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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第2章 ハイドニア帝国編②
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第25話 旅立ちの日

 ベルクとレナは馬車に揺られていた。

 2人は元いたハイドニア帝国からシーフ王国に行くため、ハイドニア帝国の南端の街ガルラ行きの馬車に乗っていた。

 

 スースーと寝息をたてる2人は、御者のラウルに揺さぶられ起こされる。


「ベルクさん起きてください」


 小声で話すラウルは、顔が引きつり怯えていた。


「どうかしたのか?」


 小声でそう質問する。


「今、前に馬車が止まってるんですが、ヘルハウンドに襲われてるらしいんです。だから、馬車を捨てて静かに逃げようと思ってます」


 ベルクは静かに頷き、レナの手を引き静かに馬車を降りる。

 バキッ。

 ベルクの横で物音が鳴る。横を見るとラウルが真っ青な顔をしている。その足音には折れた枝があった。


「グルルルルルル」


 ヘルハウンドたちがこちらに走って向かってくる。


「下がっててくれ!」


 ベルクは刀を抜き、魔法を唱える。


「【火精霊魔法 火竜の行進(ドラゴンズ・マーチ)】【火精霊魔法 炎纏いの刃(ソード・クラッド・イン・フレイムズ)】」


 10体ほどのヘルハウンドに向かって6体のサラマンダーが駆け出す。

 それをすり抜けて来たヘルハウンドをベルクが火を纏った刀で斬り倒す。


「数が多すぎる」


 ヘルハウンド達は連携をとり、ベルクを攻撃してくる。

 前の1匹を斬りつけようとした時、横から別のヘルハウンドが噛み付いてくる。

 それに刀を突き立て、燃えるヘルハウンドを、他の奴らの方へ投げる。

 それで怯んだヘルハウンドを一気に切りつけた。


 サラマンダー達も、ヘルハウンドを倒しきり、なんとか危機を乗り越えた。


「ベルク怪我してる......」


「腕が痛いな」


 少し息の荒いベルクが言う。


「ベルクさんお強いんですね、助かりました。まずい、感染症になるかもしれません。お客さん、腕出してください」


「ありがとう」


「いえいえ、ベルクさんは命の恩人なんだからこれぐらいのこと朝飯前ですよ」


 ラウルのが腕を綺麗な水で洗ってくれた。

 腕の処置をしてくれた後、ラウルが前の馬車を見に行く。


「なんとか生きてる!ベルクさん、うちの馬車にこの人たち乗せるの手伝って!」


 中には親子に見える1人の女性と、1人の女の子が横たわっていた。

 御者はおそらく逃げたようで、姿は見当たらない。荷台にいた2人も怪我を負っていた。


 2人を乗ってきた馬車の荷台に乗せ、2人がかりで手当てをする。

 

 包帯を巻き終わった頃、女性の方が目を覚ました。


「あれ、あのオオカミたちは......?」


「ヘルハウンドならもう心配ないぞ」


「そうなんですか。ありがとうございま......」


 そこまで言いかけたところで女性が硬直する。

みるみるうちに顔が真っ青になり、焦り始めた。


「ネルが!ネルがいない!ごめんなさい、私探しに行きます」


 馬車の外に出ようとする女性を引き留める。


「落ち着いて、1度説明してほしい」


「娘のリアはいるんですが、息子のネルがいないんです」


「どこに行ったか心当たりは?」


「わ、わかりません」


 右側に森、左側に深い川の流れるこの道。

 道に沿ってどこかに行ったのならまだ探せるが、もし森に入ったのなら探せない。

 どうしたものか......。


「お母さん名前は?」


「オリビアです」


「オリビアさん、道沿いに息 ネル君が進んでいた場合は見つかるかもしれない。でも森に言っていた場合は......」


「いや、大丈夫かもしれません。私に任せていただければ」


 ラウルが自信満々にそう言い放った。


「なにか考えが?」


「まあ見ててください。【対話魔法 共鳴の鐘(レゾナント・ベルズ)】」


 ラウルの手元に錆びた小さな鐘が現れる。


「それは?」


「魔力を持たない動物と会話でき魔法です。鳥やらリスやらにそのネル君を探してもらうって感じですね」


 そう言ってラウルは手元の鐘を鳴らした。

 次第に動物たちが、ラウルの元へ集まってくる。


「レナ、こんなにたくさんの動物初めて見た!」


「オリビアさん、ネル君の特徴は?」


「私たちと同じ金髪で、黒っぽい服を着ています」


「わかりました。それだけわかれば十分です」


 再びラウルは鐘を鳴らす。すると、動物たちが一斉に散り散りになっていってしまった。


「少し待ってれば戻ってくるので、それまで少し待っていましょう」


 数十分後。

 1羽の小鳥がラウルの肩にとまる。


「お客さん、俺は戦闘に向かないので、この方の息子さんを助けに行ってくれません?」


「それはいいが、場所はわかったのか?」


「この子についていけば、そのうち着きます」


「わかった」


 ベルクは小鳥を追いかけて、森の中へ入っていった。

 森の道は険しく、茂った枝が頬を掠める。


「無事でいてくれよ......」


 しばらくして、人影が見えてくる。


「もう大丈夫だ。助けにきた」


 そう言ってネルの手を取る。

 

「きちゃダメ!」


 ネルがもたれかかっていた木が動き出す。よく見るとネルの足には、木の根が絡んでいた。

 

「ヌビアの木か!」


 別名人食い木。おとぎ話でしか見たことがなかったが、ほんとうに人間を餌に人間を釣るなんて......。


 木の樹洞の中には大量の目が所狭しに並んでいた。


「残りの魔力全部使ってやるよ!【火精霊魔法 精霊憑依(ポゼッション・バイ・スピリッツ)】」


 炎の吹き出す筋肉質の足で、木の樹洞向けて蹴りを入れる。向こう側の景色が見えるようになった木の樹洞。

 そのままヌビアの木は倒れて動かなくなった。


「おじさん、ありがとう!すっごくかっこよかった!」

 

「どういたしまして」


***


 レナとリアが、ラウルの呼んだ動物で遊ぶ中、1人不安そうに下を向いていたオリビア。

 彼女の表情が急に晴れた。


「ネル!よかった......」


 

 その後日の暮れないうちにこの家族の住む町へ送り届けた。

 その際、お礼にラムチョップを渡してくれた。


「今日はこの辺りで野営します」


「少し森に行ってくる」


 そう告げベルクは森に入って行った。

 その間にラウルは野営の準備を進める。

 ちょうど魔道具のコンロを準備したところで、頭に葉っぱをつけたベルクが戻ってきた。


「ラウルさん準備ありがと。料理は俺がするよ」


 ベルクは先ほどもらった肉や、調味料の入った瓶なんかを取り出す。


 「まずは、肉に塩を振って、袋に肉とオリーブオイル、それにさっき拾ったハーブを入れて揉み込んで......」


 フライパンを火にかけ熱する。

 

「フライパンに肉を並べる」


 いい色の焦げ目のついた肉をフライパンから取り出し、木皿に盛り付ける。


「これで完成だ」


 3人は骨の部分を持って、肉を横から大胆にかじる。

 溢れる肉汁とハーブの香りに3人の顔がほころぶ。


「おいしい、これがしばらく食べられるなんて......私幸せです!」

 

「やっぱりベルクのご飯はおいしい!」


 静かな夜の道端で、3人の賑やかな声が響いていた。



【魔法解説】


共鳴の鐘(レゾナント・ベルズ)

錆びた小さい鐘を生成する魔法。

この鐘を聞いた魔力を持たない動物と心の中で会話できるようになる。また、この動物たちは無条件で懐いてくれる。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

15時と18時にも投稿します。、


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