第33話 王都屈指の犯罪集団
見覚えのある黒いフードを被る男2人が古ぼけた建物の中で話していた。
「不確定分子は取り除かなければ」
「しかし、あの強さは......」
「ああ、あの騎士団長の盾を貫くあの魔法。それにあの剣さばきに動きの良さ。幹部レベルでトントンだな」
「幹部なんて使ってられませんよ!最近かなりの数検挙されたばかりなのに......」
「ならあいつを使うぞ。1番気色の悪いあの婆さんを」
「あ、あいつをですか......」
***
ベルクは呑気に街を歩いていた。オーギとレナと一緒に。すると、路地の奥の黒いフードを被る老婆から声をかけられる。
「おやおや、可愛い子だねぇ」
「レナのこと?」
「ああ、とっても可愛いよぉ」
「ありがとー」
その怪しげな雰囲気に少し嫌な感じがして、すぐにさろうとすると。
「あんた、悪い気が宿ってるねぇ」
ほら、やっぱり宗教勧誘かなんかだったな。
「へー。そうなのか」
「おや、信じていないんだね?ほら、手を見せてみなさい」
めんどくさいが、手を見せたら帰らせてくれるかな?
そう思い、ベルクは手を差し出す。
「おや、生命線が短いねぇ。それなら長くしないと。こんなふうにねぇぇぇぇぇ!」
老婆がナイフをベルクの手のひらに突き立てた。
「うぐぅぅ。くそ、おいオーギ!レナを連れて逃げろ!」
ベルクの咄嗟の判断で、オーギはレナを連れて逃げる。
「おやおや、私は手相占いが下手でねぇ。生命線を長くしたのに、あんたの死期は近いようだねぇ」
「婆さん。あんた何者だ?」
息を荒くしながら、服をちぎって手のひらに巻く。
「わたしゃシードの犯罪者集団。仇なす者のメンバーじゃよ」
「なんだそのガキが考えたようなダサい名前。ははは、笑っちまうな」
「言ってなされ。その余裕、すぐに消えますからねぇ。【虫魔法 湧き上がる嫌悪感】」
老婆の周りから黒い虫が湧き上がる。みたこともない甲虫類と思われる虫たちは、老婆の下に集まり、老婆を運ぶ。
素早く動く老婆は、持っていた仕込み杖の刃の部分を出して、力一杯それを振るってくる。
「ひゃひゃひゃひゃ。私の速さについて来られないだろぉ?」
だがベルクは強く、老婆の動きに難なくついていく。それどころか、老婆を一方的に攻撃し始めた。
老婆は守りに転じるしかなく、苦しい時間が続く。
「あんたぁぁぁ!年寄りを敬えんのか?ああん?年上には尊敬の意を示せこのあほんだらぁァァァァァ!【虫魔法 模倣する者】」
空中から先ほどの虫と同じ種類だが、虹色の虫が老婆の上に降り注ぐ。
あっという間に老婆は埋もれ、そこには1メートルほどの高さの虫の山ができた。
その山は徐々に10等分に分かれ、それぞれが老婆の姿を形作る。
「所詮は虫で作った人形。ここは一体を燃やせばいい話。【火精霊魔法 火竜の行進】」
ベルクの前に、サラマンダーが2体現れる。
「火を吹けサラマンダー!」
一斉に燃やされる老婆。
とうとう残り1人となった老婆は、そんなことには構わずこちらに突進してくる。
「トドメだ」
老婆の持つ仕掛け杖を弾き、首元に峰打ちを決める。が、老婆の首が崩れる。
「最後の1人も虫だと?」
「おばあちゃんの知恵袋ってやつさ。ケヒャヒャヒャ」
後ろから老婆に抱きつかれる。その力は弱いものの、何百匹もの虫が纏わりつき、縛り付ける。
「それじゃあ死んでもらおうかねぇ。私の大好きな魔法でなぁぁ。【虫魔法 母の温もり】」
老婆の前に巨大な赤い虫が現れる。先ほどの虫たちと違うのは大きさだけではない。尻の方に針がついているのだ。
「あんたの腹の温もりで、虫たちが孵るのさ。ケヒャヒャヒャ」
虫の針が腹に徐々に近づいてくる。
「【生命創造魔法妄想癖の独創的創造】」
「な、なんじゃ!苦しい!」
黒いフードから細長い手足が生え、顔がつく。
その奇妙なフードは、老婆の顔に巻きついていた。
「助けに来たぜ!」
「よくやった!」
駆けつけてくれたオーギのおかげで虫たちの力が緩む。その隙をつき、すぐに拘束から抜け出す。
「形勢逆転だな。今度こそトドメだ」
ベルクは老婆を殴り、吹き飛ばした。
老婆は噴水のように鼻血を飛ばし、横たわってピクピクとしか動かなくなった。
「ありがとな、オーギ」
「貸しイチだぞ。ベルク!」
***
「やられてしまったか」
「まあいい。作戦に必要な人員は残ってる。あいつはこのまま放っておこう」
「そうだな......」
【魔法解説】
湧き上がる嫌悪感
周囲に虫を呼び出す魔法。
虫は全長10センチほどで、1度に数百匹の数の虫を呼び出せる。
虫を足の下にひき、虫に運んでもらうこともできる。
模倣する者
老婆の姿を模倣する虫を呼び出す魔法。
虫は全長2センチほどで、1度に数万匹の数の虫を呼び出せる。
母の温もり
巨大な卵を持つ虫を呼び出す魔法。
虫は全長1メートルほどで、1度に1匹だけ呼び出せる。
この虫は相手の体内に卵を産みつける。その卵は、ものの数分で孵化し、体を食い破って出てくる。




