのは1人というわけでーす。ハハハ!それではーー張り切っていこう!」


「ほら、席に座ってよ。アルスさーん」


「落ち着け私。いつも勝ってきたじゃないか」


「ねぇ。先行と後攻どっちがいい?」


「せ、先行で......」


 ベルクは目の前の恐ろしい光景に驚きながらも魔法を見えない壁に向かって放った。だが、透明な壁はびくともしない。

 ベルクはこの勝負の行く末を見守るしかなかった。


 アルスが右耳の少し上あたりに、少し震えた手で銃を持ち当てる。

 

 荒い息が響く。その時間は長く長く感じた。

 そして、覚悟を決めて......。


 パァン!


 けたたましい銃声と共に、アルスが倒れる。


「おやおや、1発で死んでしまいましたか。これで遊戯はおしまいです」

 

「ははは、雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚!お疲れ様ー」


 魔法が解けると共に、アルスに駆け寄る。かろうじてしている小さい呼吸は今にも止まりそうだった。


「ベルク?だったっけ。君弱そうなくせに一応用注意人物なんだよねー」


「お望み通り戦ってやる。ただし手加減は期待するなよ......」


「戦うのは僕じゃないよ。あの魔法に魔力根こそぎ持ってかれちゃったし」


「お前に選択権はない」


 男は肩をすくめため息をつく。


「これだから馬鹿は。こうやれば君は手を出せなくなる......。助けてぇぇぇ!団長が殺されたァァァァァ!」


 そう、男の姿は今ホトなのだ。

 おそらくアルスは騎士たちにこの男のことを伝えていない。騎士の中にまだ裏切り者がいるかもと考えているはずだからだ。


「貴様動くな!」


「違う!あいつがやったんだ!」


「何馬鹿なこと言ってんだ!」


 ベルクは駆け付けた騎士たちに拘束される。いくら叫んでも誰も信じない。


 その後仇なす者の犯行は成功し、金を盗まれたところで俺の話に騎士たちは耳を貸した。



【魔法解説】


脳漿の漏れる音(ガンショット)

相手にロシアンルーレットを強制する魔法。

魔法を発動すると5メートル四方の正六面体の結界が相手と使用者を包み、その中に回転式魔法拳銃が置かれた机と、二つの椅子、ゲームマスターが現れる。

ゲームマスターはルールを話し、そのルールに逆らった場合、頭が吹き飛ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ