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翌日
専門魔道師の道を選んだクロノの訓練は一時中断、エイトによる講義が行われていた。
「専門魔道師は遥か昔、世界中で大戦が起こっていた頃に多くいた。
才ある者全てを手っ取り早く強力な魔法使いにして戦力にしていたためだな。
一つの属性、特に攻撃魔法ばかりだったらしい。治癒魔法に関しては光属性を使える者しか扱えなかったから、多くの魔法使いは戦死した。
……いいか?お前が一番適性のない属性は光だ。治癒魔法に関しては使えないと思っておけよ」
「わかってる」
「本当にか?治癒魔法が扱えないという事は、それだけ無茶はできないということだ。お前って夢中になったら止まらないで突っ走ってくだろ。これからは自重することを頭に入れておけよ?」
「はーい」
「……」
小言に少し機嫌を悪くしたクロノが適当に返事をすると、エイトは容赦なくクロノの頭を傍に置いてあった分厚い本でぶっ叩く。
「いったっ!」
「これは忠告だ」
涙目でエイトを見上げたクロノに、エイトは眉間に皺を寄せ、怒りを滲ませた声音で静かに言った。
「お前は才能がある。きっとすぐに多くの強力な魔法を使えるようになるだろう。
だが、魔法とは代価や代償と引き換えの奇跡。それはほとんどが魔力だが、中には使い手の命すら削っていくものもある。強力になればなるほどに、そういったものは増えていく。今のままのお前なら、自分の興味や何か他のもののためにそれらに手を出しかねない。
だから約束しろ。危険なものには手をださず、自分のことを第一に考えるって」
真剣なエイトの言葉に、有無を言わせぬ雰囲気に、クロノはおずと頷いた。
けれど、結んだ約束は既に破られている。
今のクロノにとって第一なのはエイトであり、自分になりえはしない。
少しの後ろめたさを感じつつも、エイトの言葉をクロノはしっかりと胸に刻んだ。
たとえ守る事はできずとも、エイトがこの約束を持ちかけてくれたことが、クロノの身を案じてくれているという事実が、クロノには嬉しくてたまらない記憶となったから。
「お前には……」
「え?何て言った?」
ぼそっとエイトが何かを言ったが、小さすぎてクロノは聞き取る事ができなかった。
「いや、お前って約束とかすぐ破るから信用ならんな~と」
「っ、悪かったね!」
「おーっ、悪いと思うようになるとは、成長したな~」
「子供扱いするな~~~っ!!!」
図星をつかれて顔を真っ赤に染め言い返すクロノを、エイトは上からからかうばかり。
クロノは嫌で仕方が無いのに、そうやってクロノをからかっている間のエイトがあまりにも楽しそうに笑うせいで嬉しくなり、ぐるぐると渦巻いた矛盾した感情を吐き出すようにひたすらエイトを殴った。
「おい、やめろってば」
「うるさい~!」
「ったく、しょうがないな」
真っ赤な顔でぽかぽかと非力に自分を殴るクロノを、エイトは呆れたように笑って気の済むまでやらせておくのだった。




