優しい春の交差点
500文字制限企画参加予定作品です
朝、優子は春の日差しが降り注ぐ交差点で人を待っている。信号機もない、小さな交差点。
春の優しい暖かさ、美しさに優子は幸せを感じて、鼻歌を歌っている。高校三年生、17才。制服は傷んでいた。
恋をしている。人生初の一目惚れ。「こんなこと二度とない」と思っている。
(きょ、今日こそ話しかけようっ!)
優子は決意する。とは言え、彼を初めて見てから、毎朝同じ決意をしている。
1週間前、彼が優子の前を通り過ぎた。同じ高校の制服。
(かっこいい……。すっごく!)
その横顔に見惚れてしまっていた。視線に気付いた彼は、優子の方を向いた。
確かに目が合った。しかし彼は、何事もなかったかのように去ってしまった。
(彼女いるのかな?)
胸がチクリとした。
その日から、毎朝話しかけようとしたが出来ない。
(私のヘタレ……。いや、今日こそ!)
その時、彼が来た。勇気を振り絞る。
「あっ、あの……」
彼は優子へ顔を向けた。溜め息をつく。
視線を優子の血に染まり破れた制服、足元に供えられた大量のお菓子、花に移す。
「なあ、霊感って言葉を知ってるか?」
優子は彼の声を初めて聞いた。
春の日差しのように優しかった。
読んで頂けて嬉しいです。