神様ですが(仮)
目が覚めるとそこは大草原だった。
いや、正確に言うと大草原の一角にある、教室を簡単に飲み込むくらいの広さがある
石の間だった。
「な、なに!?ここどこ?」
「うわあ!すんげえ!!えっ新しいCGとか!?」
クラスの奴らの反応は人それぞれだ。
(なんだここ、明らかに現実世界だし、何かの実験とかか?)
周りを見渡してみると、目の前に絶世の美女が立っていた。
肌は透き通り、神々しく輝いている。
胸は豊満でまさに理想のプロポーションといった女性だった。
「うわっ、すんげえ美人!お姉ちゃん、RIME教えてよ!」
流星が臆することもなく美女に話しかける。
「…」
「お?どうしたw?俺がイケメン過ぎてビビっちゃったのかな。」
そう流星が声を上げていると女性は後ろ髪をかき揚げゆっくりと口を開いた。
その仕草までもが洗練されており、その場にいた誰もが目を奪われた。
「突然ですが、あなた方には新しい世界で生きてもらいます。転生してもらう世界は
将来的に大魔王の手によって崩壊が予想されています。その世界をあなた方に救ってもらいます。拒否権はありません。では転生に入ります。」
「ちょ、ちょ、ちょちょっと待ってよ。なにいきなり頭のおかしいこと言ってんの。
は!?これテレビとかなんかの企画じゃないの?ねえ?そうでしょ笑?付き合ってらんないわよ。」
ほのかがそういうと美女はその様子を無言と冷ややかな目で見つめていた。
そうよそうよと取り巻きの女たちが石の間から出ようした・・いや正確には一歩だけ草原に足を踏み入れてしまった。
うわあああああそう雄たけびを一人の取り巻きの女が上げた。
その瞬間、彼女は足元から粒子へと変わり、跡形もなく消え去った。
!?!?!?
突然の出来事にだれも反応できなかった。
「あなた方に拒否権はありません。これは神命なのです。神の言葉を素直に受け入れられないとは…
なかなか先が思いやられます。さあ、中心に集まってください。」
クラスメイトは突然の出来事に腰を抜かしたり、発狂したり、泣いたりと誰も冷静にいられない状況だった。そんな中、自分ともう一人だけが冷静に状況を見つめていた。
「なあ、これはどうしても別の世界で、その何というか魔王を倒さないといけないんだろうか。
僕たちはこれまで戦争みたいなものにかかわったことは無いし、どう考えても足手まといになる。
このままでは転生したとしても、只々死んでしまう!!」
彼の名前は和也。成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗の三拍子そろったまでか、
その出自は政界の大物の息子。毎日女の子に囲まれて登校してきている。
女の子囲まれているやつは男には嫌われているというのが世の常だが、
彼は目の前で起こった悪事を見過ごすことができず様々な問題を解決したせいか、
男子にも好かれ、向かうとこ敵なしって感じだ。
「はい、ですのであなた方にはギフト(才能)を与えます。一人一人が地球で培った努力、思考、行動などを基に適切なギフトを与えられます。それを存分に生かし、魔王を倒すのです。」
おおおお、周囲から歓声が起こる。おそらくみんな察したのだろう。
ラノベ的な転生すると異世界人とは別格な才能を与えられて、それを使って魔王を倒す。
大体こういうものにはつきもので、異世界の住人から英雄として扱われるのだ。
平和な世界に住んでいて刺激を求める若者たちにとっては最高のシチュエーションだ。
流星に至ってはへえ、じゃあ俺たち最強ってことじゃねえか。こりゃいいなぐへへなどと本物のゲスらしく生き揚々としていた。
ほのかとその取り巻きもキャー絶対イケメン捕まえてやる!ねえお金持ちとかになれるのかなあ!
といってまさに狂喜乱舞だ。
(さっき、友人が目の前で殺されているっていうのに…)
目の前で殺人をおこなった美女に好感度を持てるはずもなく、俺は一人悶々としていた。
「さあ、中心に急いで。準備はできましたか。…よろしい、では転生の儀を開始します。」
女神は突然何語かわからない言語を使って歌い始めた。そして天を仰ぐように両手をかざしたかと思えば
目を閉じて両手を胸の前で合わせた。刹那クラスメイト全員が光に
そして俺たちはどこかもよくわからない異世界へと転生したのである。