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クロノが魔法の訓練を始めて数ヶ月。
近頃はエイトが毎日のように村人に呼ばれては、どこか疲れたような思い詰めたような表情で帰ってくる日が増え、クロノは不安を募らせていた。
「なんか厄介なことでも頼まれたのかな?」
一人呟いた言葉は、主のいないエイトの部屋で静かに消える。
先ほどからクロノの持っている本はページが捲られないままだ。
今日も今日とて呼ばれたエイトは、クロノとの訓練を一時中断して家を出ていた。
取り残されたクロノは、読みかけだったエイトの本を読んで時間を潰そうとしていたが、それも上手くいかずにいる。
「探しに行こうかな」
無意識に口にしたそれは暇を持て余していたクロノ自身の心を躍らせた。
家で待っているようにエイトに言われていたが、エイトが遅いから迎えにいくだけだと、言いつけをやぶることを正当化してしまったクロノは止まらない。
本をもとあった場所に戻すと、そそくさと家を飛び出し、エイトがいるであろう村長の家の方向へと走り出した。
もともと人が少ない村のため、クロノは誰かに見つかることもなく村長の家へと辿り着いた。
こっそりと中を窺える窓部分にまわりこむと、クロノは背伸びをして客間のはずの中を覗きこんだ。
思ったとおり、部屋には村長と数人の村人、そしてエイトがいる。
耳を澄ませば、微かに中の会話が漏れ聞こえた。
隠れたり盗み聞きしたりは悪い事だとわかっていたが、歳相応にいたずらな一面があったクロノは、まるで冒険でもしているかのような高揚感でいっぱいだった。
クロノはバレないかとどきどきしながら息を潜めて聞こえてくる会話に集中した。
「まだ使えないのか?」
「だから、毎日毎日同じこと聞かれても答えは同じだ!」
何やら村長の問いに、エイトは苛立ちを隠すこともなくに反論しているようだ。
いつもクロノに対して怒ることなど滅多にしないエイトの怒声に、クロノは自分が言われているわけでもないのに身体をびくつかせた。
おそるおそるそのまま聞き耳を立てると、すぐにエイトの声が聞こえる。
「魔法使い一人育てるのにどれだけ時間がかかると思ってる!?
まだ訓練始めて数ヶ月だぞ!?」
その言葉に、クロノは息を呑んだ。
どうやらエイト達はクロノについて話をしているようだった。




