第20話 数奇な運命
ラニアと約束通り、魔物を一緒に倒すこととなった。そのための準備をベルクはしていた。
「まずは、武器と魔法の確認だな」
「僕の武器はこれです」
ラニアは腰から少し湾曲している短剣を取り出す。
ベルクとラニアとレナは、ギルドで何やら話していた。
「これかっこいい!」
はしゃぐレナを横目に短剣を見つめる。
「刃こぼれもなさそうだし......うん、大丈夫そうだな」
「それで、えっと、魔法なんですが......」
「もしかしてここじゃ危ない?外に行く?」
「いえ、まだ一つしか使えない上に使う場面がないので......」
「一応見せてもらってもいいか?」
「わかりました【風魔法 風精霊の羽風】」
少し強い風が吹き、前髪が浮く。
「きついこと言うけど、冒険者には向いてないと思う。それでも冒険者になりたいって言うなら戦い方を考えるけどね」
「僕はやらなきゃいけないんです......」
「わかったよ。何かやり方を考える」
少し悩んだ後、ベルクは市場に行って唐辛子と油を買い、レナを宿へ送り届けて2人で小規模のオークの巣の駆除を受けた。
***
「今回のクエストはオークの巣の駆除なんだが、中には二体のオークがいるらしい。だから一体ずつ仕留めよう」
そう言いベルクは巣である洞窟へ駆け出す。
中は薄暗く獣臭がひどい。
しばらく歩くと唸り声が聞こえてきた。
「ベルクさん!」
「落ち着いて」
そう言い岩の影から声の聞こえる方を見る。
「二体いる。さっき言ったとおり最初に俺が1人倒すから、もう1人をお願い」
ベルクは足を静かに動かし、息を殺す。
オークの後ろにまわったところで刀を一直線に振り抜いた。
「うぐぉぉぉ」
悲鳴に似た雄叫びをあげ跪くオークの首を切り裂いた。
「ラニア!」
緊張でうまく動かない足を無理やり動かし、オークの前へと立つ。
「いきます!【風魔法 風精霊のは風】」
ポケットから瓶を取り出し中身を撒いて風にのせる。
もう一体の顔近くに風が舞うと同時にオークがうめき膝をつく。
「いまだ!」
ベルクのその声を合図にラニアがオークに近づき首を切った。
「はぁはぁ、つ、疲れたぁ」
「お疲れ。特性唐辛子催涙剤が効いてよかったよ。俺が解体やっとくから休んでおいて」
ラニアの肩をポンと叩いて、解体を始めた。
もう辞めたい。冒険者なんてほんとうはやりたくないのに......。本当に疲れた。
「解体終わったぞ。ん?どうかしたか?」
「あ、ありがとうございます!」
疲れた顔のラニアの視線がベルクの右手に集中する。
「えっと......そのお肉って......」
「オークのだ」
「えぇ......もしかして食べるんですか?」
「ああ」
「だ、大丈夫なんですか!?」
「見た目から食用にされないことが多いけど、クセもなくて普通の豚肉よりもジューシーで美味しいんだ」
「それならちょっと気になるかも」
「今日もお昼食べていく?」
「はい!」
***
「2日分の食費くらいにはなったかな?」
じゃらじゃらと報酬の入った箱を鳴らしながらベルクは言う。
「初めてこんなにもらいました。なんかすごい達成感」
2人がそう会話を交わしていると、前から赤髪の女がこちらに向かって歩いてきた。
「ベルクじゃんか!」
背中をバンバンと筋肉質な腕で叩いてくるアーシュは、隣に佇むラニアに目を向ける。
「こんにちは、えーっと......」
「僕ラニアです。はじめまして」
「はじめまして!」
「そういえば仕事見つかったか?」
「全然だよ」
「そうか。そうだ、また料理作っていくか?」
「ラニアは私がいていいのか?」
「いいですよ!人数多い方が楽しいですし」
ワイワイと会話が弾む3人を建物の陰から見張る者がいた。
「やっぱり僕に黙って......ラニア、僕許さないから......」
***
「レナちゃんこんにちは」
「久しぶりだな、レナ」
「ラニアお姉ちゃんにアーシュお姉ちゃん!」
抱きつくレナを横目にオークの肉を捌く。
「この前余ってたトマトを使って作ろうかな」
そう呟いた時、扉を叩く音が聞こえた。
「昼時に誰だろ」
扉を開けるとラニアが立っていた。いや、正確にはラニアにそっくりな女だ。
「ねぇ、ラニアいるんでしょ?」
「え?いますが......。呼んできましょうか?」
後ろを振り返りラニアを呼ぶ。
「ラニア、白髪の女の人がラニアのこと呼んでるぞ」
そう言った途端らにあの顔が引きつった。
震える足を無理やり運び、女へと近づく。
「お、お兄ちゃん、どうしてここに......」
「ラニア!なんでなんでなんでなんで!誰よこの人たち!僕を何度裏切るの!」
「ひっ、ご、ごごごめんなさい」
明らかにおかしいラニアの反応を見て、彼女の肩をつかみ女のほうへ行こうとするのを止める。
「僕のラニアに触るな!」
女はそう叫びベルクの腕にナイフを突き立てた。
痛みと女の顔に焦り、すぐにラニアを抱き寄せる。
「なんだあんた!頭おかしいぞ!」
「なによなによなによ。私がおかしいだなんて言って。もう許さないから......」
そう吐き捨て女は行ってしまった。
「大丈夫か?」
涙でぐちょぐちょのラニアにそう言った。
「ごめんなさい。私のせいで......」
「いや、ラニアのせいじゃないよ」
***
ラニアの涙がおさまってきた頃。
「もう大丈夫?」
「はい......」
「大丈夫かよ、ラニア」
「それで、ラニアのお兄ちゃん?はいつもあんな感じなのか?」
「昔は、もう少し優しかったです」
「何かあったのか?」
「そ、それは......」
ばつの悪そうな顔をするラニア。
「言ってくれないと助けることもできないんだ。頼む」
「わかりました」
そう言い少しの沈黙の後、ラニアは話し始めた。
「始まりは、僕たち姉妹が親を失った頃......」
【魔法解説】
風精霊の羽風
髪を揺らすほどのそよ風を操る魔法。
風が弱い代わりに、僅かな魔力で精密な操作が可能。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これで20話目になりました。ここまで長く続いた趣味は初めてです。これも、読んでくださる皆様のおかげです。よければ、評価、ブックマーク、感想をお願いします。




