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闇属性の魔法は少し特殊で、得意とする者は少ない。
影など光属性と対になるものもあるが、死を呼ぶ“滅び”を司る魔法もある。
それらは使う魔法使いのなんらかを代償とするものもあり、一般には忌避される魔法だ。
「この闇属性の魔法、一体何に使うんだ?ま、闇属性魔法の使い道なんて高が知れてるけど」
「……上の要望があったのよ。使い道なんて聞かされてないわ。
けど、私達は新しい魔法を開発する分安全を充分考慮して、使い手に負担の少ないものにするよう努めているわ。代償なんて考えもせずに開発されていた古代から続く魔法なんて、私は使わせたくない。だから新しくよりよいものをつくる。それだけよ」
クロノをしっかりと見つめるその瞳は、複雑な感情を滲ませながらもまっすぐだった。
「この資料を見る限り、莫大な魔力の消費以外は問題ないと思う。ただ、扱う魔法使いは選ぶだろうし、後はもう完成してから試してみるしかないだろうな」
それを聞くとルーエンは安堵の表情を浮かべて微笑んだ。
「クロノちゃんがそう言うなら大丈夫ね。消費する魔力の程度は大まかにしか判断できないかしら?試すにしても、誰に使ってもらうか考えないとだし」
「そこまでは……。まぁいざとなったら団長にでも頼めばいいだろ。ルーエンの頼みなら断らないだろうし」
「ふふ、それもそうね」
団長であるアイジスとルーエンは幼馴染みであり、ルーエンはアイジスより2つ年上で、昔から兄の様にアイジスの面倒を見ていたんだとか。
クロノは密かにルーエンの本命はアイジスなのではないかと考えているが、真相は本人にしかわからない。
・・・・・・
「おい、いい加減起きろ駄犬!」
「ふぎゅうっ!?」
すっかり気持ち良さそうに眠りについていたギノアの頭をすっぱーんっ!とクロノが叩くと、素っ頓狂な声を上げてギノアは目を開けた。
「もう、ちょっとは優しくできの?かわいそうに、もう少しここで休んでてもいいのよ?なんなら泊まっていく?ここなら誰も来ないわよ?」
「いえ帰らさせていただきますです!」
妖しく微笑みながら詰め寄るルーエンに顔を真っ青にしたギノアは、慌てて立ち上がると扉のすぐ前まで飛んで行く。
「あ、忘れてた。ルーエン、この馬鹿はギノアだ。しばらく俺について来るかもしれないから覚えてやって」
「こんな可愛い子そうそう忘れないわよ~!いつでも来てね、ギノアちゃん。一人で来てくれてもいいんだからね?」
「いえ、できればもう来たくないっす」
「あら、ここはお気に召さなかった?じゃあ私から会いに行ってあげるから、まっててね!」
ばっちんとルーエンにウィンクをされたギノアはふらついたが、倒れるまいと必死に扉に手をついて耐えた。
クロノはその光景にくすりと笑みをこぼしてから、ルーエンに別れを言って扉のほうへ向かう。
「そうそう、出るときの人物識別にはクロノちゃんのこと登録してあるからそのまま出られるはずよ」
「りょーかい、ありがとな」
「いえいえ、こちらこそ。気をつけてね」
手を振るルーエンに軽く手を上げて答えてから、二人は部屋を後にした。




