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クロノが落ち着いたところで、エイトは言いにくそうに話し始めた。
「それでなんだが、春までにどうしてもやらなきゃいけないことがあるんだ」
「何?」
そうクロノが聞くも、エイトは視線を逸らして言いよどむ。
クロノは直感で、そのやらなければいけないことがエイトの巻き込まれている厄介な事なのだろうと思い至った。
「何なのかは、悪いが言えない。けど、しばらく家を空けることになる」
エイトに話が回ってくるということは、魔法使いが必要とされることなのだろう。
そしてそれは、前に聞いた村長の話からして、おそらく元はクロノに任されるはずだったもの。クロノが未熟故にエイトに回ってしまったものだ。
だからこそ、専門魔道師を選んだんだ。
密かな決意を胸に未だ俯きがちなエイトにクロノは口を開いた。
「僕は手伝えない?」
上級魔法はまだでも、ある程度の魔法ならば使えるようになっている。
力になれるはず、というクロノの思いは、すぐさまエイトに砕かれた。
「お前は駄目だ」
「何で!?」
「それは……」
自分自身を落ち着けるように、エイトは一呼吸置いてから続けた。
「それは、お前が俺の家族だからだ。家族だから巻き込みたくないんだ」
エイトから家族、と言われたことが嬉しくて、けれどだからこそ、とクロノは食い下がった。
「家族だから、僕もエイトの力になりたいんだよ!いつまでも枷でいたくない!」
「……っ」
クロノの言葉にエイトは何かを堪えるように口を閉ざし拳を握り締める。
クロノ自身もまた、熱が入って口から出てしまったその言葉に驚いた。
ずっと、エイトの力になりたくて、一人前になって迷惑を掛けないようになりたかった。その裏返しで、自分がエイトの枷になっていると思っていたなんて、クロノ自身も気づかないようにしていることだったのだ。
「エイト、僕――…」
「あぁくそ!」
言いかけたクロノを遮るように、べちんっと音がするほどの勢いでエイトがクロノの頬を両手で包み、視線を合わせた。
先ほどまでそらされていたその目はとても真剣にクロノを射抜く。
「いいか!?ガキってのは親に迷惑かけまくるもんなんだよ!そんでガキのかけた
迷惑全部引き受けて、そいつが普通に幸せになれるようにすんのが親の役目なんだ!」




