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花のない薔薇  作者: 愁
第三章 一歩
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 翌日、起きてすぐにクロノは違和感を覚えた。

実に爽やかな目覚めだったのだ。

なんの問題も無い良い一日を過ごせそうな、最高の目覚め。


つまり“邪魔がなく静か”なのだ。


それが普通かもしれない。

だが、ここ最近のクロノにしてみれば異常なことだった。


「……ギノアが来ない」


壁にかけられた時計はもう出勤時間ぎりぎりをさしている。

普段ならばギノアが焦りに焦って泣き叫びながらクロノを急かしている時間だ。


「あいつ寝坊したのか?」


自分のことを棚にあげてクロノは思った。

とりあえず遅刻決定だと開き直っていつも通りに朝の支度を始める。


後でギノアを起こしに行ってやろうか……と考えて、クロノは自分がギノアの部屋を知らないことを思い出した。

今の時間帯に寮に残っている人物などクロノくらいで、誰かに聞くことも出来ない。


「しょうがないか」


即座にクロノはギノアを置いていく判断を下した。


たまにはギノアがしっかりしていない姿を拝んでみたくなった、というのはクロノだけの秘密だ。



「ギノア?今日はお休みだって聞いたよ?」


急かす人物のいないクロノはそれはもう堂々と遅刻をかまし、レイルに発見されて説教をされた後にそれを聞いた。

いつも小うるさく「遅刻ダメなるべく!」といっている奴が遅刻してくる様を悠々と眺めてやろうというクロノの願望は叶わなかったが、落胆してすぐに思考は前向きに切り替わった。


うるさいのがいないってことはサボリ放題なんじゃ…?


そんなクロノの考えなどお見通しなレイルはにっこりと自分の手伝いを命じた。

目はまったく笑っていなかったが。


「そういえば、何でアイツ休みなんです?」


整理する書類を押し付けられながらクロノは疑問を口にした。


「さぁ?僕はアイジスに休むと連絡があったことしか知らなくてね。あ、サインしてあるの確認したらそれ全部アイジスのとこに持っていってくれる?」


「はいはい」


なるべくゆっくりと書類の確認をしながらクロノはギノアのことを考える。


いつも朝っぱらから押しかけてくるギノアが、休みだからといって自分を放置はしないはずだ。風邪……馬鹿だから違うか。


直接連絡を受けたアイジスに聞くのが一番手っ取り早いと判断し、クロノは書類に意識を戻す。

だがそこはサボリ魔。

手っ取り早いからといってアイジスのもとに行く為に書類確認のペースを上げることはしなかった。

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