第15話 禁術 悪魔召喚
カルロスは魔法陣の真ん中に、先ほどヴァレリアの魔力を吸収した黒い短剣を突き立てた。
そして、両腕を広げて上を向く。
「猫人族の心臓6つを捧げます 【召喚魔法 堕天使との契り】」
供物皿がカタカタと揺れだし、布袋から大量の蝿が湧き出す。それは、魔法陣の中心で集まり、1メートルほどの塊となった時、カルロスの隣にいた悪魔が騒ぎ出した。
「カルロス様、これまずい、今すぐやめろ!」
「何を慌てるのですか?私の召喚魔法で召喚した悪魔は私に服従します。あなたがいい例じゃないですか」
「だ、だめなんだ、このお方だけは呼び出してはだめなんだよぉぉぉ」
悪魔はガタガタと小刻みに震えて、頭を抱えながらうずくまってしまう。
「6人の人間を使って呼び出したのに、あなた情けないですねぇ」
カルロスは、はぁ、とため息をつき、儀式に集中する。
みるみるうちに蝿たちが、人の形を作っていく。
「素晴らしい、この禍々しいオーラ!これで私は世界を手に入れられる!」
魔法陣の真ん中の蝿が四方八方に飛び去り、緑髪の青年が現れた。
その青年の目は冷たく、見つめたものを怯えさせるには十分な迫力だった。
「素晴らしい!素晴らしいですよぉ!さぁ私と共にこの世界を汚して汚して汚して、全てを血に染めましょう!」
「あ?僕に何しろだって?」
青年は鋭く冷たい目でカルロスを睨みつける。殺気を纏うその目は、場の空気を凍らせる。
「わ、私に服従しなさい!私に召喚された悪魔なのにその態度はなんですか?」
「全てを血に染めるだ?他人の力借りないと何もできない劣等種が何言ってんの?」
「ふー、ふー、いいでしょう、それならそこの女と、先ほど閉じ込めた6人の人間も捧げますから!」
「いくらゴミを貰ったところで何もしないよ、僕」
「もういい!あなたはもういりません!」
「イラっときたわ、じゃあね」
「あなたなんなんで......ゴボッゴボッ」
カルロスが蛆虫の混じる血を吐き出し、もがき苦しむ。
「な、なにをしたぁぁぁぁ」
叫ぶカルロスの声は徐々に弱まり、やがて動かなくなった。
「あ、あなたは、私たち人間を滅ぼすのか?」
恐る恐るヴァレリアが口を開いた。
「いや、そんなことはしないよ。確かに君たち劣等種は愚かだ。だけど僕は君たちの文化は素晴らしいと思う。特に食文化!無理やり召喚されちゃってしばらく帰れないし、人間のふりして暮らそうと思ってるんだ」
「そ、そうか、それならよかった」
「あー、でも僕悪魔だってこと隠したいんだよねー。だから死んでくれない?人ってすぐ死ぬし、今死ぬかちょっと後に死ぬかの違いだからいいよね?」
ヴァレリアの全身から冷や汗が吹き出始める。
「ひぃぃぃ」
うずくまっていた悪魔が叫び声をあげて、逃げ出した。
それを青年は逃さない。首を掴みそのままへし折ってしまった。すると悪魔はみるみるうちに溶け出し、青年の足元には黒い水たまりができた。
青年が水たまりを踏みながらこちらに歩み出す。
「じゃあね」
「私はもう死ぬのか......最後に甘いものが食べたかった。ああ、ベルクのおはぎ美味しかったなぁ」
ヴァレリアにのびた手がピタッと止まる。
「ふむ、やっぱり君は生かしておくよ」
***
ペチン。
ベルクの顔に衝撃が走った。
それに驚き目を開けると、口元にレナの手が置かれていた。
その手を優しくどかし、体を起こす。
「おはようベルク、いいニュースがあるんだ。カルロスが死んだ」
「ほ、ほんとか!?」
「ああ、報告したから俺は家に帰るよ」
「オスカルありがとな」
「俺はなんにもしてねぇよ」
そう言い残しオスカルは部屋から出ていった。
外は晴れ、心地の良い陽気が眠気を誘う。
「外に出るか」
眠気を覚まそうとベルクは外に出た。
爽やかに吹いていた朝風が少し強くなる。すると、何かが風に乗ってとび、ベルクの顔に張り付いた。
「うっ、なんだこれ?」
張り付く物を剥がすと、それが何なのか明らかになる。
「『15人目の被害者発見、ヘッドチーフの犯行か?』 うわ、物騒だな」
いつのまにか太陽は雲が覆い、灰色の空は今にも涙を落としそうだった。
***
「フフフ、なんで美しいんだろう」
白髪の少女は、ツンとする臭いが漂う部屋で、棚に綺麗に陳列された瓶を撫でていた。
「君もそう思うだろう?」
少女の声に答えるものはいない。それを気にせず少女は話し続ける。
「君もすぐに仲間にしてあげるよ。君は完璧な形になるんだ。ずっとずっとずっと美しいまま僕に愛され続けるんだよ」
そう言って歩き出した足音は、部屋の中央のテーブルへと向かっていた。
テーブルには何かの液体が入った瓶と、目が虚な男があった。首から下のない......。
「【液体生成魔法 永遠に君を想う】」
少女の手のひらから細い針が飛び出る。
それを男に突き刺した。
「僕の愛を受け取って。これで君は腐ることはない。永遠に僕と一緒だね」
その後、瓶に詰められた男は、棚に並べられた瓶のひとつとなる。
「可愛いね」
瓶にうつった少女の顔は真っ白の歯を剥き出して笑っていた。
【魔法解説】
堕天使との契り
心臓を捧げることにより、悪魔に実体をもたせ、召喚する魔法。
捧げる心臓の種類や数によって召喚される悪魔は異なる。
また、魔法陣を媒体として召喚することで、より強い悪魔を召喚できる。
永遠に君を想う
手のひらから針を出し、そこから生物の腐敗を防ぐ液体を出す魔法。
これで第1章終了となります。。
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2章からは9月ごろから投稿を再開いたします。




