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「いきなりだな。脈絡って知ってるか?」
「し、知ってるもん!本当は昨日の夜に言いたかったんだよ!」
「あぁ、それで起こしに来たわけか、夜中に。お前は人の迷惑お構いなしに衝動に身を任せるから困るんだよな」
「うぐぐ……」
今回の事だけでなく、思い当たる節が多いクロノは何も言えずに悔しがる。
子供らしい、と言ってしまえばそれで終わりだが、クロノは自分の感情や思考に
一直線な行動が目立つ。
その一つとしてエイトとの約束を破る事もしばしばあり、破られるエイトからすれば困ったものなのだ。
だが、何だかんだ言いつつもクロノのその素直な部分をエイトは嫌っていない。
困らせられるのは面倒ではあるが、手のかかる子ほど可愛いという思考は大いに当てはまっているようだった。
「ま、詳しい話は後だな。とりあえず中入るぞ」
「さんせー。ちょっと寒い」
そう言いながら小さく身体を震わせたクロノの背を軽く叩きエイトは明るく言った。
「んじゃ、あっつい茶でも淹れるか。お前はまたホットミルクか?背ぇ伸びるといいな?」
「成長期なの!すぐにエイトなんか追い越してやる!」
「オー、ガンバレヨー」
「棒読みすんな!」
・・・・・・
普段食卓にしているテーブルに向かい合って座ると、クロノはさっそくエイトに一冊の本を開いて見せた。
それは、昨晩クロノが悩みながら読み漁った一冊で、各属性の高い技術が求められる魔法について書かれたものだった。
「僕ね、この魔法が使えるようになりたいって思ったんだ」
「……なんの役に立つんだ、これ?」
「えっ、すっごいかっこよくない!?」
「かっこいい、かは置いておくとして。お前がそれを目標に頑張れるんならいいんじゃないか?」
苦笑いのエイトの反面、クロノはどこか浮かれて口元を緩めている。
専門を風属性にすることが決まれば、後はどれだけ早く上達させるかだ。
早くエイトの役に立てる明日へ続く確かな一歩を踏み出せたことが、クロノには嬉しいことだった。
「でも“確定”……確定した音をどこからでも拾えるようになる広域魔法ねぇ。
ホントいつ使う気だよ?」
「……いつでもいいでしょ」
心底不思議そうに首を傾げるエイトに、クロノは冷や汗を流した。
風属性の魔法は本質的には空気を操る魔法だ。
空気のある場所であればどこからでも、風に乗せてイメージを確定した物や人物の発する音を拾えるようになるのが、クロノが使えるようになろうとしている
“確定”の魔法。
それを使ってエイトの秘密にしている話やらを盗み聞こうというのがクロノの思惑である。
ス○ーカーっぽいという点は目をつむらねばいけない。
エイトが困っている話の内容を知ることが出来れば、もっと出来る事が増えるというのがクロノの言い分だが、もちろんそれはエイトには内緒である。




