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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第1章 ハイドニア帝国編①
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第3話 冒険者狩り退治

 レナと出会った地、帝都ハイルの東側のリアスの森で、ベルクは魔物の肉やら爪やらを運んでいた。いつもの服とは違い、目立つ真っ赤なコートを羽織っている。


「あー重い」


 オスカルとの会話を思い出しながら歩く。


「いいかベルク、奴はどう言う理由かベテラン冒険者をリアスの森と帝都ハイルを繋ぐ唯一の一本道で襲う。だからあらかじめ、西の町から赤のコートを着たベテラン冒険者が来たって言う噂を流しといた。その噂の冒険者になりきって襲われるのがお前の仕事だ」



 冒険者達が襲われた地点に印がついた、地図を開く。

 そろそろか、そう心の中でつぶやく。

 

「出てこい!そこにいるのはわかってる!」

 

「ふーん、バレちゃったか」


 木の上から男が降りてくる。暗闇に隠れるためか、真っ黒なローブを身に纏い、腰には短剣を下げていた。

 

「まあバレたところで、おっさんには何もできないがな」


 男は手を前方に伸ばしこう言った。


「【空間魔法 握られた命(ライフ・イン・マイ・ハンズ)】」

 

 刀を構え姿勢を低くする......。

 だが何も起こらない。


「何をした」

 

「教えるわけねえだろーが」


「お前、冒険者狩りだろ」


「それ今関係あるか?」


「調子に乗りやがって、こっちからいくぞ」


 そう叫ぶベルクは、瞬時に相手の懐に潜り込む。


「くっつくなよおっさーん、俺のこと好きなのか?」


 男はバックステップで、距離を取る。

 ベルクは負けじと近づき攻撃をするが、受け流されるか、避けられ距離を取られた。

 

「逃げてばっかりで卑怯だぞ」


 ベルクは息を切らしながら男に言う。


「攻撃を当てられない、トロイおっさんが悪いんだよー」


 つくづくふざけた男だ。

 苛立つベルクの体が重くなり、違和感に気づく。

 

「うっ......視界が......」


 足がもつれ視界がぼやける。

 地面に倒れるベルクを上から見下し男は言う。


「お、もう時間か。これでお前の命は俺の手中ってわけよ」


 鼻歌を歌いながらご機嫌に荷物を漁り始める。


「てめえらクズ冒険者共は、這いつくばってこの冒険者狩りに殺されな」


「お前......ばかだな......」


「は?何言って――」


「【影操作魔法 拘束する影(バインディング・シャドウ)】」


 背後からオスカルの声が響く。

 木の影が伸びたかと思うと、冒険者狩りに影が巻きつき、そいつを縛り上げる。

 後ろから歩いてきたオスカルが、ベルクに言う。


「死んだかと思ったぞベルクー」


 こんな状態でもおちゃらけているオスカルに少しイラッとくる。


「な......なんだお前」


「ギルドの調査員でーす。お前の動向を調べて、囮捜査したんだよねー」


 ニヤリと笑いオスカルは、冒険者狩りに言い放つ。


「てめぇ......」


 唇を噛み締める冒険者狩りはオスカルを、恐ろしい形相で睨む。


「俺はお前が冒険者狩りだっていう言質を取るためにずっと隠れてたんだよねー、自分から白状してくれてありが――」


「空間魔法――」


 冒険者狩りはオスカルの話を遮りそう唱え始める。


「そいつの魔法がわかったぞ!そいつの死角に逃げろ!」


 その声に反応してオスカルが逃げる......が間に合わない。


「【模擬宇宙(シミュレーティッド・ユニバース)】」


 そう冒険者狩りが唱えた途端オスカルの足が裂け血が噴き出る。


「な......お前何しやがった」


 オスカル脚を庇いうずくまる。


「偉そーに説教垂れやがるカスはうずくまっときゃいいんだよ」


 

 くそ、奴の空間魔法は、空間内の空気を圧縮したり、外に排出しているんだ。

 最初の魔法は、対象の周りを空間魔法で囲み、空気を徐々に圧縮して、魔法を解く。それによって、一気に減圧されて、目眩なんかを起こすんだ。

 逆に2つ目の魔法は、一気に空気を空間内から排出、それにより1つ目の魔法よりも急激に圧力が変化して、足が裂けたんだ。


「くたばれクソ冒険者!」


 うずくまるオスカルに、冒険者狩りが短剣を突き立てようとする。


「ま、待ってくれ!」

 

 まだ頭がクラクラする。どうにか回復するまで時間を稼がないと......。


「なんだよ、今いいところなんだ」


「お前なんで冒険者を目の敵にしてるんだ」

 

「うるさいな、そんなこと聞いてなんになる?」


「お前のことわかってあげられるかもしれない!」


「兄さんのこと話したって、お前らはわかってくれないさ......」 

 

 よし、いいぞ。この調子でもう少し時間を稼ごう。


「そんなことないさ、俺ならお前のことわかってあげられる」


「おい、おっさん......お前、ほんとは俺のことになんてこれっぽっちも興味ないだろ」

 

「な......」


「やっぱりな、目を見ればわかる。やっぱり冒険者は全員クズだ」

 

 止めていた手を再び振り上げ、オスカルに短剣を突き立てようとする。


「やめろ!」


 ベルクは手に持った刀を、冒険者狩りに向けて投げる。

 それは、見事に冒険者狩りの肩に刺さり、冒険者狩りの顔を歪ませる。


「いってぇぇぇ、てめぇやりやがったな!お望み通りてめぇから殺してやるよおっさん!」


 まずい、まだうまく動けない。

 まともに動けないベルクの様子を一切気にせず、冒険者狩りは短剣で斬りかかる。

 太ももに深く刺さったが、冒険者狩りの動きが止まる。


「おっさん諦めが悪りぃぞ、さっさと放しやがれ」

 

 ベルクは突き立てられた短剣ごと、冒険者狩りの手を強く握っていた。

 冒険者狩りは、すかさず2本目の短剣を抜き、振り上げる。


「うっ、や、やめろぉぉ」


 冒険者狩りが叫び、2本目の短剣が地面へと落ちる。ベルクのもう片方の腕は、先ほど刺した冒険者狩りの肩の刀を握っていた。


「うぐぁぁぁぁ」


 雑に抜かれた刀は、冒険者狩りの肩の刺し傷を広げ、血を噴きださせた。

 

 よし、やれる......ん?


 太ももを触ると、ヌルヌルとした温かい感触が感じられた。下を向くと、真っ赤な血溜まりが足元にあった。ベルクは再びめまいに襲われ、その場にへたり込む。


「絶対、はぁはぁ、お前は殺して......やる」


 まだ人を殺す気力の残る冒険者狩りは、落とした短剣を拾い直し、ベルクに向かい突き立てようとする。

 思わずベルクは目を瞑り、体を硬直させる。

 だが、10数秒経っても何も起きない。


「俺はよぉ、お前みたいなクズ野郎は大っ嫌いなんだよねー」

 

 恐る恐る目を開けると、冒険者狩りが、影に縛り付けられ、身動きが取れなくなっている。


「お前もしつこいぞ、冒険者は全員クズなんだ!殺して何が悪い!今度は、頭でも吹き飛ばしてやるよ」


「そうやって悪事を正当化しようとする野郎は、闇の中でしばらく反省してな 【影操作魔法 誘惑の沼地(セデューシング・スワンプス)】」


 冒険者狩りの真下の影から、真っ黒な手が何本も伸びてきて、冒険者狩りを闇へ引き摺り込んだ。


「おい、ベルクしっかりしろ!」

 

 うるさいな、俺は今眠いんだ。今日は少し肌寒いな。


 オスカルに抱えられたベルクの目は虚ろで、滴る血は、夜露のように道端の草を濡らしていた。



【魔法解説】


握られた命(ライフ・イン・マイハンズ)

相手の周りの空気を少しずつ圧縮し、気圧を上げる魔法。

気圧を上げるだけでは軽い頭痛が起こるだけだが、魔法を解除し一気に気圧を下げると、ふらつき、めまい、呼吸困難などを引き起こす。

 

模擬宇宙(シミュレーティッド・ユニバース)

15センチ四方の空間内に真空に近い状態を作り出す魔法。

人に向けて使った場合、急激な減圧により皮膚が裂け、血管が破裂するなど生命に関わる重傷を負わせられる。


拘束する影(バインディング・シャドウ)

視界に映る影を操り、自由に操作する魔法。

操る影は、黒い帯のような実体をもち、相手を縛り上げるなど様々な用途がある。


誘惑の沼地(セデューシング・スワンプス)

視界に映る影の中に相手を沈める魔法。

もし相手が影の中に沈むのを抵抗した場合、影の中から黒い腕が伸びてきて引きずり込まれる。

この魔法に致死性はなく、相手を拘束するだけである。


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