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「あー、ところでこの変な煙は何なんだ?」
「ちょっと新しい魔法を考えてた子が盛大に失敗しただけよ。よくあることだから」
「よくあるのか……」
つんつん頬をつつかれている未だ顔色の悪いギノアは、この煙の強烈な臭いで今度は吐きそうになっている。
だいぶ風に流されて消えつつはあるが、風向きは王宮の方角。
あと少しすれば王宮の方から臭いへの阿鼻叫喚が聞こえてくるだろう。
同時に研究所へのクレームも殺到するだろうがそれはクロノには関係ないことだ。
「そういえば随分と遅い到着だったわね。団長さんからそっちに向かわせたって連絡あったのに全然来ないんだから」
アイジスは実に細かく面倒な性格をしている。
連絡があったと聞いたクロノは、性悪そうに笑うアイジスを想像して苦虫を噛み潰したような顔をした。
それをくすくすと笑いながら、地面に転がっているギノアを小脇に抱えると、ルーエンは開かれたままだった扉に向かう。
「さ、オシゴトよ、クロノちゃん。待たされた分働いてもらうからね?」
「はいはい」
振り返りながらウィンクをしたルーエンに、クロノは引きつった笑みを浮かべた。
・・・・・・
扉を入って右手には下へ続く階段があり、研究所はその先にある。
地下へ研究所を造ったのは、もし敵襲で爆破されようとそう簡単には壊れないようにだとか。
ちなみに地上の建物は来客があったときの接客に使われている部屋や、泊り込みがちな研究員の仮眠室などがある。
研究所に足を運ぶ事はあっても泊り込むことなどまずないクロノはもちろん地上の部屋を使った事はない。
前を行き階段を下りるルーエンの頭を見下ろせる状況に若干優越感を感じながらクロノが辿り着いたのは、またも立ちはだかる巨大な扉の前だった。
「クロノちゃん、ちょっとこの子持つの代わってくれる?」
「え、やだ。その辺転がせばいいじゃん」
「もう、先輩なんでしょ?後輩の面倒くらいみなさい!」
「わかったから……」
頼むからいい歳して頬を膨らませながら怒るとかやめてくれ。
クロノはギノアを背中に渋々背負う。
「うぐっ」
意外と大型犬だったギノアの重さに潰されそうになりながら必死に足を踏ん張って耐えるクロノ。
「なんだかそのまま放置したくなってきちゃったわぁ」
「ふざけんなさっさと開けろ変態!!!」
足をプルプルさせながらなんとか立っているクロノににやけ、結局たっぷり時間をかけて眺めた後、ようやくルーエンは扉に向かい両手をかざした。
「魔力認証開始」




