20
翌日、昼近くになっても姿を見せないクロノに、エイトはクロノの部屋へ向かうことにした。昨夜のことがあるため、エイト自身気まずさを感じてはいたがこのままという訳にもいかない。
「おーい、起きてるかー?」
閉ざされた扉を軽くノックしながら声をかけるが、中から返事は無かった。
「まじで寝てんのか?」
疑問に思いつつも、時間が時間だけに寝ているならば起こそうと、エイトは扉を
開ける。
そして、目の前の光景に呆然とした。
「いねぇ……」
エイトが起きてから、一度もその姿を見ていなかったクロノ。
居るはずと思っていた彼の部屋にその姿は無く、書置きのようなものも見当たらない。部屋の中に入って隅まで見てまわるが、わかったことといえば鞄と数冊の本が消えている程度。
昨夜の事を思い返したエイトは、血の気が引いていく感覚に片手を壁について
項垂れる。
「い、家出か……」
そこまでするか、とショックを受けたエイトは、しばらくそうして自己嫌悪に
浸った後によろよろと立ち上がった。
「ぜってー探し出して尻叩いてやる」
そう呟いたエイトの目に慈悲の光は無かった。
・・・・・・
「うーん…?」
首を傾げながら、クロノは目の前に広がる景色を眺めて唸った。
どこまでも、どこを見ても、ただ木が立ち並ぶばかり。
完全に迷子のクロノがいるのは、村のすぐ横の、隣国と接する広大な森の中。
目的を果たすのに時間がかかることも考慮し、日が昇ってすぐに家を出て森に
入ったクロノ。思ったよりも早く目的は果たされ、昼前には帰れるだろうと来た
道を戻ろうと振り返った瞬間、クロノは固まった。
どこも同じ風景で、どこから来たのかわからなくなっていたのだ。
とりあえず勘を頼って歩く事数時間、何の進展もなく現在に至る。
時刻がもう既に昼を迎えていることは、空しく鳴く自身のお腹が告げていた。
「あー、ご飯食べたい」
もともと昼には帰る予定だったため、何も食料は持参していない。
水に関しては下級水属性魔法で生み出せるので問題は無いが、それだけでお腹が
満たされるわけもなく。
しかたなく、何かそこらの木々から食べられそうな果実をとってこようと、限界を訴えるお腹をさすりながらクロノは歩き出した。




