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花のない薔薇  作者: 愁
四章 闇の魔法使い
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「時間が無いのだ。王がどれだけお待ちくださるかわからない以上、我々だけじゃない。おまえ自身も危険だと理解しているのか?」


「俺のことはいい。だが、あいつを巻き込むのは止めてくれ」


「ではお前は何のためにあいつに魔法を教えているんだ?」


「それは――」


クロノはそこまで聞いてそっとその場を離れた。

段々と歩幅は大きくなり、いつの間にかクロノは走り出していた。


時間が無い?王?


クロノにはわからない事だらけだ。

けれど、一つだけはっきりとわかることがある。


早く魔法使いにならなきゃ、エイトが……っ!


「っ!!」


そうだ、と焦るクロノの脳裏に蘇ったのは、前にエイトの部屋から持ってきた本に載っていた存在。そのときは関係ないと思い、詳しくは読まなかったそれが今のクロノには唯一の光に思えた。



息も絶え絶えに家に帰ったクロノは、本を探しにエイトの部屋へと駆けて行くと、沢山の本の並んだ本棚から、あやふやな記憶を頼りに目当ての一冊を手にとった。


紙が皺になることも、指の先が切れることも厭わずにページを捲って、捲って、

クロノはようやくその記述に辿り着いた。


「専門、魔道師」


そっとその記述をなぞった後に血がついて、指を見れば紙で切ったところから血が出ていた。走って来たからか、耳の奥では鼓動が大きく聞こえる。

それらに気づいて少しばかり冷静さを取り戻したクロノは、大きく深呼吸をして呼吸を落ち着けてから、本へと目を落とした。


一通りの内容を読み終えたクロノの中に、迷いが無かったといえば嘘になる。

けれど、瞼の裏にエイトの姿が浮かんで、クロノの中の迷いはすぐに消え去った。


決意はストンと胸の中に落ち着いて、迷っていたことは全てあっという間に切り捨てられる。


本を閉じ、前を見据えたクロノの瞳に、迷いは一片も無かった。



「僕、専門魔道師になるよ」


それを聞いたエイトの目が見開かれたのは言うまでもない。


夕食の席でまっすぐにそう言ったクロノに、エイトは戸惑いながら問いかけた。


「何でだ?専門魔道師を選んだら、お前はその属性以外ほとんど使えなくなるぞ。メリットがないだろ」


「わかってる」


「わかってるって……答えになってないだろ」


馬鹿馬鹿しい、と溜息を吐いたエイトは、席を立った。


「今日の話は忘れてやるから、明日からは今までどおりに訓練をするぞ」


「それじゃダメなんだ!」


バンッと机を叩いて言ったクロノ。


その瞳があまりにも必死そうで、エイトは思わず息を呑んだ。

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