第31話 夜明けの光芒
「うう、昨日は適当な宿に泊まったせいで腰が痛いな。あんまり寝れなかったし」
「レナふわふわのベットで寝たい!」
「俺はーおいしいご飯が食べたい!」
「俺はキッチン付きのところがいいな」
しばらく宿屋を巡り、良さそうなところを探す。
幸いお金には余裕があった。治療費が思ったよりももらえたのである。
「ここにするか」
海の見えるこの宿屋は、少し高めでキッチンもふわふわのベットもあった。
「そうだ、おじさん。この宿屋の南側に市場があったぞ」
「市場か......特産品が買えるかもな。よし行くか」
3人は宿を出て、シード特有のご飯を求めて市場に向かう。
「そういえば、オーギ。お母さん探しはいいのか?」
「実は......母ちゃんの名前と声くらいしかわかんないんだよね......」
「そんなので探せるのかよ」
「愛があれば見つかる!かも......」
「オーギ君、きっと見つかるよ」
「お、市場が見えてきたな」
潮のかおりが香る暖かな市場。
色とりどりのご飯がそこらじゅうにあった。
「なんだこの黄色いの......」
「それはバナナだな。おいしいから買っていくか」
「ねぇねぇベルク、これは?」
「それはパイナップルだ。甘くておいしいぞ。買っていくか」
そしてベルクは、目についたものをすぐに買っていく。
両手で持ちきれないくらい食材を買った頃。
「お腹空いてきたね」
レナがそう言ったことにより、12時をすぎていたことに気づく。
「帰ってお昼作るか」
「おじさん意外と料理うまいよね」
「意外は余計だ」
3人が宿に向かって歩いていると、1人の騎士が声をかけてくる。
「ベルク様ですね?」
「そうだが、何のようだ?」
少し身構えるベルク。
「落ち着いてください。私はアルス様の使いでやってきました。これをどうぞ」
騎士は片手程の茶色の少し重い木箱を渡してくる。
「これは?」
「私もそれを渡せとしか......」
「そうか、ありがとう」
騎士は忙しいのか、すぐにどこかへ行ってしまった。
「ベルクなにもらったの?」
レナが興味津々そうに、箱を見つめてそう言った。
「開けていいぞ」
そう言いベルクはレナに箱を渡す。
レナが箱を開けると、中には3枚の紙と鉄製の義指、透明な石、革の黒い手袋が入っていた。
レナはその中の1枚だけを取って広げる。
「魔法義指の使い方だって」
紙のうち2枚は義指と石の扱い方が書かれた説明書で、もう1枚はアルスの謝罪文だった。
「アルスは悪くないのに......なんか申し訳ないかもな」
「貰えるもんは貰っとこーぜ」
「それもそうだな」
ベルクは食材と箱を抱えて宿屋へと帰った。
***
「さあて、なにから食べようかな」
「俺これ食べてみたい!」
「レナはこれ!」
2人はそれぞれ、小貝とエビを持ちそう言った。
「わかった、任せとけ」
ベルクは袖をまくり、エビの背を開く。
義指を使いこなし、エビの背から黒いワタを取るのを2人は覗き込む。
「レナが手伝うことある?」
「そうだな。じゃあケチャップとマヨネーズそれと牛乳を少し皿に入れて、混ぜてくれ」
「ケチャップ?マヨネーズ?」
オーギが聞いたことのない調味料に首を傾げた。そこですかさずレナが説明する。
「ベルクのちょーおいしい特製ソースだよ!」
「そんなにおいしいのか......」
「オーギも見てないで手伝ってくれ」
ごくりと唾を飲み込むオーギにベルクがそう言った。
「えー、俺も手伝うのかよ」
オーギは仕方なく、小貝を洗い始める。
そんなやりとりをしているうちに、ベルクはエビを焼き上げ、別の鍋でニンニクと唐辛子を炒めていた。
「ベルク混ぜれたよ!」
「お、うまいな。それじゃあ焼いたエビとそのソースを絡めて」
「うん!」
「おじさん、俺も終わったぞ」
「ありがと、オーギ」
ベルクはオーギから貝を受け取り、先ほどの鍋に水と共に入れる。
最後に塩を入れて味を整えれば......。
「エビマヨと、小貝の唐辛子スープの完成だ!」
そのベルクの声と共に、部屋の扉が叩かれる。
「なんだよ、今から昼飯だってのに......」
「2人とも先に食べてて」
そう言い残し、ベルクは扉を開ける。
「ベルク、昼時に失礼するぞ!」
オレンジの髪を日光で輝かせるアルスが立っていた。
「アルスがどうしてここに?」
「それが、渡した義指が戦い用のモデルじゃなかったから、戦闘用モデルを持ってきたんだ!それと、すまなかった。私たち騎士団はとてつもない過ちを犯した!」
「ノーム騎士団の騎士がやったんだろ?アルスは関係ないよ。あと、義指ありがと」
黒く重い義指を受け取った途端。アルスの腹が鳴った。
「すまない!昼ごはんを食べずにきたものでな!」
「よかったらお昼食べていくか?」
「ほんとうか!?では是非いただく!」
みんなで食卓を囲んでいると、アルスが話しかけてきた。
「おいしいな、毎日食べたいくらいだ。もしかして、お菓子作りもできたりするのか?」
「ああ、高級店に負けないくらいのやつを作れるぞ」
「そうなのか」
アルスは少し考えた様子を見せたかと思うと、一瞬悪そうな笑顔を見せる。そして、また元の顔にもどり、話し始める。
「あ、そういえば、箱の中の魔力強化石は見たか?」
「いや、まだだ」
「あれは、金貨60枚する魔道具なんだ。是非使ってくれ!」
ベルクは金額を聞き吹き出した。
「ろ、ろくじゅう!?一体どんな魔道具なんだ?」
「まあ、名前の通りだな。詳しいことは説明書を見て、食べたら早速使ってみてくれ!」
まろやかでプリプリのえびと、ピリ辛で貝の出汁がきいたスープを飲み干して、説明書を読む。
「なんだったー?」
膝の上に座るレナが、説明書を読むベルクに尋ねる。
「こ、これ......使える魔法を増やせるのか!?」
ベルクは説明書通りに、石を心臓近くに近づける。すると、石が体にめり込んで、体内に入っていく。
「ガハッ......はぁはぁ。これでいいのか?」
「ベルク、試したくないか?私の騎士団の訓練場を貸してやるぞ」
***
ウンディーネ騎士団はざわめき立っていた。なぜなら、団長が訓練場を貸してくれと告げたからだ。
騎士たちは、アルスが何をするのかドキドキしながら待っていると、1人の中年の男が入ってきた。
男は黒髪で筋肉質。腰には刀を下げ、不安そうに周りの騎士たちを見つめる。
その男には、だが、かなりの風格があった。
その男の後に、アルスが訓練場へと足を踏み入れた。
「緊張するなベルク」
「いや、すごい見られてるからな。緊張もするさ」
「あいつらはカカシかなんかだと思っていればいい。それより、石を使うんだ」
「胸に魔力を集中させる......だっけか」
ベルクは目を閉じる。
体の魔力の流れを感じながら、その魔力の流れを胸に集中させる。
「す、すごい。本当に新しい魔法が!」
「それはシードの天才魔道具師の発明だ。欠点があるとすれば、使うまで能力がわからないことかな」
「使うぞ......」
「あ、待て。【水精霊魔法 水雲の擁護】」
アルスの前に、巨大な水の盾が現れる。
「ここに向かって魔法を使え!」
「わかった。【火精霊魔法 夜明けの光芒】」
ベルクの指先から、雲の隙間から漏れる光のような細く小さい炎が飛び出す。その炎はかなりのスピードで、アルスの方へ向かっていく。
「小さいが力強い炎!いいぞベルク!」
炎は水の盾に突撃する。そして、水の盾には小さな穴が空き、炎が貫通した。
その炎がアルスの頬を掠める。
「おい、あ、あれ!」
「まじかよ貫きやがった」
周りで見てきた騎士たちがざわめきだす。
「強い魔法だな。どうだ?私と戦ってみたくないか?」
ベルクはアルスの盾を破ったことにより調子に乗っていた。
「いいのか?やらせてくれ!」
「ただし、勝ったら相手になんでもお願いできるって条件をつけさせてもらう」
「望むところだ!」
【魔法解説】
水雲の擁護
巨大な水の盾を出現させる魔法。
盾は縦の長さ3メートル、横の長さ2メートルで、鉄製の盾の2倍の防御力がある。
夜明けの光芒
手の先から、小さな炎を放出する魔法。
この炎は初速度が1000キロを超える。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
投稿時間が1時間も遅れてしまい申し訳ありませんでした。




