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花のない薔薇  作者: 愁
四章 闇の魔法使い
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17

「だから」と続けると、エイトはクロノの頬から手を離し、驚きやらで固まって

しまったクロノの頭をぽんぽんと撫でる。


「お前が俺を親だと思ってんなら、俺に変に遠慮すんな。どんどん迷惑かけろ。

でも言っていいワガママかは考えてくれよ?さっきのとかはナシだからな。

あと、これが一番重要なんだが……黙って俺に、親に守られててくんないか?」


“本当の親子”がどんなものか、クロノに知るすべはなく。

ただひたすらに、血の繋がりがないであろうエイトに、他人の子供を家族にしてくれたエイトに、迷惑をかけるのが嫌で。嫌われたくなくて。


そうしてやってきた今までの全てを思い切り否定し、ただ迷惑をかけ、庇護されろというエイト。


簡単に頷くことはできなくて、処理しきれない苦しみや悔しさがクロノの胸を

つまらせる。


けれどじわじわと湧き上がる言いようもない喜びや安堵感は、ゆっくりとだが確かにそれらを包んで静めてゆく。


本当の親の顔も、名前も知らない。

エイトと暮らす前、愛されていたのかもわからない。


それでも。


今、エイトは確かに僕の親で、掛け替えのない家族だ。

僕が力になりたいと願うように、エイトもまた守りたいと願ってくれている。

親であろうとしてくれている。

なら、ここで僕が自分の意地を通すのは、違うんだ。



気持ちの整理をつけ答えを出したクロノは、不安そうに見つめているエイトを

見上げ、ぼそっとそれを口にした。


「……わかった、お父さん」


そうクロノが口にした途端、ガバッとエイトはクロノを抱きしめた。

まわされた腕が微かに震えていることにクロノは驚き、なだめるように大きな背を抱きかえす。


「俺、は……お前の父親、か?ちゃんと、できてるか?」


「……」


耳元で、何かを堪えるように、ぎこちない声でかけられた問い。


それにクロノは少しだけ悲しい気持ちになりながらも、強く頷いた。


「そっか…そっか」


呟くようにそう言ってから、クロノを離したエイトはとても幸せそうで、けれど堪えきれなかった涙が一筋流れていた。


クロノはエイトに微笑みながら言った。


「なんだか僕ら泣いてばかっりだね」


「確かに……って俺は泣いてない!」

「うそ。じゃあその目から流れてるのは何」


「あれだ、汗だよ、汗」

「こんな寒いのに?」


そこまでからかうと、エイトは子供の様にむっとした表情でクロノを恨めしそうに見た。


「いい加減にしろよ可愛げねぇ」

「大人げねぇ」


「俺の負けでいいからほんと終わりにしてくれ……」

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