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太陽が沈み始め、夜が顔を覗かせた頃。
エイトは少し疲れたような表情で帰宅した。
「ただいまーって、こいつは」
呆れた風にエイトが歩み寄った先では、クロノが本を開いた状態で机に突っ伏し寝ていた。一人であれこれと試しながらのめりこむうち、魔力を使った疲労で寝落ちてしまったのだろう。
「寒くなってきたのにこんなとこで……」
クロノを揺すり起こそうと伸ばされたエイトの手は、開かれた本の内容への驚きで止められた。
「もうこんなレベルの魔法を試してたのかよ」
それは、十分に上級と呼べる代物の魔法ばかりで、専門属性といっても辿り着くには早すぎるほどのものだった。
クロノの目標とする広域魔法のレベルにはまだ届いていないにしても、普通では
考えられない成長スピードにエイトの口は開いたまま閉じられない。
目を離していたのは今日一日だけだったはずだ。
その時間に無茶をしたのか、あるいは今までも余裕はあったのか。
教え子の底知れない魔法の才に、一魔法使いとしてエイトは慄いた。
「お前は……」
無邪気に眠る小さな魔法使いをここまで突き動かすものが何かエイトには予想も
つかず、ただ驚き、不本意ながらにその才能に嫉妬するばかりだった。
「……んぅ」
温かさといい匂いにつられてクロノが目を開けると、エイトが作った料理が運ばれてくるところだった。
「お、目ぇ覚めたか。飯食えるか?」
「うん……いつ帰ってきたの?」
「日が沈む前だな」
「そう。ん?」
身体を起こしたクロノの肩に掛けられていた薄手の毛布が滑り落ちる。
クロノはすぐに、それは寝てしまった自分にエイトがしてくれたのだと理解した。
それに帰りが遅そかったことに対する不満が消えていき、クロノは自分の単純さを感じて苦笑した。
「ほれ、今日は特製だぜ」
そう言いいながらエイトが置いた皿を見てクロノは顔をしかめた。
「キノコばっかりじゃんっ!」
「秋だからな!」
「さいあく」
クロノはキノコ類を大の苦手としていた。
見た目と食感がどうしても受け入れられないのだ。
それを知っているにもかかわらず、エイトはキノコばかりの料理をクロノに出して何やら満足そうに笑った。
「ちょっとした仕返しだから諦めて食え」
「は?何それ」
自分が寝ている間にエイトが何を思っていたかなど知る由もないクロノは、エイトの理不尽な嫌がらせの餌食にただなるしかないのだった。
「ちょっといい匂いなのが余計にむかつく」
「そりゃ腕によりをかけたからな!」
「嫌な大人だ……っ」




