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「帰ったぞー」
エイトが帰宅したのは、もう夕方になるかという時間。
てっきりクロノが小言の一つでも言ってくるとばかり思っていたエイトは、静まり返った家内に拍子抜けした。
「クロノ?いないのか?」
見渡す範囲に人影は無く、エイトはクロノの部屋へと向かった。
部屋の扉は開けっぱなしになっており、部屋の中に探していた姿を見つけたエイトはほっと息を吐くと、クロノを起こさないようにそっと足を踏み入れる。
「……」
ベッドですやすやと眠るクロノはよほど疲れていたのか、エイトが部屋に入っても起きる気配は無い。
陽光に照らされた黒髪をそっと撫で、エイトは幸せそうに眠るクロノに笑みを零した。
疲れて寝入る姿はあどけなく、歳相応で可愛らしい。
けれどエイトを気遣う部分や、この歳で専門魔道師を目指す判断を下した事。
どこか焦ったような、役に立とうと必死なような、そんな姿は見ていて心苦しい。
どうか、この先もこの子が幸せに眠れる日々が続きますように。
笑顔であれますように。
エイトは密かに、神か運命かあるいはまだ知らぬ誰かにか、ただあてもなく
願った。
――…自分でない誰かが、クロノを幸せにしてくれる、そんな未来を。




