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魔道師団所属研究所は、主に古代魔法や新種の魔法の発見・研究を生業としている、研究者(変人)の仕事場(巣窟)である。
ここでのクロノ立ち居地はある魔法の専門家、といったところだ。
研究所は王宮からは離れており、一応は王宮の敷地内だというのに何故か周囲は生い茂る草木に囲まれて森のようになっている。
木の扉は古く、蹴ったらソッコーで穴が開きそうな脆そうな見た目をしているが、これでも魔法の研究所。
セキュリティーやらは無駄に多重でかけられているうえ、入るときだけでなく、出るときも仕掛けが組まれている。ちなみに出入り口はここだけ。
もはや馴れっこなクロノは扉の隙間から変な紫色の煙が出ていようが無表情でいる。
明らかに毒々しいその煙から身を守るように、ギノアは真顔のクロノの後ろに隠れているが。
「先輩、これはまずいんじゃないでしょうか?中で人が死んだりしてませんかね?」
「んー…。一人ぐらいは死んでてもいいかもな」
クロノが真顔のままそう言うと、扉の向こうからダダダ…と人が走ってくる足音が聞こえた。
物凄い勢いのそれは段々と扉に近づき、ばーんっと扉が開かれた。
「ぎゃあっ」
あたり一面に紫色の煙が充満し、何ともいえない悪臭にギノアが叫ぶと、煙の中から人が出てきた。
「やっと来たわね!クロノちゃんっ!」
紫の煙をバックに仁王立ちしていたのは、長身でどピンクの髪をした、オネエ。
白衣を紫煙になびかせるその人物は、クロノの陰に隠れていたギノアを見て目を見開いた。
「あ、あなた……!」
あちゃーという顔をしているクロノに対し、状況が理解できずに白衣の人物とクロノを交互にみるギノア。
わなわなと震えたその人物は、ギノアに向かって駆け寄った。
全速力での突進とも言う勢いで。
「ひぎゃあっっ!!」
華麗によけたクロノによって盾を失ったギノアは、突進した人物に抱きつかれると、そのあまりの力に骨が軋む感覚を感じて半泣きで叫んだ。
「かぁんわいい~~!子犬みたぁい!クロノちゃんこの子誰よ~!」
「せ、せんぱ…(がくっ)」
うなだれ泡を吹くギノアにさすがにまずいと思い、クロノは苦笑いで答えた。
「可愛いのはわかったが、死にそうだから放してやってくれないか?ルーエン」
「あら、ほんと。ごめんなさいね、可愛いものだからつい」
ぱっとギノアを解放したルーエンは、バツが悪そうに頬をかいた。
地面に突っ伏したままのギノアをつんつんしながらクロノはルーエンを見上げる。
相変わらず悪趣味な髪の色をしている。
だが不思議と似合ってしまうだけの顔とスタイルを持ち合わせ、赤縁の眼鏡の向こうから覗く漆黒の瞳は柔らかだ。
白衣のオネエ、ルーエン。
変人の集まりである魔道師団所属研究所、その筆頭の所長は彼であり、クロノを呼び出した張本人である。




