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「だから」と続けると、エイトはクロノの頬から手を離し、驚きやらで固まって
しまったクロノの頭をぽんぽんと撫でる。
「お前が俺を親だと思ってんなら、俺に変に遠慮すんな。どんどん迷惑かけろ。
でも言っていいワガママかは考えてくれよ?さっきのとかはナシだからな。
あと、これが一番重要なんだが……黙って俺に、親に守られててくんないか?」
“本当の親子”がどんなものか、クロノに知るすべはなく。
ただひたすらに、血の繋がりがないであろうエイトに、他人の子供を家族にしてくれたエイトに、迷惑をかけるのが嫌で。嫌われたくなくて。
そうしてやってきた今までの全てを思い切り否定し、ただ迷惑をかけ、庇護されろというエイト。
簡単に頷くことはできなくて、処理しきれない苦しみや悔しさがクロノの胸を
つまらせる。
けれどじわじわと湧き上がる言いようもない喜びや安堵感は、ゆっくりとだが確かにそれらを包んで静めてゆく。
本当の親の顔も、名前も知らない。
エイトと暮らす前、愛されていたのかもわからない。
それでも。
今、エイトは確かに僕の親で、掛け替えのない家族だ。
僕が力になりたいと願うように、エイトもまた守りたいと願ってくれている。
親であろうとしてくれている。
なら、ここで僕が自分の意地を通すのは、違うんだ。
気持ちの整理をつけ答えを出したクロノは、不安そうに見つめているエイトを
見上げ、ぼそっとそれを口にした。
「……わかった、お父さん」
そうクロノが口にした途端、ガバッとエイトはクロノを抱きしめた。
まわされた腕が微かに震えていることにクロノは驚き、なだめるように大きな背を抱きかえす。
「俺、は……お前の父親、か?ちゃんと、できてるか?」
「……」
耳元で、何かを堪えるように、ぎこちない声でかけられた問い。
それにクロノは少しだけ悲しい気持ちになりながらも、強く頷いた。
「そっか…そっか」
呟くようにそう言ってから、クロノを離したエイトはとても幸せそうで、けれど堪えきれなかった涙が一筋流れていた。
クロノはエイトに微笑みながら言った。
「なんだか僕ら泣いてばかっりだね」
「確かに……って俺は泣いてない!」
「うそ。じゃあその目から流れてるのは何」
「あれだ、汗だよ、汗」
「こんな寒いのに?」
そこまでからかうと、エイトは子供の様にむっとした表情でクロノを恨めしそうに見た。
「いい加減にしろよ可愛げねぇ」
「大人げねぇ」
「俺の負けでいいからほんと終わりにしてくれ……」




