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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第2章 ハイドニア帝国編②
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第26話 老牛の使い道

「もうすぐ着きますよ」


 ゆったりと進む馬車は帝都ハイルから南に進んだところにあるリムの村に向かっていた。

 食料を補充する為である。


「リムの村は畜産物が有名で、豚肉に乳製品、鶏卵なんかが絶品なんですよ」


 ラウルが茶髪をいじりながらそう話した。


「にゅうせいひんってなーに?」


「ヨーグルトとかバターとか、牛の乳から作られる美味しいものだ」


「レナ食べてみたい!」


 そんな話をしているうちに、村の馬車の停留所に馬車が止まる。

 

 3人は牧場へと向かった。

 

「ラウルさん久しぶりだね」


「サーヤさん!お久しぶりです」


「こっちの人たちはラウルのお客さんかい?」


「そうです。ガルラの町まで連れて行くんです」


「よろしくね。私はサーヤだ」


「俺はベルクだ。こっちはレナ」


 サーヤと挨拶がすんだところで、本題に入る。


「とりあえず、豚肉とヨーグルトと鶏卵をいただけますか?」


「ラウルごめんね。豚肉なんだが、先週グリフォンに豚たちを根こそぎ持っていかれちまって......。老牛の肉くらいしかないんだよ」


 3人は仕方なく老牛の肉を買い、重い足取りで馬車へと戻った。


「私、老牛の肉そんなに好きじゃないんですよ......。昔、貧乏だったのでよく食べてたんですが、硬くてあんまり美味しくなかった記憶が......」


 頭を抱えるラウル。

 一目で悲しいことがわかるほど落ち込んでいた。

 それを見てベルクはどうにか美味しくできないかと、鞄の中を見つめると......。


「あ、トマト痛んでる......」


 かなり前に大量に買ったトマトは少し痛んでしまっていた。


「なんだか今日はついていませんね」


 ラウルが悲しそうに笑う。


「今日のご飯おいしくないの?」


 レナがつぶらな瞳でこちらを見つめてそう言ってくる。


「絶対おいしくするから心配するな」


 たぶんおいしくなるさ......たぶん。


 ベルグは悩んでるうちにあっという間に昼時になった。


 ベルクは迷いなく、火の上に鍋を3つ並べる。

 1つ目の鍋に種を抜きみじん切りにしたトマトを、2つ目の鍋にはみじん切りのニンニクと唐辛子と水を、3つ目の鍋には酢を加えて煮る。


「トマト痛んでたのに使って大丈夫?」


「ああ、ソースにする分にはなんの問題もないよ」


 そうしたら1つ目の鍋に残りの鍋の中身を加える。そして、塩と砂糖を加えてとろとろになるまで煮詰める。


「これは......なんですか?」


「食べてみるか?」


 鍋の中身をスプーンでひと掬いして、ラウルに手渡す。


「おいしい......酸味とトマトの風味がなんとも言えないおいしさです」


 次にベルクは肉を粗く刻み始めた。


「なるほど。細かくすれば肉の硬さが気にならないですね」


 そして、ひき肉にした肉を焼き、塩胡椒で味付けをする。


「これにさっきのソースをかけるんですか?」


「いや、まだだ」


 卵をかき混ぜ、フライパンに溶いた卵を敷いて、ひき肉を乗せる。そして、卵をよせながら形を作り皿に盛る。

 仕上げにトマトケチャップかけたら......。


「ひき肉オムレツの完成だ」


 つやつやの卵の上で輝く赤いソース。

 フォークで崩すと、中から肉汁と共にひき肉が溢れる。

 ケチャップソースと卵とひき肉の相性が抜群で、みんなあっという間に食べ終えてしまった。

 

「ねえベルク、レナね、大きいお肉が食べたい」


 レナの口の周りのトマトケチャップを拭いていると、レナがそう言った。


「ひき肉じゃなくて、大きめに切った肉がいいってこと?」


「うん。だめかな......?」


 そんな顔されたら......。


「わかったよ。頑張ってみる」


***


 馬車の心地の良い揺れで、いつのまにか膝の上で寝てしまったレナの頭を撫でる。

 昼まで眩しく光っていた太陽は、薄いオレンジの光を山の隙間から弱々しく放っていた。


「もう少しで日が沈みます。今日進めるのはここまでですね。そういえば、晩ご飯はどうにかなりそうですか?」


 ベルクはそう聞かれ、自信満々に壺から肉を取り出す。その肉には、白いドロドロが纏わりつき、とても美味しそうには見えない。


「な、なんですかそれ......」


「肉をヨーグルトにつけたんだ。これで柔らかくなる」


 ベルクは鞄から袋を取り出し、その中に肉とオリーブオイルそして塩を入れる。


「ちょっと!布の袋に液体なんて入れたら......」  


「落ち着けラウル。これは酸化を防ぐ魔道具の結界袋だ。袋を閉じると繊維の隙間に結界魔法が張られて、密閉されるんだ。だから液体くらいじゃ漏れないさ」


 そして鍋を取り出し、湯を沸かす。そこに袋ごと肉を入れる。

 その後肉を取り出して焼く。


「もうすぐ食べられますか?」


「この後冷蔵鞄に入れて1時間だな」


「そうですか......我慢しますよ」


「ラウルってこの仕事長いのか?」


「もう6年はやってますね」


「じゃあ目的地のガルラってどんな町が知っているのか」


「はいもちろん。ガルラは経済格差が激しいですが、中心街からでなければ治安はそこまで悪くないいい町です」


「そうなのか......」


「それよりお肉もうそろそろ食べられません?」


「まだ10分もたってないぞ」


「すみません。普段は料理なんてめんどくさくて干し肉なんかで食事を済ますものですから。それに、ベルクさんの料理が美味しくて......」


「ははは、そりゃよかった」


 そのまま2人で鍋を見守りながら小1時間話し込んでいた。

 

「ベルクー、そろそろお腹空いたよー」


 寝ていたレナが馬車から降りてくる。

 

「ちょうどいいところに来たな。もう晩ご飯できてるぞ」


 ベルクは皿に切った肉と、ついでに作っておいたマッシュポテトを盛り付ける。


「これなにー?」


「ローストビーフだ」


 切った肉の断面は赤く、肉汁が溢れ出てくる。

 待ちに待っていた肉を前にしたラウルはすぐに肉にかぶりつく。

 レナも負けじと口の中に肉を頬張った。

 

 ヨーグルトにつけた肉は柔らかく、老牛だからか普通の牛よりも味が濃い。


「いやぁ、一時はどうなるかと思いましたが、やはりベルクさんはすごいですね。今日のご飯も美味しかったです」


「そうだよ!ベルクはすっごいんだよー」


「2人ともありがとう」


 3人でご飯を食べれば、心が温まり、夜の寒さも暗さも忘れられた。

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