赤ん坊ですが?(仮)
コンコン・・・ザザッ ザー
(んん…ここはどこだ)
目を覚ますと木製の屋根が広がっていた。周りを見渡すと、湯気が立ち、ふわっと温かいにおいと一緒におれんじ色の光がそこにあった。
あれ…誰かいる。女性のような誰かはっきりと視認できない感じでぼんやりとだれかが立っていた。
そこにいるのはだれだ!そう声を出そうとしたが全く声がでなかった。いや出たには出たけど言葉にもならないような声がでた。
「おおいいうおああえあ」
すると一人の女性が自分に向かって「あらあら、起きちゃったの?エデン。さっき寝たばっかりじゃない。」などどよくわからない名前とともに話しかけてきたのだ。
(とりあえずよく状況が掴めない。逃げ出せるかどうか確認してみよう。)
相手は不審者だ。そうに決まっている。だって突然自分にエデン?起きちゃったの?だって?
もちろんそんな名前じゃないし、もしかしたら、睡眠薬を飲まされてどこかの実験室にいるのかもしれない!!やばいこんなことしている場合じゃない。早く逃げ出そう!!
俺は焦りながらもバレないように手を横の手すりに伸ばし立とうとした。
ガクッ…ん? ガクッ!!
なんだこれは弛緩剤も一緒に服用させられているのか!!睡眠薬に弛緩剤!!よくわからない!!
焦りつつも自分の手を確認しようとした。もしかしたら全身にうまく力が入らないのは自分の手が汚れているからとか、切断されているとか、汗ばんでいるとか…あれ?
(て、手がちっさい…)
いやいやいや俺は元々高校生だし?男だし?こんなふわふわでもちもちでぴちぴちな?
かわいらしい手してねえよ?えっ?待って俺って高校生だっけ?あれ名前は?
あーー…あれだ記憶喪失だ
きっと交通事故でも起こしてここは病院で、薬の影響とかで手が小さくなってるんだ。
へー最近の薬は若返り作用もあるんだなあ。もうちょっと、大きい状態で維持できなかったのかな。
まあ命に変わりはないしウンウン。
そうこう思考を巡らせている間に女性が近づいてきて……俺を抱っこした。
うん、若干記憶があいまいだけどきっと、おれはそんな年頃の男の子じゃなかったと思うんだ。
齢…何歳かわかんないけどこの歳で抱っこされると思っていなかったよ。
あーでもいいかも、この人遠目には全然わかんなかったけどめちゃくちゃ美人だしいい匂いするし、抱っこされてめっちゃふわっとしたものがあたっゲフンゲフン。うん!しかも金髪で髪の毛なんかさらさらだぞ。ちっこいけど。まあ今はおれの方がちびだけど。
「はーい、よしよし何か怖い夢でも見たのかなあ。でも大丈夫よ。わたしはここにいるよ。だからゆっくりおやすみぃ」
はいはい、よしよしと女性は俺を抱き上げて背中をさすってくる。ふんっそんな赤ん坊みたいなあやしかたで寝てやれるもんか。そりゃお姉さんと一緒に横に寝かせてもらって、ふんふんして、、、ってあれなんか眠くなってきた。え、あれ……………………
そのまま意識が遠くなり、柔らかい手に抱かれながら眠りに落ちた。
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某所誰か住んでいるのか、もしくは誰かすんでいたとしてもそれは“誰か”ではないものが住んでいるような廃墟にて。
???「準備は順調か。」
???「はい、順調でございます。異世界のものたちが予言通り転生してきました。奴が転生の儀を行って直ちにめぼしいものは最も過酷な状況に置かれるように運命を捻じ曲げておきました。」
???「よかろう。ぬかるでない。愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶという。これまでも幾数年と同じく我々の企みは彼らによって妨げられてきた。だが今回しくじるようなことがあればそれこそ終焉も近い。」
???「はい、心に留めておきます」
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翌朝。おれは起きてもそのまんまだった。あわよくば夢ならいいなとか思ったが、やっぱり
現実だったらしい。これは大問題だ。何も声に出すことができないどころか、下の処理までこんなお姉さんにさせてしまっている。もしかしたらワンチャン!!とか思っていたのに、可能性がどんどん低くなっていく!!いや?おれは紳士だし?そんなこと考えてないよ?え?さっきのはなんだって?
やだなあ空耳ですよお・・・
「あっ!エデン起きた!ねえ、カミーユ!エデン起きたよ!」
「あら、ちょうどよかった。じゃあオラフさんのところに向かいましょうか。」
へえあの美女はカミーユっていうのか。めもめも。まあメモなんてできないんだけどね。
というかおれは結局エデンって呼ばれてるけどエデンって名前なのか?
何だか知らないけどむず痒いな。
そう胸中でぶつぶつとつぶやいていると、乳母車ようなものに乗せられて、外につれられた。
少しだけ首を動かすことができたのでちらっと家の方を見るとなんともお粗末な母屋だった。
木造の家ではあるはずなだが薄暗く、窓も曇っている。そのうえ所々、家の木材が剥げていて
少なくとも築50年以上経っているだろう。そのうえ手入れはほとんどされていない。
こんな美人なお姉さんがいたら男どももほっとかないだろうに。いや本当に不思議だ。
「ねえねえ!もうそろそろ誕生日じゃない?なにかお祝いの品くれるかな!」
「ミレイやめなさい。はしたないわよ。今日はオラフさん達町の狩人が大物を取ったっていうお祝いなのよ。彼らをお祝いしてあげることはあれど、私たちが何か求めるて。」
ほう、少女の方はミレイというらしい。見る限り、親子なのだろうか。にしても二人とも美人だ。
カミーユさんは金髪で身長は147センチくらい。細いが出るとこ出ていてなかなかの眼福である。只、肌は真っ白で透き通っているもののあの家を見るに自分の手入れをするほど余裕はないのだろう。少し肌や紙のところが埃とかでくすんでしまっている。
ミレイの方は、身長こそカミーユさんとほとんど変わらないが、やはり少女というべきか女性らしい部分がそれほど強調されてはいない。とはいえ瞳は透き通り、瑠璃色に輝いている。笑った顔は愛嬌たっぷりであれくらいの年代でこの美少女は10000年に一度とか言われてもおかしくないなと思える。
「あーそうだね!いつもオラフさん何かしらくれるから期待しちゃった!ごめんなさい!
今日はみんなをお祝いすることをがんばるね!」
なかなかミレイは聞き分けのいい子なんだな。あの年ごろならもっと駄々をこねたりするものだが。うむ。立派だ。10年後にはおよめに…ごほん。きっといい男性とめぐりあって幸せな結婚生活を送ることだろう。
にしてもこの乳母車乗り心地が悪いな…酔いそう。ガタン。ガギッ。ゴギ。ガシャン!
ちょっ!いくらなんでも壊れかけが過ぎないか!?こんなの普通乗せてる人がいたら、周りの人とか旦那が気を使って新しいもの見繕ってくれるもんだろ!!
おーい!赤んぼサイズの青年が乗ってますよーーー!だれかーヘルプミー!!
「おーーお、あえあーーーえうういーーーーー!!」
「あら、泣き始めちゃったわね。どうしたのかしら。」
「ほらあいったじゃん!こんな乳母車のせたらエデン泣いちゃうよって!」
「うーん、やっぱり、無理かしら。抱っこで向かおうかしら。でも帰りは荷物多くなっちゃうかもしれないし………」
あれ、困らせちゃったか。ちょっとやりすぎたかな。でもおれも、立派な思春期真っ只中の男の子。
そりゃこんな乳母車に乗せられて文句の一つや二つ言いたくなるよ。ん?青年なら歩けるって?
いいんだ俺はいま赤ちゃんサイズなんだ。
そうして困っていると、向かっている方向から大柄の男性がやってきた。
「おーい、大丈夫かあ?」
「あらあ、オラフさん。どうしたんですかこんなところで?」
「いやあ、カミーユさんいつもお二人を連れてこられているけど、荷物とかもあって大変だと思っていまして。もしかしたら、道中お困りかもしれないかと思って、参った次第です。」
「お優しいのねうふふ、ありがとうじゃあ何かお手伝いたのめるかしら。あ、そうそうちょうど困っていて、乳母車の調子が悪いのよ。だからエデンを抱っこしてくれないかしら。」
「お安い御用ですよ、カミーユさん!まかせてくださいハハハ!」
ん?なんか雰囲気いいな…