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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第1章 ハイドニア帝国編①
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第12話 逆恨み

 日が沈み、すっかり暗くなった帰り道、たちこめる闇に隠れていたいくつもの人影が、ベルクとレナの前に姿を現す。


「殺す、殺してやる、殺して......」


 息を荒げ、そう呟く人たちに、既視感と危機感を同時に覚えた。


「貴方のような下民が、私に勝ったという事実は、この世から貴方ごと消し去らなければなりません!大人しく死んで、そのカルロス様の奴隷を渡しなさい!」


 いきりたつ5人の人の奥に、エドワードが立っていた。


「お前は人攫いの......」


 一度落ち着け。相手は6人、レナを守りながらこれだけの人数を捌けるだろうか。とりあえず、ギルドの治安維持員のユーリから貰った魔道具を使おう。

 

 エドワードたちから見えないように、ベルクは魔道具を起動させた。

 

 よし、これでギルドの人たちが駆けつけてくれるだろう。それまで耐えないと。とりあえず刀を......あれ、刀がない......。くそ、とりあえずレナを守らないと。


「【火精霊魔法 火竜の行進(ドラゴンズ・マーチ)】」


 ベルクたちと、エドワードたちの間の地面に亀裂が入り、火と共に炎に覆われたトカゲ、サラマンダーが3匹這い出てくる。


「なんですか!この汚らわしいトカゲは!貴方たち、早く殺しなさい! 【心身操作魔法 愚者の戯言(フールズ・プレイ)】」


 人攫いたちが、炎を恐れずサラマンダーに飛びかかる。皮膚が爛れてもなお、サラマンダーに剣を突き立てる様子は、狂気そのものだった。


 まずいこのままじゃすぐにサラマンダーたちが......。

 

 その時、背後から声が聞こえる。


「ベルクさん、刀をお店に忘れてました......な、なにしてるんですか!」


「刀ありがとう、それと早く逃げてくれ、こいつらはレナを狙う人攫いたちなんだ。君に何かあってはアルフレッドに合わせる顔がない」


「レナちゃんがいくら可愛いからって......私、この人たち許せません!私も戦います!」


「戦うって......武器もないのに大丈夫なのか」


「任せてください!【加護拝受魔法 不完全な天啓(インコンプリート・レベレーション)】」


 ロゼの前の地面から、透き通るような白い手が現れる。その手は、顔ほどのサイコロを握っており、それを地面へと落とした。

 サイコロは3の目を上にし止まる。すると、サイコロがドロドロと溶け出し、それを手が掴み、ドロドロだったものが、みるみる何かを形作っていく。

 サイコロだったものはあっという間に大鎌へと姿を変え、ロゼは手からそれを受けとる。


「天啓は承りました。さあ、レナちゃんは渡しません!かかって来なさい!」


「貴方も邪魔しに来たんですか?愚図な亜人が、くたばってしまえ!」


 サラマンダーを刺し殺した人攫いたちが、ジリジリとこちらへ詰め寄ってくる。


「そこまでです!その人たちから離れなさい!」


 エドワードたちを囲むように、ギルドの治安維持員が現れる。


「大丈夫ですか?ベルクさん」


「ありがとう、ユーリ」


「ああああ、どうして皆私たちの邪魔をするのですか!はぁはぁ、また失敗してしまった......」


「みなさん、その人たちを捕らえてください!」


 ユーリたちが、人攫いたちを拘束しようとする。その時、エドワードの様子が一変した。


「カルロスさまぁぁ、申し訳ございませぇぇん、許してぐださぃぃぃ」


「な、カルロスだと?」


 ユーリがカルロスという名を聞いて顔を青ざめる。

 エドワードは、虚空に向かってカルロスへの謝罪を泣きながら続けていた。


「まずい、みなさんその人たちを、エドワードから離してください!早く!」


 ユーリがそう声をかけたが遅かった。

 人攫いたちが血を吐き始め、その血一滴一滴が意思を持ったように、エドワードの周りに円を描く。そして、その円の中に複雑な模様を作り出した。


「この5人を贄として捧げます......」


 エドワードが円の中心で、白目をむいてそう呟くと、人攫いたちの血がエドワードをつつむ。


「ゴポポ、ニエ、タリナイ」


 エドワードの中に全て吸収された血を、少し口から吐きながら、そうエドワードだったものが話す。


「ひ、ひぃぃぃ」


 それを見たギルドの治安維持員の数人が、怯えだす。


「あなたたちは、魔力量に恵まれているようですね」


ユーリがベルク、レナ、ロゼの3人に言う。


「どういうことだ?」


「あれはカルロスの召喚魔法なんです。カルロスは、悪魔に実体を持たせ現世に召喚する魔法を使うんですよ。その魔法で召喚された悪魔を見た魔力量の少ない人は、ものすごい恐怖感を与えられるんです」


「悪魔って......倒せるのか?」


「体内に赤い水晶があります。それを壊せば、姿を保てなくなって死ぬと思います」


「わかった、赤い水晶だな」


 倒し方を頭に入れ、刀を抜く。


「悪魔の影響を受けてない人は、この3人を守ってください、僕があの悪魔を倒します」


「1人で大丈夫なのか?」


「ピンチになったら手を貸してもらいますが、なるべくあなたたちの手は汚させないようにしますよ。あなたたちを怪我させては、治安維持員を名乗れませんから」


 ユーリは腰のレイピアを抜き、悪魔へとその刃を突き立てる。刺さった剣先は、剣の柄から離れた。

 

「【雷魔法 迅雷の雷火(ファイア・オブ・サンダー)】」


 ユーリの手から放たれた電気は、悪魔に刺さったレイピアの刃先に集まり、悪魔の体が痙攣し始める。すると、火がつき始めて悪魔の体が火に覆われた。

 尚も痙攣し続ける悪魔の体からは、血が吹き出し、それと共に赤い水晶が出てくる。


「出てきましたね」


 ユーリは水晶を拾うため近づいて行く。

 その時、吹き出す血の量が増えて、ユーリの体を包み込む。血でできた巨大なスライムのような見た目となった悪魔は、こちらに這いずり始めた。

 

「ユーリさん!」


 戦いの様子を見守っていた治安維持員の2人が、悪魔に向かい走り出す。

 2人が振るう剣ごと、悪魔は飲み込んでいく。

 ユーリは吐き出されたが、残りの2人は鎧ごと溶かされてしまった。


「な、なんだよあれ......」


 3人は恐怖に襲われ、息が荒くなる。


「ベルクさん、どうしますか」


「適当に刃を刺して、水晶に当てるくらいしか方法はないだろうな。魔力さえあれば......」


「でもそれをやるしかないですね」


 2人は悪魔に向かって駆け出し、武器を振るう。

 血でできたその体は、手応えがなく、振るわれた武器がすり抜けてしまう。

 

「くそ、埒が開かない」


「ベルクさん!これ」


 ロゼが青色の液体の入った小瓶を手渡してくる。 


「これ多分魔力回復剤です、さっき飲み込まれた人たちが落としたものだと思います。これでなんとかできたりしませんか?」


「数秒動きを止めてくれれば、なんとかなるかもしれない」

 

「わかりました、任せてください! 【加護拝受魔法 剛腕の秘薬(エリクサー・オブ・パワー)】」


 ロゼの前の地面から、手をお椀の形にした手が現れる。その手の中には、透き通った液体が入っており、ロゼがそれを口にふくむ。

 ふー、と息を吐き飛び上がって、悪魔の近くの地面に拳を叩きつける。

 地面が凹み、できた溝に悪魔がはまる。


「這い上がってくる前に、ベルクさんお願いします!」

 

「【火精霊魔法 炎の精霊の一撃(ファイア・スピリット・ストライク)】」


 ベルクの背後から、5メートルほどのイフリートが現れ、悪魔に向けて火を放つ。

 柱のように、まっすぐ放たれた火が、悪魔を吹き飛ばす。

 飛び散りもう動かなくなった血溜まりを見て、一息つく。


「レナ怪我はないか?」


「うん、大丈夫だよ」


「レナちゃんよかったよー」


 ロゼがレナを抱きしめる。

 なんとかなってよかった。そう思い、2人の微笑ましい姿をベルクは眺めていた。



【魔法解説】


火竜の行進(ドラゴンズ・マーチ)

サラマンダーを8体まで召喚できる。

このサラマンダーには『守れ』『攻撃しろ』などの簡単な命令を下すことができる。


不完全な天啓(インコンプリート・レベレーション)

ランダムな武器を生成する魔法。

一度武器を生成するとそれが24時間消えず、不完全な天啓(インコンプリート・レベレーション)は生成した武器が消えるまで使うことができない。


迅雷の雷火(ファイア・オブ・サンダー)

雷を放つ魔法。

これを食らった相手は、感電し焼け死ぬ。


剛腕の秘薬(エリクサー・オブ・パワー)

飲むと身体能力を3倍にする液体を生成する魔法。

ただし、ロゼ以外が飲んでも効果はない。


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