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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第2章 ハイドニア帝国編②
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第22話 本当の兄妹愛

 斧を取り戻したミーシャは、焦点の合わない目でこちらを睨む。


「【火精霊魔法 火竜の行進(ドラゴンズ・マーチ)】」


 6体のサラマンダーが、ミーシャを覆う。


「邪魔!」


 馬鹿力でサラマンダーの胴体を真っ二つに割り、すぐにベルクを倒そうとするが、姿が見当たらない。


「こっちだぜ【火精霊魔法 精霊憑依(ポゼッション・バイ・スピリッツ)】」


 後ろから聞こえてきた声に反応しようとするが、間に合わない。

 いつもより力強く、熱いベルクの蹴りがミーシャを吹き飛ばした。

 部屋の壁にぶつかりそうになったミーシャは壁を突き破り、宿屋の中庭へと着地する。


「魔力切れだ。くそっ」


「やめろやめろやめろ!ラニアにあわせろぉぉ」


 ミーシャの猛攻を刀でうけ続ける。重く硬い攻撃の1発1発がベルクの腕を疲弊させる。

 

 これ以上耐えられないと思ったベルクは、ミーシャの顔に蹴りをいれる。

 

 メキメキ。

 ベルクの足がへし折れる。ミーシャの斧の柄が、ベルクの脛を叩いていたのだ。


「うぁぁぁぁ」


 叫ぶミーシャが斧を振り上げ、うずくまるベルクの頭目掛けて斧を振り下ろそうとしたその時。

 

「やめろ!ベルクは殺させない」


 ベルクの体が浮き、アーシュの方向に引き寄せられる。


「あらかじめ付与魔法しこんどいてよかったよ」


「ありがとなアーシュ」


「無駄な抵抗やめなよ。どーせ死ぬんだからさぁぁぁ」


 こちらに走り出すミーシャに2人は何もなす術はない。

 

「アーシュ、ごめん」


 ベルクはそう告げ、腕を大きく広げてアーシュとミーシャの前に立ちはだかる。

 

「ごぶっ」


 縦に大きく切られたベルクはそのまま倒れてしまう。


「ベルク!」


「あははは、うひゃひゃひゃひゃひゃ」


 今立っているのはいきりたつミーシャと、腹部に大きなダメージを受けたアーシュだけ。

 勝負の結果は言うまでもなかった。


「おい、うちの妹いじめてるカスってのはお前か?」


「レノラ、その怪我した男と一緒に病院に行くんだ。ここは俺に任せとけ」


「なんだお前なんだお前なんだお前!」


「おいカス、名を名乗れ」


「あ?ミーシャだよ!うひひ」


「ミーシャか。うちのシマのルール教えてやるよ」


「なに?」


「ここでは俺が法律だ!【召喚魔法 |唯我独尊(アイ・アム•ザ•ロー)】」


 ザークはミーシャを指差して言う。


「ミーシャ、お前は鋸引きだ」


 地面に黒い穴が2つ空き、それぞれの穴の中から目の部分だけ穴が空いた黒い布を被る大男が這い出てくる。


 その男たちはミーシャの足を引っ掴む。


「こんな奴ら......僕の魔法が消えてた!?なにをした!?」


「答える義理はない」


 大男の1人はミーシャを押さえつけ、もう1人はコの字型の柱を、コの空いた部分を下にして建てた。


 ミーシャを押さえていた大男は、柱に彼女の足を縛りつけて吊り下げた。

 そして大きく鋭く血生臭い2メートールほどのノコギリを大男たちは2人がかりで、ミーシャの股の下にかまえた。

 

「僕、もう人は殺さない!だから許して!」


「そうか、まあ俺も人を惨殺する趣味はない。おい、解放してやれ」


 大男たちが粉々に崩れて消えていった。

 ザークが背を向けその場をさろうとした時。


「僕を信じちゃってバカだね!」


 ミーシャ背後から飛びかかるが、ザークは後ろも見ず後ろ蹴りをミーシャにお見舞いする。


「だろうな。俺も同じ穴の狢。クズの考えくらいわかる」


 吹き飛んだミーシャの首に手をまわし、締め落とす。

 

「ラニアは大丈夫かな......」


 ザークはミーシャを引きずりながらそう呟いた。


***


「起きたか!」


 見覚えのある病院のベットの上、体を起こすと目の前にアーシュがいた。


「あの女は?」


「兄貴がなんとかしてくれてる。そんなことより自分を犠牲にするなんて......」

 

「悪かった。もうしないよ」


「いや、私が足を引っ張ったのが悪い。そうだ、医者を呼ばなきゃいけないんだった」


 アーシュは急ぎ足で病室から出ていった。

 しばらくして医者が姿を見せる。


「えーっとあなたいつも大怪我されてません?」


 エドガーが困った顔をしながらそう言う。


「申し訳ないです」


「ベルクさん、一応私の魔法で血は補っておいたんですが、出血が多く、体力が回復するまで数日かかります。それまでは私の治癒魔法はかけられないので、くれぐれも安静に」


「わかりました」


「もうここに来ないでくださいね。お大事に」


 エドガーがそう告げて病室を後にした。

 そして、エドガーと入れ違いにアーシュと見知らぬ男が入ってきた。


「あんたがベルクだったか。うちの妹が迷惑をかけた。本当にすまない」


「君がアーシュのお兄さん?」


「そうだ。俺がレノラ・アーシュの兄、ザーク・アーシュだ」


「事を収めてくれたのはザークだ。謝られる筋合いはないよ」


「いや、謝らなければいけない。ベルクは迷惑をかけたうちの妹と仲良くしてくれたうえに、妹を庇ってくれた。」


 深々と頭を下げるザーク。

 ベルクは急いで頭を上げさせ『大丈夫だから』と繰り返した。


「そうだ忘れていた。ベルク、あんたの友達は無事だ。うちで保護してる」


「そうか。ほんとうにありがとう。ザークがいなかったら俺は今頃......。そういえばあの女はどうなったんだ?」


「ミーシャのことか。あいつならギルドに突き出した。だからもう安心だ」


***


 その後、アーシュからミーシャのことを聞いた。

 彼女は自宅の地下に、自らの魔法で生成した液体で満たした瓶に、生首を入れて飾っていたらしい。その数なんと15人分。

 その首は、ヘッドチーフの被害者と同じで、ギルドはミーシャがヘッドチーフなんじゃないかと疑って調査を続けているとか。


 それとミーシャはアーシュと一緒に暮らすようになったようだ。

 2人で新しい職を探すらしい。



「ベルク!料理教えてくれよ」


「ベルクさん、私もお願いします!」


「いいぞ、みんなで作ろうか」


 ベルクの泊まる部屋が時々賑やかになるようになった。



【魔法解説】


|唯我独尊(アイ・アム•ザ•ロー)

黒い布を被った執行人を呼び出す魔法。

大抵の刑罰を再現できる。また、執行人に触れられた者は魔法が使えなくなる。

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