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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第2章 ハイドニア帝国編②
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第19話 悪魔とアイスクリーム

 ベルクとレナは魔道具屋に来ていた。

 

「冷蔵鞄買い換えようかな」


 昨日穴が空いてしまった冷蔵鞄を買い換えようか悩んでいると、隣の魔道具が目につく。


「凍結箱?」


 顔ほどの大きさの箱を持ち首を傾げていると、店主が話しかけてきた。


「それが気になるのかい?それはね、入れたものを凍らせる魔道具さ。元々商人が使っていた巨大なものを小型化したんだ」


「へぇー」


 生ものなんかはこれに入れておけば日持ちしそうだしいいな。


「よし、この凍結箱と冷蔵鞄をくれ」


「まいどー」


***


「早く僕をベルクとやらのところに連れて行ってください」


 ギルドマスターの部屋で、緑髪の青年がヴァレリアにそう言った。


「わ、わかった。でも、ベルクには手を出さないと約束して欲しい」


「なに?僕のこと無差別殺人鬼か何かかと思ってるの?」


「いや、そう言うつもりじゃ......。それにしても、一体なんでベルクに会いたいんだ?」


「君が『おはぎ』という僕が聞いたことのない食べ物の名前を言ったからさ。僕はその製作者に会いたいんだ」


「もしかしてそのために私を生かしたのか」


「それもあるね。でも君は僕の正体を人に話さなさそうだったのもあるかな」


「そういえば、あなたは地獄にいたんじゃ......7

なぜこの世界の食べ物のことを?」


「僕ほどの悪魔なら霊体で現世に行けるんだよ。それより早くベルクに会わせてくれ。僕は別に君とお喋りしたいわけじゃない」


***


 

 

「はじめまして。さっそくで悪いんだが、君の作った菓子が食べたい」 


 緑髪の青年は唐突にそう話しはじめた。


 なんだこの人。新手の乞食かなにかか?


「えっと......君は誰?」


「そうだな、べルとでも呼んで」


「そうなんだ。ベル君の親御さんは......?」


「そうか、僕の見た目は今青年なのか。困ったな」


 なにか考えている様子でボソボソと呟くベル。その後ろから誰かが息を切らしながら走ってきた。


「その子はその、なんと言うか......とりあえず本当にすまないが、ベルに食べさせてあげられないか。」


 額を汗で湿らせながら走ってきたヴァレリアがそう言ったので、仕方なく中に入れてあげる。


「俺は何をすれば......?」


 変な状況に困惑を隠せないベルク。


「後からなんでもする。だから、ベルにお菓子を作ってあげられないか」


「わ、わかった」


 ちょうど作ろうとしていたレナのおやつ用のお菓子を作る準備を始める。

 

「あ、ヴァレリアお姉ちゃん!」


 ベットに潜っていたレナが顔を出してヴァレリアの方へ駆け出す。


「すまないレナ」


「なんで謝るの?」


「いや、なんでもない」


 ヴァレリアがレナの頭を撫でながらそう話す横で、ベルがベルクの手元を興味津々に見ていた。


 牛乳と砂糖を鍋に注ぎ火にかける。


「このくらいでいいかな」

 

 ベルクはそう話しながらボウルに卵黄と煮た牛乳を加える。


「す、すごい!白身が何倍にも膨らんでいる!」


 ベルクがメレンゲを作り出すと、ベルが驚嘆の声を上げる。


「これをさっきのと混ぜ合わせて......。次はこれを使う」


 ベルクは先ほど買った凍結箱を取り出す。


「これは......。氷魔法が仕込まれた魔道具か。でもこれを何に使うんだ?」


「よくわかったな。これで凍らすんだよ」


 箱の中にさっき混ぜ合わせたものを入れる。


「これで完成か?」


「いや、もう少しだ」


 そう言って箱から取り出して再び混ぜる。

 その作業を2、3度繰り返した後に、人数分の皿の上に丸く盛り付けた。


「アイスクリームの完成だ」


「見たことのない、だがとても魅力的な菓子......。さっそく頂こう」


 ベルは一口分よりやや少ないくらいのアイスをスプーンでとり、味わうようにゆっくりと食べた。


「素晴らしい!ベルクの腕は本物だな。そんなベルクを見込んで頼みがある。知っている菓子のレシピを全てくれ。金ならヴァレリアがいくらでも出す」


「レシピくらいならいくらでもあげるよ。金はもちろんいらない。そんなに俺の料理を気に入ってくれたならね」


「ふむ、そうか」


 ベルクは紙にさまざまなレシピを書き始める。

 珍しい食材を使ったものから、あまり物でできるもの、甘かったり、コクがあったり、酸っぱかったり、どれもベルの目を引く美味しそうなものばかりだった。


「ほんとうに何もいらないのか?」


「いいよ。こんなこといくらでもタダでやるさ」


「こんな人間もいるのか......フフフ面白い。よかったら最後に握手してくれないか?」


「握手か?いいぞ」


 ベルクはベルに手を握られた瞬間視界が歪む。

 手から何か得体の知れないものが流れてくる感覚だけが感じられた。

 

 頭が回る。どっちが地面だったっけ......。


***


「レナ、ほんとうにすまない。私のせいだ......。自分の保身のためにここにあいつを連れてきてしまった。」


 ヴァレリアの話す声とレナの啜り泣く聞こえる。

 

「うっ、頭がくらくらする」


「ベルク!」


 頭を押さえ体を起こすと半泣きのレナが抱きついてくる。

 

「一体何があったんだ」


「私の連れてきたベルのせいだ。だから、全て私の責任だ......」

 

「ベルって何者なんだ?ヴァレリアにあんなにでかい態度をとれる奴なんてなかなかいないだろ」


「ベルの正体は言えない。言ったら私もベルクも無事じゃ済まない。だがあいつは人を殺すことも厭わない化け物だってことだけは言える」


「そうか......うぐっ」


 頭が痛い。何が......。


【禁忌魔法 暴食の業火(グラトニー・ファイア)


 新しい魔法?


 ベルクの頭に浮かんだのは、火精霊魔法じゃない5つ目の魔法。

 

「なあヴァレリア、禁忌魔法ってなんだ......?」


 その後ヴァレリアに色々と調べてもらったが、どの文献にも『禁忌魔法』の記述はなく、この魔法を俺に与えたであろうベルも姿を消し、5つ目の魔法は謎に包まれたままとなった。



【魔法解説】


暴食の業火(グラトニー・ファイア)

どの文献にも載っていない謎に包まれた魔法。

おそらくベルによって発現したもの。

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