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「「……」」
つい大きな声を出してしまったクロノは、黙ってしまったエイトから視線を逸らした。
エイトは何も言わずにただクロノの真意を推し量ろうと見つめる。
探るような視線に冷や汗をかきながらも、クロノは頑として口を閉ざしたまま。
その、気弱そうに見えて決して意思を曲げる気は無い姿に、エイトはある人の面影を見た。そしてしばらくすると、降参だと言うように息を吐いて両手をあげた。
「……わかったよ。俺の負けだ」
「っ、じゃあ!」
「あぁ、しかたねーからお前を専門魔道師にしてやるよ」
「ありがとうエイト!」
先ほどとは打って変わって、心底嬉しそうに見つめてくるクロノの姿に、
エイトは苦笑し静かに呟いた。
「そういうとこほんと……」
「え?」
聞き取れなかったクロノが首を傾げると、エイトは「何でもねーよ」と言って、
誤魔化すようにクロノの頭を撫で回した。
刹那、真面目な顔をしたエイトはクロノの頭に手を置いたまま言った。
「ひとつ、聞きたいことがある」
「……」
急に専門魔道師になると言い出した理由を聞かれると思ったクロノは顔を強張らせた。
約束を破って家を出ただけじゃない。
エイトの後を追い、きっと聞かれたくなかっただろう話を盗み聞いた末の話だ。
怒られるだけですむとは思えない。
きっとエイトは専門魔道師にすること自体をやめると言い出すだろう。
必死に頭を回転させて言い訳を考えていたクロノに、エイトは寂しそうに問うた。
「光属性の魔法は、もういいのか?」
「!!」
予想外の言葉にクロノは固まる。
しかしすぐに、もうとっくに答えの出ていた問いだと微笑んだ。
じっとクロノを見つめ答えを待つエイトに、クロノはゆっくりと、けれど確かな口調で自身の決意を話した。
「僕は、やっぱり光属性を専門にすることはできないんだよね。
ずっと、エイトの魔法を見たときから憧れてきた。いつか僕もって……。
きっと専門魔道師になったら光属性がだめだめな僕はずっと使えないままだろうね。……でも、それでも僕は専門魔道師になるよ。
早く一人前の魔法使いになって、エイトの隣に立ちたいんだ」
「……そうか」
エイトは強い志を秘めた瞳をしてそう言ったクロノの頭を、もう一度めちゃくちゃになるまで撫で回した。
「今日はもう寝ろ!明日から忙しくなるぞ!」
最後にクロノの頭をぺしぺしと軽く叩いてそう言うと、エイトはさっさと背を向けて自身の部屋へと向かっていった。
向けられたその背中に少しの哀愁を感じたクロノの胸はちくりと痛んだ。
それでももう止まれないという決意は、胸の痛みを抱えたまま、尚もクロノの歩を進ませるのだった。




