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パタン……
薄い木の扉を閉めると、寄りかかる様にしてその場に座り込む。
一人になる口実としてああ言いはしたものの、クロノはそこまで村の娘の話を根に持ってはいなかった。全てがクロノの勘違いだったとわかれば、もう彼女のことで変に頭を悩ませる必要は無い。
今のクロノの心を乱していたのは、もっと別のこと。
「……やぱり、かぁ」
抱えた膝に額を押し当てて、吐き出した言葉に苦笑する。
ずっとわかっていた事だった。
ただずっと聞けていなかっただけの、ただずっと触れてこなかっただけの、
そこにあり続けていた真実。
エイトは、本当の親ではなかった。
わかっていて、そうだと思って過ごしてきた。
それでも、本人にそうだとわかるような態度をされるのは、さすがに堪えるものがあるのだ。
思い返すのは先ほどの涙を流して笑っていたエイトの姿。
親だという、そんな当たり前のことを認めているという事実にあんなにも喜べるのは、それだけそこに拘ってきた人間だから。
クロノは、そんな、親としてあろうとしてくれるエイトを愛おしく思っている。
けれど同時に、本当の親に対する未練を消し去れない部分もあるのだ。
どうしたいのかは、決まっている。
ただ、立ち上がるには時間が要るのだ。




