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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第2章 ハイドニア帝国編②
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第17話 ベルクのお料理教室

「ここがベルクの住んでいるところか」


 アーシュは地図と睨めっこしながらやっとついた目的地に嬉しさを噛み締めて、宿の中へと入る。

 ベルクの住む部屋の扉をノックするが返事はない。


「いないのか?」


 もう一度出直そうと思ったその時。


「何しにきた!?」


 買い物帰りだろうか。食材の袋を持ったベルクが、咄嗟にレナを後ろに庇って、刀をこちらに向けていた。


「待って、私は戦いに来たわけじゃない」


「じゃあなんなんだよ!」


「その、戦い方を教えて欲しい」


「なんでお前に......第一俺がそんなことを教えれば犠牲者が増えるだけだろ!」


「もう一般人は襲わない。卑劣な奴しか狙わないんだ。兄貴に約束した」


「それでも人殺しには変わりない!それに、一般人を殺そうとしてたお前は信じられない」


「それはあいつらが私たちを......いや何でもない。私が悪かった。この話忘れてくれ」


 ベルクは『あいつらが私たちを』と言う言葉が引っかかった。


「あいつらが私たちを?」


「いや、私の先祖が国家反逆を企てて、あそこら辺の奴らに迫害されてるってだけさ」


 追い返すつもりだったベルクの口から思いもよらない言葉が次々と溢れでる。


「普通の仕事はできないのか?」


「頭が悪いうえに迫害の対象を雇ってくれるところなんてあるわけないさ」


「俺、料理くらいなら教えられるぞ。料理ができたら雇ってくれたり......いやすまない。今までの苦労を知らないのに出過ぎたことを言った」


 アーシュは重い足取りで宿を後にした。

 

***


 盗賊団のアジトの自室で、アーシュは悩む。


「私に盗賊以外の仕事ができるかな......」


 ベットの上で寝転がりながら想いにふけっていたアーシュはいつのまにか眠ってしまった。



「レノラ!テメェ舐めてんのか?酒買ってこいや」

 

「や、やめてよ父さん」



「うっ」


 嫌な夢を見た。

 

 アーシュは目を擦り体を起こして、過去のことを思い出す。


 私の親は愛情も道徳も、生きていくために必要なものはひとつも教えてくれなかった。唯一教えてくれたのは暴力への恐怖。

 

 15歳のころ、兄貴と一緒に親元から逃げ出した。だけど、私たちの一族はまともな職につかせてもらえない。だから、スラムの悪ガキどもと盗賊団を結成した。

 兄貴の強い魔法と、悪党ばかりを狙ったことで、盗賊団はみるみる力をつけていったんだ。5年後には帝国で1番でかい盗賊団なんて騒がれ始めたっけ。

 

 私はこれで少しでも社会貢献できているなんて、勝手な妄想をしていた。悪党を狙ったところで盗賊はクズとしか思われない......。


 ある日地元に帰った時、町の人に殴られた。

『あんたら盗賊は殺せば金になるんだよ』とか『反逆者は死んで当然』なんて言いながら斧なんかを振り回してきた。

 必死に逃げたが、仲間の1人が殺された。


 あの日から、兄貴に黙ってあそこらへんの一般人からも物を盗むようになった。

 

 戦っている時が1番楽しかった。拳の痛みで、心の痛みが紛らわせたから......。


 そんなふうに過ごしていた時、ベルクと出会ったんだ。

 ベルクは見ず知らずの町の人のために体を張り、守り切った。

 そんな姿を見て、自分のやっていることを見直し、ベルクがなんでそんな風な行動をできるのか知りたくなった。

 だから足りない頭で考えて、戦い方を教えてもらうって名目でベルクに近づいたんだが......。

 

 そりゃ怒るよな。でも、結局最後は優しく接してくれた。

 

「料理教わってみようかな」


 アーシュは勇気ある決意をして、拳を握りしめた。

 

***


 ベルクは眠い目を擦りながら1日を過ごしていた。

 昨日のアーシュの落ち込んだ顔が忘れられずあまり眠れなかったのだ。

 だが、そんな思いもすぐに払拭されることとなる。

 外が賑わってきた朝の10時頃、訪問者があった。


「どちら様ですか」


「ベルク、その、料理を教えてくれ」


「アーシュ!来てくれたのか」


「私あんまり料理したことないんだが......」


「俺が言った通りに作れば大丈夫だよ」


 そう自信満々に言った自分を十数分後には恨みたくなった。


「まずい、指きっちまった」


「傷口洗えば大丈夫。初心者にはよくあることだからね」

 

「ベルク、塩と砂糖間違えちまった」

 

「うーん、まあ味を整えれば食べれるよ」


「やば!鍋ひっくり返しちまった」


「......」


 こんなに下手くそな人初めて見たよ。


「やっぱり私才能ないかもしれない......」


「そ、そんなことないよ......繰り返せばよくなるさ。はは......」


 その日からアーシュは毎日ベルクの元へ通った。


2日目

オニオンスープを作るが、玉ねぎを黒焦げに。


5日目

目玉焼きを作るが、皿に移すときに勢い余って壁に目玉焼きがへばりついた。


 そしてついに迎えた7日目。料理を作り始めて1週間。

 意外にも少しずつ成果が出てきていた。

 今日作る料理は、ひよこ豆とキャベツのスープ、ソーセージ焼き、パンといった一般的なご飯。


「じゃあ始めようか」


「よし、やるぞ!」


「じゃあまずは俺が水煮にしておいた豆を鍋に入れて煮るんだ」


「できた」

 

「次にキャベツを切って鍋に加えて、塩で味を整えたら完成だ」


「できた!できたよベルク!」


 その後もソーセージをうまく焼き、パンを丁寧に切って初めてまともな料理を作ることができた。


「アーシュお姉ちゃん、これ美味しいね」


「そうか?ふふふ、私やったんだ!」


 アーシュの歩みは遅いながらも、確実に前へと進んでいた。

これで目標の50000字に達しましたので、次回の投稿は8月26日からとさせてもらいます。

身勝手な理由で投稿予定を変えてしまい申し訳ありませんでした。

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