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「ほら、んな顔してんな。ぶっさいくだぞ」
暗い顔をしたクロノの頭をわしゃわしゃと撫で回し、エイトは空気を変えるように明るくそう言った。
けれどクロノは「うるさい」と言うだけで、いつものように食ってかからない。
この前盗み聞いた話然り、最近エイトは隠し事が多いようにクロノは思っていた。
いや、本当はずっと前から隠している事だらけなのだろう。
クロノが成長し、視野が広がったり、感受性が豊かになっていったが故に気づいてしまうようになったのだ。
そういって気づいていった隠し事の数だけ、エイトとの距離を感じてしまう。
クロノは増していく胸の中の虚しさとどうしようもない憤りに唇を尖らせた。
一向に機嫌の直らないクロノに、エイトは思いついたようにはっとした。
「え、なんだよ、反抗期かよ?」
「ちがう」
「やっぱそうなのかっ」
むすっとしているクロノに「いきなり突入すんのやめろよなー」とエイトは困ったように頭をがしがしとかく。
見当はずれなエイトの発想に先ほどまでの憤りすら呆れに塗り替えられ、クロノは盛大に溜息を吐くと、床に向かって「反抗期ってどう相手すりゃいいんだよ」などとぶつぶつ言っているエイトに歩み寄った。
「もう何でもいいから僕の専門属性、ちゃんとどっちがいいか考えてよね」
そう言ってクロノはしゃがみこんでいたエイトに手を差し出す。
エイトは差しだされた小さな手をとって立ち上がりながら苦笑した。
「お前まだ俺に意見させるの諦めてなかったのな」
・・・・・・
「ぬあーーーーーーっ」
クロノはベッドで叫びながら手足をじたばたとさせる。
結局、クロノは専門属性を決められないまま夜を迎えていた。
エイトは何度意見を聞こうとしても、のらりくらりとかわしてばかり。
決め手となるような、否、“さんこー”となるような意見は聞けずじまいだった。
「どっちでもいい……」
正直なところクロノはどっちでもいいのだ。
エイトもまったく同意見だろうが。
どちらの属性もここまで来るとイラつくレベルでの均衡ぶりで、いっそのことくじ引きでもしたほうが早いのではと思ってしまうほどだった。
しかし変なところで真面目なクロノはくじ引きはさすがにないな、と思いとどまって、前進しない思案の海に戻ったのだった。
一部始終を見ていたエイトからすれば、なぜくじ引きはダメで自分の意見のままに選ぶのはアリなんだ、という感じではあったが。
そこのところの判断はクロノのみにわかる基準があるのだろう。
「……がんばれよ」
エイトはうんうん唸りながら尚も考え込むクロノを見守ってから、邪魔をしないよう静かに自身の部屋に向かうのだった。




