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リリスの大捜索は昼近くまで続いていた。
王宮内だけでもかなりの広さだ。
たった一人では走り回ったとしても全て見て回るのに時間がかかってしまう。
そのうえ、リリスの捜し人が一箇所に留まっている保証は無く、すべて見て回っても見つからない可能性もあるのだ。
いつも休憩に使っている数箇所の内にいるだろうと高を括っていたため、空振りに終わった時リリスが人を殺せそうなレベルで苛立っていたのは言うまでもない。
普段ならば美しく流れる髪も、今は荒々しく振り乱されている。
その状態で肩で息をしてかつ殺気を放っている姿に、通り過ぎる人々は皆びくついて小走りだった。
「次は一階……」
王宮の上層階から下にかけて見て回っていたリリスは、何とか後は一階を残して全てを見て回った。
空気を呼んで上の階に居て欲しかった。
リリスは、見つけ次第一発殴ってやる……と怨念を力に変えて廊下を歩き始める。
まずは顔見知りの多い騎士団の詰所を目指す。
ふと自分のぼさぼさな髪に気をとられて、今の格好では元副騎士団長の名折れだとリリスは自嘲した。
全部誰かさんのせいである。
平穏な昼時に場違いな殺気がおさまる気配は無かった。
・・・・・・
クロノはサロンの入口が見えた所で足を止めた。
「何だ?」
視線の先にいるのは四人の騎士。
単なる物好きということもあるが、揃いも揃って居住まいを正した状態で棒立ちのままだ。
以前にも似たようなことがあったのを思い出し、クロノはゆっくりと後退した。
リスクは犯さないに限る。
クロノがその場を立ち去る事を決めた瞬間――…
「ちょうどいいところに」
ぽん、と肩に手を置かれて振り返ったクロノの目に映ったのは、見覚えのある顔だった。
「あんたは……」
「どうも、顔くらいは覚えていましたか?」
そう言って現王の補佐・リリスはにっこりと笑った。
表面上爽やかに見える笑顔をしているのに、滲み出るどす黒いオーラは鬼気迫るものがある。
クロノは肩に置かれた手を振りほどこうとリリスから離れるように足を引くが、笑顔のまま手にさらに力を込めれて逃げられなかった。
あまりの力と気迫に涙目になりながらクロノは心の中で叫んだ。
こいつ、レイルと同じ人種か!?
クロノはレイルで十二分に知っていた。
常に笑ってるような奴の笑顔は信用ならない。
むしろ、強かで恐ろしい証拠なのだと。




