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その日の夜、二人は食卓を囲みながら今日の訓練についてを振り返っていた。
並べられた料理のほとんどは、簡単なものだがクロノがつくったものだ。
男の二人暮らしだがエイトは忙しくていつ急用が入るかわからない。
出来て損はない、とエイトは魔法を教え始める少し前から料理を少しずつクロノに教えていた。
完全にエイトの趣味で酒の肴にしか思えないようなものもいくつかあり、エイトはそれを美味そうに食べながら口を開いた。
「なんつーかほんと、光属性はてんでだめだな。他はそこそこ扱えるのによ」
「……わかってる」
エイトの魔法を見て以来、光属性にこだわりがあったクロノにその言葉はぐさっと突き刺さった。
もともと光属性には適性が無く、不得手であることはわかっていたが、想像以上のだめさにエイトもお手上げ状態だ。
「俺、教えんのは苦手なんだなぁ」
溜息をついて酒を仰いだエイトに、クロノは慌てて口を開いた。
「ち、ちがう!エイトの教え方は上手いし、わかりやすいよ!料理だってもうこんなに作れるようになったし!だから……」
卓上に置かれたこっているとは言いがたい夕飯と必死そうなクロノを交互に見て、エイトは我慢する事も無く吹きだした。
「え!?なに!?」
頬を赤くしながら抗議するクロノの頭をエイトは口角を上げたまま撫で回す。
「そーだな!お前、嫁さんとかむいてるんじゃないか!」
「はぁ!?嫁って、僕男なんだけど!?」
「いーじゃねーか!はははっ!」
「ちょっ、エイト!」
これだから酔っ払いは嫌なんだ、とクロノは思いながらも、エイトと軽口を叩いて過ごせることは嬉しくて、いつのまにかつられて笑っていた。
――…コンコン、と家の扉をノックする音が、賑やかだった食事に水をさした。
「はいはい、今行きますよー」
「ちょっとまって!」
椅子から立ち上がって扉に向かうエイトをクロノは引き止める。
いつも家に居るときの、袖をまくっているよれたシャツ姿のまま客人の前に出ようというエイトに、クロノは急いで近くに置かれていた薄い毛布を投げた。
「それ羽織って!」
「なんでだよ?」
「いいから!ほら、早く!」
「んー?わかったけど」
毛布を羽織ったエイトが扉を開けると、老齢の村長が居て、エイトに小声で何かを言った。それを聞いてエイトは頷くと、クロノに「少し出てくるな」と言って家を出ていってしまう。
「まったく」
扉が閉まった途端、クロノは呆れたような声を漏らした。
「酔っ払ったエイトに恥はないのか?」
普段のエイトは村の人と会うときはそれなりの格好をしていく。
だが、酒が入るとだめになってしまうため、気を使うのはクロノの仕事だった。
そしてエイトがいない間の家事もクロノの仕事。
食べ続ける気にもなれなかった料理たちを一人片づけると、エイトの部屋につまれた魔法の本から一冊を持ってきて勉強をはじめる。
「……はぁ」
物音のしない部屋にページを捲る音だけが響いて、クロノは溜息をついた。




