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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第2章 ハイドニア帝国編②
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第21話 首狩りの兄、冒険者狩りの弟

 ラニアは一息おいて、自らの過去について話しはじめた。

 

「皆さんを巻き込んでしまったので全部話します。始まりは、僕たち姉妹が親を失った頃......」



「お姉ちゃんお腹すいたよ」


「ごめんねラニア、もう少し我慢して」


 親は流行り病で2人とも命を落としました。そのせいでお姉ちゃんは、私に代わってあるお店で働いていました。

 その店は厳しいものの、身寄りのない私たちを住み込みで働かせてくれる唯一の店でした。


「お疲れ様。ミーシャ」


「ジャックス、ありがとう」


「あれ、ラニアは?」


「ラニアならうちの弟のラバドルと外に遊びに行ってるよ」


 そのお店にはジャックスとラバドルと言う店主の息子たちが住んでいました。2人は私たちと仲良くしてくれたんです。

 特にジャックスは親を失い、妹の世話をし、日が暮れるまで働き疲弊したお姉ちゃんを癒す唯一の存在だったんです。だから、2人が惹かれ合うのも当然でした。

 

「兄さんそんなにくっついて何してるのー」


「お姉ちゃんラブラブじゃーん」


「おいラバドルどっか行けしっしっ」

 

「ちょっとラニアやめてよ!」


 こんな幸せな日々がずっと続けば......そんな願いは叶いませんでした。

 この時私たちは知らなかったんです。ジャックスとラバドルが親から虐待を受けていることに......。


「キャーーーー、て、店主さん!?」


 第一発見者はお姉ちゃんでした。店主の胴と首は切り離されており、ギルドの調査が入りましたが、犯人が見つかることがありませんでした。

 

 お店は店主の親族に奪われ、遺産もほとんどを持っていかれてしまいました。

 私たち4人は雀の涙ほどの遺産で小さな家を買って、力の強かったジャックスと強力な空間魔法が使えたラバドルは冒険者に、お姉ちゃんと私は小さな飲食店で働き始めました。

 そして、ジャックスがおかしくなったのはこの頃からです。

 彼は言葉遣いが荒くなり、夜な夜な野犬や鳥なんかの首をとり、自分の部屋に飾るようになりました。今思えば、店主を殺したのも彼だったのかも知れません。

 ですが、ジャックスがそんな風になっても、弟のラバドルと、お姉ちゃんは彼を愛し続けました。


 そんなジャックスの行動は日に日に酷くなっていき、ついにはあの事件が起きてしまいました。


「すみません。ギルドのものです。ジャックスさんが、今日昼頃にギルドで冒険者と揉め、殺されました」


「な、なんで!?ジャックスが何したって言うの!?」


「申し上げにくいのですが、その場に居合わせた冒険者達からの証言によると、ジャックスさんは冒険者仲間の首にナイフを突き立てようとしたところで返り討ちにあいました」


「嘘つけ!兄さんはそんなことしない!」


 この日を境に私たちはバラバラになりました。

 ラバドルは冒険者を狩りまわり、世間から冒険者狩りと呼ばれる犯罪者になりました。

 そしてお姉ちゃんは、ジャックスを失ったことを受け入れられず、ある日を境にジャックスの真似をするようになったんです。それは日に日にエスカレートしていって、私にラバドルになるよう強制し、無理に一人称を僕に変えさせられたり、ラバドルがかつてやっていた冒険者を無理やりやらされるようになりました。


 そんな中、魔物に襲われている時にベルクさんに会ったんです。

 今仲良くしてしまえばベルクさんにも危害が及んでしまうとは思っていました。でも、これ以上1人で冒険者を続けていけば死んじゃうんじゃないかって思って......。


「私は皆さんを巻き込んでしまいました。やっぱり私帰ります。これ以上迷惑をかけるわけには......」


「待て」


 アーシュが腕を掴み去ろうとしたラニアを引き止める。

 

「帰れないだろ。私の家にこないか?。絶対守るから」

 

「迷惑じゃありませんか?」


「私は強いんだ。あんなのなんて朝飯前だ」


「ありがとうございます」


 泣きながら感謝するラニア。

 しかし、温かい空気で満ちるこの空間を壊すものがいた。

 バキバキと扉を壊す音が聞こえる。

 

「ラニアァァァァァ!」


 獣の咆哮に似た叫び声に皆緊張感を覚える。


「2人ともレナを連れて逃げてくれないか?」


「ベルク1人じゃだめだ!私も戦う。ラニア、私の荷物の中にメモが入ってる。それは私の盗賊団のアジトまでの地図だ。そこまでレナと一緒に行って匿ってもらってくれ」


「わかりました!レナちゃん行くよ」


 窓から飛び出した2人を見送りベルクとアーシュは戦闘体制に入る。


「なに?あなたたち僕の邪魔しようってわけ?じゃあ死んで!」


 ミーシャはさっきまで背負っていなかった大斧を手に持つ。

 

「頼りにしてるぞアーシュ」


「任せといて」 


 大きく振った斧をベルクが刀で受け止め、アーシュが魔法を唱える。


「【付与魔法 真紅の鼠(レッド・ノース) 藍色の馬 (ブルー・サウス)】」


 アーシュが斧に触れ、赤く光る斧が青く光るアーシュの手に吸い付く。


「こんなもん振り回しちゃ危ないじゃないか」


「もういいもういいもういい。【液体生成魔法 全てを捨てて楽になれ(アバンドニング・エブリシング)】」


 ミーシャの手のひらから細い針が伸びてくる。それを自らの腕に刺した。

 

「フフフ、はぁはぁ、あああ」


 白目を剥き笑うミーシャは恐ろしく、背筋を凍らせる。


「あんたイカれてんな」


「うるさい!うううぅぅ」


 ミーシャは彼女を鼻で笑ったアーシュに勢いよく飛びかかる。

 その拳はアーシュの顔目掛けて飛んでいった。

 

「私をあんまり舐めるなよ」


 ミーシャの拳が青く光だす。

 しかし、ミーシャは拳を弾き飛ばされながらもさらに前進し、反対の手でアーシュの腹を殴る。

 ミーシャの腕は人間ではありえない方向に向いているのに、いっさい痛がる様子のない彼女は人間と呼べるか怪しかった。


「アーシュ!」


「僕は今脳のリミッターを外しちまった。へへっ、だから殴られたこいつはひとたまりもないんだよねぇぇぇぇ。諦める気になったでしょ?さっさとラニアを渡せぇぇ!」



【魔法解説】


全てを捨てて楽になれ(アバンドニング・エブリシング)

身体能力を上げたり、痛みを感じなくさせる液体を手のひらの針から出す魔法。

人間離れした力を手に入れられるが、思考能力の低下、頭痛、体温の上昇などの副作用がある。


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