18
二人は椅子に向かい合って座り、ギノアが淹れなおした紅茶を飲みながら話していた。
まだ温かったのに淹れなおしたのは、クロノがもともとはウィルソンのために用意されたものは嫌だと言ったから。
そんな我が儘にも嬉々とした表情を浮かべてすぐに淹れなおしたギノアのことを、クロノは犬のようだと思って苦笑した。
「前に好きな人がいるって言ってたの、アレも俺?」
「う、そうっす。面と向かって言う勇気がなかったんすよぅ」
「ん?でもあの時も好きって言ってたし、その後もけっこう日常的に好き好き言ってたじゃんか」
首をかしげて聞くクロノに頬を染めながらギノアはヤケクソ気味に言った。
「あの時の好きは親愛的な意味の好きっす!あと、いつものはその、別じゃないっすか!」
「何が別なんだよ?」
「言いたくなるんすよ!ちゃんと先輩に伝えるっていうより、言いたいって感じなんす!言えれば満足なんす!」
「はいはい、一回落ち着けって」
「じゃあなでなでしてください」
「断る」
「即答はやめてくださいよ~!いいじゃないっすか、減るものでもないし!」
「めんどいなぁ」
そう言いつつ頭を撫でるクロノに、ギノアはご機嫌になる。
ご満悦、という表情を浮かべたギノアにクロノは聞いた。
「で、結局なんで会おうと思ったんだよ?」
「先輩が好きだからっす」
「意味解るように頼む」
熱い紅茶をふーふーと冷まし、一口飲んでからギノアは口を開いた。
「……王様も先輩のこと、好きみたいだったから。
俺は俺が一番先輩のこと好きだって思ってるんで、会って、俺がどんだけ好きか話して、諦めてもらおうと思ったんす。あと先輩が王様のことになると俺のこと見てくれなくなるのも嫌だったんで」
「……そう」
「まぁ、王様はそんな俺の考え解ってて面白がってる節ありましたけど」
「……」
「先輩、王様も俺と同じくらい先輩のこと大好きっすよ?俺の方が上っすけど」
手に持った紅茶に映る自分を虚ろに眺めていたクロノは、ギノアの言葉に自嘲的に笑って顔を上げる。
まっすぐにギノアを見てクロノは吐き出すように言った。
「知ってるよ、あの人が俺のことどんだけ想ってるかなんて。
だって、それで“私”は愛してる人を失わないといけなくなったんだから」
クロノの口から出た過去を匂わす言葉にギノアは思わず目を見開く。
見つめた先のクロノは不安そうに、それでも目をそらさずにいる。
「なぁ、ギノア。
話してしまったら、お前は幻滅するかもしれない。でも俺はお前に知って欲しいって思うんだ。お前なら、もしかしたらって……。
ちゃんと話せるかは自信ない。今でも、思い出すと辛いんだ。
それでも、聞いてくれるか?
酷く愚かな、魔法使いの昔話を――……」
大好きな人が、自分に知って欲しいと決意をしてくれたこと。
不安や辛さを抱えながら、それでも真っ直ぐに自分を見て、語ろうとしてくれること。
嬉しい、だけじゃ足りない思いが胸を満たして、ギノアは泣きそうになるのをこらえて微笑んだ。
「もちろんです!」




