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その後も言い合いをしながら、二人は途中だった食事を再開した。
いつも通りの、今まで通りの距離感。
料理をかきこんだクロノは、ガタっと椅子を引いて立ち上がった。
「じゃあ僕、読みたい本あるから部屋行くね」
「あ、ちょっとまった!」
部屋に戻ろうと背を向けたクロノを、慌ててエイトは止める。
「なに?」
「いや、何だかんだ話がそれて言えなかったんだが……」
それを聞いて、クロノはまさか、と息を呑んだ。
もちろん脳裏に過ぎったのは件のエイトと話していた村の娘のことである。
こんなタイミングでいきなり紹介したい人がーなどと言われたらクロノは間違いなく家出をできると確信した。ちなみに家の前に風魔法で巻き上げたゴミというゴミを撒き散らすオマケつきで出来ると思っていた。
結局片づけるのは自分になるのであろうが。
とことんやってやる、と覚悟を決めたクロノをよそに、実に軽くエイトは言った。
「俺が例の件で家を空ける間、長くなるし、お前の世話を村の医者んとこの娘さんに頼んどいたから」
「……は?」
「ん?いやだから――」
「あ、いや、こっちの話だからいい」
首を傾げるエイトに、クロノは盛大に溜息を吐いた。
つまり。
結局、エイトは自分がいない間のクロノを心配し、その世話を見てくれる相手を探していた。それで目を付けたのが、医者の娘の彼女だった。
医者の娘ならなにかあったときも安心だろうと、本当にそれだけの気持ちだった。
頼まれた本人の気持ちなどは鈍感にも一切気づかずに。
それを見ていたクロノの不安も関係なく。
と、事の次第を整理し、盛大にもう一度溜息を吐いたクロノ。
やるせなさに一回、丁度いい所にあったエイトの鳩尾をグーで殴ったのだった。
「おまっ、いきなり何だよ!?」
「エイトはもう少し周りを気にするべきだと思うんだけど」
「はぁ?」
「そもそも、僕別に世話されなくても生活できるし」
料理、掃除といった家事はもちろん、魔法をある程度使えるようになった今ではそこら辺の野盗にも簡単には負けないだろう。
クロノが不満そうにそう言うと、エイトも「わかってるけどさぁ」と頭をかく。
「それでも心配すんのが親心ってもんなんだよ。それに、顔を見に来るのは週一
くらいでいいって言ったから、お前もそう不満そうにすんなって」
「……わかった。でも、やっぱちょっともやもやするから僕部屋行く」
「あー、了解」
小走りで駆けて行くクロノに、エイトはどうしたものかと頭を捻るのだった。




