第24話 別れを告げる
コカトリスを食べられると話題の高級店に、ベルクとレナが立っていた。2人は貴族のような高そうな服に身を包み、金貨が30枚ほど入った袋を腰にさげていた。
数日前、アーシュを襲った老人はレッドキラーという指名手配犯だったらしく、ギルドから100枚もの金貨をもらった。それを遠慮するオスカルとアーシュに分け、今に至る。
「帝都ハイルに来た時からずっと食べたかったコカトリスがついに食べられる!」
「レナ、マナーとかわかんないからこんな高そうな店はいれないよ」
「個室らしいから大丈夫だよ。ほら、行くぞ」
店に入ると丁寧な接客で個室に通される。
「店の雰囲気もいいな」
「ねぇベルク」
「どうした?」
「今日でここを出て行くんでしょ?」
「そうだ。次の国に行く」
「もうみんなに会えないのかな......」
「いいや、俺もここは気に入ってる。数年後になるかもしれないが絶対ここには戻ってくるよ」
「よかった。レナもうみんなに会えないかと思ってたよ」
「こちら前菜のカプレーゼです」
店員がそう言って料理を持ってくる。
トマトとモッツァレラチーズの相性が美味しいカプレーゼ。
次にスープが運ばれてくる。
かぼちゃスープは味が濃く、滑らかでおいしかった。
その次はメインのコカトリスだ。
「コカトリスのポワレです。ソースには帝都で取れたオレンジのガストリックソースを使っております」
運ばれてきた黄金色に輝くソースのかかったコカトリスは、柑橘の香りと肉の香ばしい匂いが美味しそうだ。
一口食べると、肉汁の溢れる肉と酸味のある甘いソースが見事にマッチしていてすごく美味しい。
最後に出てきたデザートのパイも綺麗に食べ満足した様子で店を出た。
「それじゃあ皆んなに帝都を出ることを伝えてこようか」
まずはギルドへと向かった。
「ヴァレリアお姉ちゃーん」
レナがヴァレリアに向かって駆け出す。
「ヴァレリア、忙しいところごめん。俺たちここを今日出るから挨拶しようと思って来たんだ」
「そうなのか......寂しくなるな。そうだ!私ちょうどベルクからもらったレシピを見てクッキーを作ったんだ。良かったら持っていってくれ」
最後に握手をして別れを告げる。
「オスカルはいなかったな。次は狼の大皿に行くか」
「レナちゃんいらっしゃい!」
「いらっしゃい。ベルク、今日は何食べにきたんだ?」
ロゼとアルフレッドがいつものように明るく迎えてくれる。
「今日は伝えることがあって来たんだ。今日俺たちは帝都を出て行く」
「そ、そうなのか......常連が1人いなくなるなんて、寂しくなるな。もう帰ってこないのか?」
「レナちゃんにもう会えないの?」
涙目のロゼと寂しげなアルフレッドがそう尋ねる。
「いや、俺もレナもこの街を気に入ってる。だから絶対戻ってくるよ」
「そうか、なら最高の飯を用意して待ってるから絶対戻ってこいよな」
「レナちゃんも絶対戻って来てね」
「ああ、もちろんだ」
そう言って店を去った。
「最後はアーシュとラニアだな」
怪しげな路地を通り抜け、盗賊団のアジトへと辿り着く。
そして、入り口に立っている強面の男に話しかけた。
「あんた待ちな。ここは泣く子も黙るアーシュ盗賊団のアジトだ。あんたみたいのが来るところじゃない」
「俺はアーシュとラニアの友達だ。通してくれないか?」
「黙れ。通すわけないだろ」
人の話を聞かない男の後ろからザークが現れる。
「何揉めてんだ?」
「こいつが入らせろとうるさくて......」
「お前、この人はレノラの命の恩人だ馬鹿野郎」
「そ、そうなんですか!?す、すいませんでした!」
「気を悪くしたな。すまなかった。レノラたちに会いに来たのか?」
「ああ」
「わかった。今呼んでくるよ」
ザークが建物の奥に消え、しばらくするとアーシュとラニアが出てきた。
「いきなりこんなところまで来てどうしたんだ?」
「ベルクさん何かあったんですか?」
「俺たち今日帝都を出て行くんだ」
「どこに行くんですか?」
「シーフ王国だ。海の幸が有名な」
「ほんとうか!?」
アーシュが嬉しそうな声でそう言う。
「どうかしたのか?」
「私たち兄貴の知り合いが、シーフ王国で安い物件を紹介してくれるらしいんだ。だからそこでラニアと飲食店をやろうと思う。この国じゃ私はまともに商売なんてできないけど、隣国ならもしかしたら、なんて思ってな」
「そうなのか!」
「もし会った時は店に来てくれよ」
「ああ、もちろんだ」
別れの挨拶を終え、2人に手を振りながらその場を去った。
いつのまにか傾いた太陽を見て、帝都の外へ出る門まで歩く。
「ベルク!はぁはぁ。待ってくれ!」
後ろにはオスカルが立っていた。
「アルフレッドから出て行くこと聞いて、急いで来た。はぁはぁ」
「俺も最後に挨拶したかったんだ。ありがとうオスカル」
「飲み仲間が減っちまうのは悲しいな。でも、帰ってくるんだろ?うまい酒用意して待ってるから会いにこいよ!」
「もちろんだ!」
熱い握手を交わし、ベルクとレナはシーフ王国に向け旅立った。




