23
ただ一瞬エイトの声のした方へ歩いていたクロノだったが、魔力を使い切った
身体が限界を訴えていた。
周囲は薄暗く、このままでは方向を見失うのも時間の問題だ。
「もう、今日は諦めるかな……」
弱音を口にすると、途端に気力が失われていく。
足取りは一気に重くなり、空腹と睡魔にも襲われたクロノの心はあっさりと折れた。
周囲を見渡して、休めそうな場所を探す。
すると少し行った先に、いくらかひらけていて休めそうな場所を見つけ、夜はそこで越そうとクロノは重い足を引きずって歩いた。
クロノが何とか辿り着くと、もともとそこに集まっていた小動物達は我先にと逃げ出していく。
今のクロノにはそれを申し訳なく思っている余裕もなく、木の幹に身体を預けて
座り込むと、すぐにまどろみ眠りへ落ちていった。
「……」
小さな寝息を吹き抜ける風が掻き消してゆく。
静けさに、逃げていった小動物達が窺うように木陰に集まりだし、クロノが襲ってこないとわかると、距離は保ちつつ眠りについた。
小さな命が寄り集まり眠る平穏な時間。
……ガサッ
その草を踏み分ける音に、短くも平穏は崩れ去った。
ランタンを持って周囲を照らしながらその人物は歩いてきた。
その人物が纏う殺気とも呼べる雰囲気に、眠りに落ちていた動物達は蜘蛛の子を
散らすかのごとく闇の中へ逃げてゆく。
ただ一人、無防備に眠りこけるクロノに視線をやると、その人物はゆっくりと近づいた。
ランタンを下へ置くと、闇夜にとける黒の外套から伸びた手が、そのまま迷いなくクロノへ向かう。
片手に握られたナイフが妖しく煌めき――…
「ぎゃあっ!」
勢いよく振り下ろされたソレに、たまらず眠りから覚めたクロノは、目尻に涙を
浮かべて顔を上げた。
「おっ前は!なに人の気も知らずに寝てんだよ!」
「エイト!?」
拳を握って怒鳴り散らした目の前の人物に、クロノはまだ夢でも見ているのかと
我を疑ったが、その拳によって殴られた頭がこれが現実であると伝えてきている。
「え!?何でいるの!?」
「何ではこっちのセリフだっつの!家出かと思って探し回ってもどこにもいねーし、かと思ったら森の中から魔力が流れてくるし!何だ、こんなとこまで迷子に
でもなりにきたのか、お前は!?」
「えぇっ、うーん」
「どんだけ心配したと思ってんだよ!」
畳み掛けるようなエイトに寝起きで頭がついていかないクロノが困惑していると、怒りと共に隠れていた本音までもが吐きだされる。
エイトの言葉にクロノは息をのむと、言いたかった沢山の言葉を飲み込んで、まず伝えなければいけない一言を口にした。
「……ごめん、なさい」




