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仲善きことは ~帝国の皇帝夫婦~

作者: べいちき

ひっさしぶりに。

小説書きましたん( ゜д゜)ウム

まあ、作品消し常習犯ですので

出版化も狙っていないですけど

これ結構面白いんじゃないかなー

とか思って書きました(`・ω・´)ゞビシッ!!

 


 とある銀河のとある星系のとある星。

 そしてとある大陸に名をはせる帝国があった。

 その帝国の主、つまり皇帝は。

 とてつもなく好戦的な男であった。

 壮年になるまで妻も娶らず、前線で闘鬼のように暴れまわる皇帝には、誰もが。

 恐れをなした。


 とある春、その皇帝は妻を娶ることになった。

 容色麗しき、憂い帯たる女性。

 皇帝は、戦から戻った彼の前に。彼女を連れてきた宰相に問うた。


「何処の国の産まれか?」


 宰相は答える。


「もう十年にもなりましょうか……。陛下が最初に滅ぼした国。あの王国の王の忘れ形見の女性にございます」


 それを聞いた皇帝は、女性の顎を掴み、瞳を覗き込んだ。


「……ふん。屈服せぬか。必死で気位を高めているな」


 面白そうにそう云い捨てて、陣衣を脱いで。

 今日の戦の祝勝の宴に足を運んで行った。


「陛下、見事でございました。敵将を一刀のもとに両断した、あの一騎打ち。あの形勢逆転の一幕が無ければ、兵数と士気において劣勢であったわが軍は敗れていたでしょう」


 宴の席で皇帝の部下の将軍がそのような事を言う。


「陛下……。実は形勢が変わってまいりました。我が国が大陸において軍事的に強勢であることには全く影響はないのですが……。実は、被占領国だけでなく、我が帝国の本土と言っていい領地の民もが……」


 皇帝の部下の軍師が言いづらそうに言う。


「ふむ? 申してみよ。不穏な様子でも見えるのか?」


 軍師は口ごもった。この皇帝の気性からして、不満を唱える民を虐殺しかねないと思ったからだ。


「不穏、とは。申してはおりません。ただ、民間において陛下の存在が大いに恐れられていることは確かです」


 そう聞いた皇帝は、面白げに口をゆがませた。


「権威、というものだ。武威とも呼ぶ。問題はない」

「……陛下。民は、戦に疲れております。大陸全土の三分の二。ここまで領地を拡げた以上は、余り好戦的になるべきではないと思われます。我が帝国の方針としては……」


 己の強さや、激しさ。また、周囲と隔絶した気品。そう言ったものを満身から噴出させつつ。権威や武威が大事と説く皇帝に、軍師は食らいつき。

 そう言った時代ではなくなってきていると必死で告げた。


「……ふむ。では、どうすればよいというのだ? 私は戦が大好きだぞ?」


 甜ともせずに、そう言い放つ皇帝。困り果てた軍師。そこに、宰相が割って入った。


「陛下。世は、大陸は。乱世から治世に移ろうとしています。貴方が次に為されるべきは、己の優れた種を後世に残すこと。つまり、女性の扱い方をお憶え下され」


 そう言う宰相に、皇帝は凄みのある笑い顔を向けた。


「それで、あの女を連れてきたか。あの女、瞳に私に対する敵意を満々と持っていたぞ。あの女は、私を殺す気だ。毒も刃も持ち込めぬ場所で、どのように害するつもりなのかは分からぬがな。あれは、人を恨み呪い憎しみきっている者の視線だった」


 その応えを聞き、宰相は呆れたように溜息をついた。


「戦では。恐れを知らない貴方も。恐ろしいものがございますか……。たかが女性をそこまで恐れるとは」


 皇帝は、少し瞳に怒りを浮かべた。誇りも傷つけられたような表情を浮かべた。

 ……彼は、この時点で宰相の謀った、彼の為を思っての謀略に引っかかったのだ。


   * * *


「御簾を上げろ。女の匂いが籠って臭い」


 皇帝の寝所。皇帝は、幾人もの女を侍らせて。しかしながらつまらなそうに。女たちの体を触ったり揉んだりしながら、果実や肉を食い、酒を飲んでいた。


「実につまらないものだな、女遊びとは」


 そのような事を放言する皇帝に、女たちは少々、怒り気味な挑戦の視線を向けているが。昨晩に男と女の戦いで見事に負けた女たちは、皇帝に対して好意を覚えってしまっている事は否めない。刺すような目でありながら、どこか嬉しそうなのである。


「陛下……。宰相様が、陛下のお妃さまになる人を送り込んでまいりますよ?」


 そう。日時的には、今日の今頃。後宮に例の亡国の王女を入れると、宰相は皇帝やその身の回りの女たちに告げていた。

 そして。

 鳴り響く笛や鐘の音。

 後宮の大広間の回廊を、例の王女が。静々と歩み寄ってきた。


「ふん……。たいした容色だ。さしもの私も、何やら情感のような物を抱く」


 自分の目の前まで来た、脂粉と着物で装った亡国の王女の顎を掴み。皇帝は接吻をした。


「……宣言いたします。私を妻にした以上。貴方は、二度と戦場に立つことは能いません」


 これまた凄みのある笑顔で、そう言葉を放つ亡国の王女。いや、もう皇帝の妃である。


   * * *


 夜の皇帝の交わりは。肉体の精気と筋力に任せた乱暴なものであった。

 だが、妃となった亡国の王女は。

 何事かを小さく口の中で呟きながらも、それを必死で受け止めた。

 皇帝は、彼女の中に精を放つと。面倒臭くなったように、寝所の掛け布を被ってさっさと寝てしまう。これが、一か月も続いた。


「妃よ。上手く行っているようだな」


 宰相がある日、妃と面談をもってそのような話をしている。


「あの男は、憎いですが……。確かに、力を確と持つもの。私も、気を入れてかからねば。魅力に落とされそうになります」


 妃は宰相にそう言った。


「ならぬ。妃よ、汝は。陛下に情をもってはならぬ。いや、情を律して、情を操って陛下を戦から遠ざけるのだ。あのお方は、夜の情事に溺れる性などは持ち合わせておらぬ。それをある意味、篭絡するに近い。生半可な覚悟では事はならんぞ」


 宰相は、眼に力を込めて。妃にそう告げて言って含めた。


   * * *


 蛮族が、地方で跋扈している。そのような情報が皇都に入った。

 すぐにでも、出陣をと逸る皇帝を宰相がなだめ。


「ここは将に軍を預けて派遣する程度で済みます」


 そのように軍師が進言をする。


「面白くはないが……。まあ、貴様らがそこまで頭を下げるのならば仕方がない」


 皇帝はそう言って、親征を取りやめ、後宮に戻った。

 そう、この時すでに、妃の毒は皇帝に廻り始めていたのだ。


 皇帝は、妃に合って情事を交わすのが楽しみになって来ていた。


「貴様は、満足だろうな。妃よ。私が汝の策に見事乗り、己の覇気を衰えさせている様には」


 皮肉にも、温かくも。どちらにも見える不思議な表情で、皇帝は妃にそう言った。


「私は……。陛下を愛しております。妃ですもの、私は貴方の」


 言い逃れをしようとしたのか、妃はそのような事を言ってしまった。

 しかし、皇帝は怒りもせずに笑っている。だが。


「言葉で、そう言ってしまったか。その言葉は、今後汝を縛るぞ。言葉を違えれば、汝は心を失う。愛するという言葉は、そう言う言葉だ」


 刺すように、そう言って。

 仕事をするために、後宮を後にした。


   * * *


 それより幾年。妃の手腕は、確かであった。

 皇帝は侵略の戦争を行わず、また。

 周辺国の蜂起や蛮族の治安を乱す行動にも、将に軍を付けて派遣して国家の運営をするようになっていった。


「妃よ。見事だ。汝の手腕で以って、この戦の臭いが常にあった帝国に。平和の気風が流れ始めた。感謝しかないぞ」


 また、妃と面談を持った宰相がそのような事を言った。


「……二度と。この大陸に戦乱を巻き起こさない事。それが、父を殺された母の願い。そして私の復讐の目的。戦乱をなくすことが、あの男を大きく苦しめる。好戦的なあの男を……。でも……」


 妃は、涙を見せた。


「最近、皇帝がとても優しいのです。耳元で愛を囁いてくれるし、贈り物もしてくれる。共に食事を取ることもあります。そして、あの人は。とてもよく笑うようになりました。まるで、幸せであるかのように」


 落涙しつつ、己が皇帝を操っている罪悪感に心を抉られているかのような妃。そんな妃に、宰相が声をかけた。


「構わぬよ、妃よ。もう、大丈夫だ。汝は陛下を愛してしまったのだな。ならば、どこまでも愛するがよい。陛下は、敵には容赦がないが。味方を不幸にする男ではないよ」


 宰相のその声を聞いて。妃は、涙をこぼしながら、何度も頷いた。


 その後、皇帝が没するまで。

 帝国は侵略戦争を一切行わなかったと。


 その大陸の史書は告げている。



                             了

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