表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第1章 ハイドニア帝国編①
10/79

第10話 女盗賊アーシュ

「はぁはぁ」


 ベルクは苦戦していた。魔法によって、地面のそこらじゅうが青く光り、磁気を付与した足で跳び回るアーシュに攻撃を当てるのは至難の業だった。


「もう終わりかよ、じゃああんたをさっさと殺して、町の奴ら襲っときますか」


「【火精霊魔法 精霊憑依(ポゼッション・バイ・スピリッツ)】」


 ツノが生え、体に亀裂が入り火が噴き出す。先ほどよりも大きくなったベルクを見て、アーシュは興奮していた。


「やっと本気を出したんだね、わたしワクワクしてきたよ」


「そう言ってられるのも今のうちだぞ」


 こちらに飛び込んでくるアーシュに向け拳を突き上げる。大きく突き上げられた拳は、地面にかれ猛スピードで飛んでくるアーシュには当たらず、空を切った。

 

「ゴブっ」


 大きな隙を与えてしまったベルクは、肩と左手首に赤い磁気を、胸に青い磁気をつけられ、左手首がかなりの速さで胸に張り付いた。

 

「見た目が強そうになっただけかよ、そろそろ終わらせるか」  


 咳き込みうずくまるベルクに、吐き捨てるようにアーシュが言う。

 

「はぁはぁ、や、やめろ、この町には立ち入らせないからな」


 そう言いアーシュに向けて何かを投げた。それは、うずくまった時にとった、地面の磁気を帯びた部分だった。

 だが、土は青い磁気を帯びており、アーシュの足の青い磁気に弾き返された。


「おいおい情けねぇなぁ、土投げるなんて、ガキの喧嘩じゃあるまいし、ほんとにお前には――」


 バチーンっと大きな音を立てて、アーシュの足に何かがくっつく。肩から血が吹き出しているベルクには、先ほど付与したはずの磁気が帯びた部分が付いていなかった。

 かなりの勢いでくっついた肩の肉は、アーシュの足を掬い、まともな受け身もとれず、地面に激突した。

 

「うっ、うぐ」


 うつ伏せになってうめくアーシュの背中に、拳を叩きつける。ミシミシと嫌な音を立てるのと同時に、青く光っていた地面の光が消え、左手の自由が取り戻された。

 

「いってぇ......はぁ、大人しく牢屋の中で反省しろ」


 ベルクの拳で焼け、何本か骨に異常をきたしたであろう背中を見て、もう起き上がれないだろうと思い、アーシュに背を向け歩き出す。


「うぐっ、はぁはぁ、おい......待てよ」


 口の血を拭いながらアーシュが立ち上がる。

 

「これ以上やったら命に関わるぞ」 


「ハハハ、命を賭けなきゃ......楽しくねぇだろ?ゲホッゲホッ」


 最後の力を振り絞り出した魔法で吹き飛んでくるアーシュを、ベルクが防ごうとするが、肩が抉れた右腕がうまく動かない。防ぎきれなかったアーシュの膝蹴りが、ベルクの負傷した胸を凹ませる。意識が飛びかけ、魔法が解けたベルクも、負けじとアーシュを殴り飛ばす。

    

「楽しくなってきたなぁぁ!」


 雄叫びをあげるアーシュと殴り合う。

 数発殴り合ったところでアーシュが倒れる。


「あんたなかなかやるじゃないか......ケジメつけなきゃいけねーのに......はぁはぁ、楽しんじまった......」


「テメェ殺してやる!」


 気絶したアーシュを見た盗賊たちが、いきり立ち始める。

 くそ、もう戦う魔力も気力もない......。


「おいおい誰を殺すだって?ベルクは数で物を言わせる雑魚どもに負けるような玉じゃねえよ」


 そこにはオルソが、オスカルや十数人の門番たちを連れてきていた。


「ベルクよく耐えたな、あとは任せとけ」


「ありがとう、オスカル」


 盗賊たちは、さっきの威勢はどこへやら、予想以上の人数の助っ人にビビり、投降した。


***


 窓から差す日差しがベルクを起こした。そのところどころ痛む体に鞭打って、宿屋の部屋から出る。ベルクの頭には、バジリスクのことしかなかったため、足を引きずり店へと向かう。

 その包帯だらけの手で店の扉を開けた。


「すみません、バジリスク食べにきました」


「にぃちゃん大丈夫か、包帯がたくさん巻かれとるが」


「大丈夫ですからそれよりもバジリスクを......」


「わかったわかった、そう焦らんでも作ってやるから」


 バジリスク、その大蛇のような見た目の怪物は、ぶつ切りにされ、串に刺されて、炭火で焼か始めた。部屋に充満する炭の匂いだけで、ワクワクしてくる。

 

「ほらにいちゃん、食べな」


 炭火焼き特有の芳しい香りが、胃を刺激する。

 口の中に入れた途端、鶏肉に近い食感の肉がほぐれ、鶏肉よりも濃い味が、口の中に広がった。

 すごく美味しい。塩だけのシンプルな味付けのおかげで、肉の味がより楽しめる。でも一つ不満があるとすれば、量が少ない。

 すでに串焼きがなくなった皿を見つめて思う。だがそんな不満もすぐに解消された。


「今度は蒲焼だよ」


 塩とは違い、甘じょっぱいタレが肉によく合う。それに、炭の匂いもいい。


「そういえば、バジリスクの肝なんて食べられるのか?毒とかそーいうのは......?」

 

「心配いらないよ、捌き方さえ分かってりゃ誰でも食べられるからねぇ」

 

 そう言いながら、目の前に大きな鍋を置いてくれる。


「バジリスクのもつ鍋だよ」


 脂の浮く透明なスープに、肝と葉野菜たちが入っていた。

 先ほどまで火にかけられていた熱々の肝を掬い上げ、口へと運ぶ。ぷりぷりとした食感で、噛めば噛むほど旨味が滲み出てくる。

 心の中でガッツポーズをして、箸を動かし続けていると、勢いよく店の扉が開けられる音がした。


「ベルク、お前3日も寝込んでたのに、起きて早々出歩くなよ」


 そこには、心配そうな顔をしたアルフレッドとオスカルが、立っていた。


「ベルクなに食べてるの?」


 2人の脇からレナが顔を出す。


「レナ、こっちおいで、ほらあーん」


 残っていた蒲焼を食べさせる。


「おいしいー」


「ほら、2人もそんなところに立ってないで、一緒に食べるぞ」


「俺はお前を本当に心配して来たのに......」


「まぁいいじゃねぇか、あいつが1番頑張ったんだし」


 ため息をつくアルフレッドを、オスカルがなだめ、みんなで食卓を囲んだ。

 

***


 翌日、町の門の前で村人たちから感謝されていた。


「本当にありがとう、君が居なかったらどうなっていたことか」


「よかったらこれ貰ってくれないか?」


「私もこれよかったら......」


「いや、こんなの貰えませんよ、第一に盗賊たちは自分たちを追って来たんです」


「それでも、1人の犠牲も出さずに倒してくれたんだ。お礼くらいさせてくれ」


 そう言われたので、日用品や食料なんかを両手いっぱいに受け取った。

 町の人たちに別れを告げて帰路に着く。珍しく晴れた寒空は、町を照らし、帰って来た平和を歓迎しているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ