第27話 母に会いたい小さな泥棒
ガルラの町の路地裏に、怪しげな男たちの集まる部屋があった。
その部屋の真ん中で足を組んでソファーに座る大男が怒鳴る。
「オーギ!これっぽっちしか盗れてねえのかよ。これじゃあ目標の金貨10枚に到底届かねえぞ」
「す、すみません」
「さっさと出てけ!そんでもっと盗ってこい!このポンコツ奴隷が」
オーギと呼ばれていた少年はすぐに部屋から出ていった。
「ボスも人が悪いですね。金貨10枚盗んだら奴隷から解放するなんて嘘ついて馬鹿ガキにタダ働きさせるなんて」
ハハハと笑い声を上げる大男。
その声は悪意に満ちていた。
***
「ベルクさんほんとうにありがとうございました。もし、馬車を使うことがあれば、また私を呼んでくださいね!」
「こちらこそありがとう!」
帝都を出て20日。
やっと目的地のガルラの町へと着いた。
さっそくシーフ王国へ渡る為、国境まで歩き出す。
「話に聞いてた通り少し怖いところではあるな」
ベルクのいる場所は街の中心部のため、怪しい人物は少ないが、路地に一歩でも立ち入れば、何かに巻き込まれることは確実だった。
「ねぇベルクおんぶしてよー」
「結構歩いたから疲れたか。ほらいいぞ」
レナをおんぶした瞬間、誰かがぶつかってきた。
「すみませんでしたー」
そう言って走り出していく青髪の少年。
妙に軽くなったポケットを確認して顔から血の気が引く。
「待て!俺の財布返せ!」
ベルクは魔物狩りで鍛えた脚力ですぐに少年を袋小路に閉じ込めた。
「はぁはぁ、早く返してくれないか」
「やだねー。俺の魔法で圧倒してやるからな!【生命創造魔法妄想癖の独創的創造】」
腰の刀がカタカタと揺れ始める。
「な、なんだこれ。気持ち悪っ!」
刀の刀身にニコちゃんマークのような顔が現れ、柄からは黒い棒のような手足っぽいものが生えていた。
その刀は生きているかのように動き、男の子の方へ走り出した。
「へへ、刀はもらったぜ!うっおもっ」
「お前には持てない。早く返してくれ」
「刀あいつを倒せ!」
「うりゃぁぁ」
刀が情けない声を出しながらこちらに走ってくる。それをベルクは容赦なく蹴飛ばした。
「あーー!」
「ほら、早くお金を返してくれ」
「うるせぇ!それ以上近づいたら死んでやる!」
少年が自分の首に小さいナイフを突きつけ脅してくる。
「やめろ!」
ベルクは素早い動きでその刀身を引っ掴んで取り上げる。
ベルクの手から垂れる血を見て少年が動揺する。
「な、なんでそんなこと......」
「お金なら少し分ける。だからこんなことやめてくれ......」
「少しだけじゃだめなんだ!」
「すまないが俺たちも国境を渡って別の国に行かなきゃならないんだ。だからお金がいる」
「俺どうしても金貨が5枚くらいいるんだよ」
「そんな大金渡せないよ。それに理由を教えてくれないと」
「俺......奴隷なんだよ。解放してもらうために金貨が10枚いるんだ」
なんてひどいんだ.......。
奴隷の少年に盗みを働かせる輩がいるのか。
「おいおいおっさん、うちのオーギになんのようだ?」
悲しげな男の子を慰めようとすると、背後から声が聞こえてきた。
「ボ、ボス!?」
「あんたが雇い主か。奴隷に犯罪させるなんてどうかしてるぞ」
ベルクは後ろの大男を睨みつけ、そう言い放った。
「なんだテメェ。ここで死にてぇのか?あ?」
「俺に手を出すならお前の墓場は牢屋の中だな」
「いい度胸じゃねえか!【身体強化魔法 性悪急襲】」
男の足が消えたと思ったら、男ごと消えてしまった。
それでもベルクは怯まず、背後に刀を突き立てる。
「ひっ!」
大男は一瞬のうちにベルクの背後にまわっており、その首には刀の刃が当てられていた。
「ま、待ってくれよ。なんでもするから許しちゃくれねぇか?」
「じゃあその男の子を解放するんだ」
「わかったよ......」
大男は諦めたのかとぼとぼ歩いて、どこかに行ってしまった。
「おじさん、ありがとな!これで俺、母ちゃんに会えるよ!」
「そりゃよかった」
オーギはそのまま走って行ってしまった。
「レナ、そろそろ行くか」
「うん!」
『ベルクかっこよかったな』そう呟きながら歩くレナを見て、少し小恥ずかしくなったが、とても嬉しかった。
【魔法解説】
妄想癖の独創的創造
非生物に生命を与える魔法。
生命を宿した非生物は細く黒い棒のような手足が生え、ニコちゃんマークのような顔がつく。
1度に生命を吹き込める個数は6つまで。また、維持できる時間は15分。
かなり細かい命令にも応えることができる。
性悪急襲
足を強化し、素早く動けるようになる魔法。
相手の背後を一瞬でとれるほど早く動けるが、効果時間は3秒間。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これで2章完結となります。ですので、次は王都シード編となります。王都シード編では、タイトルの意味が明らかになったりするので、楽しみにしていただけると幸いです。
これからも応援よろしくお願いします!




