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二人は詰所にある休憩室でギノアの淹れた紅茶を飲んで一息ついていた。
つい先日レイルに教えてもらったばかりだというのに、ギノアの淹れた紅茶の味はなかなかのものだ。
「お前ってほんと飲み込み早いよな」
「えへへ、そうっすか?」
「……やっぱ嘘だ今の」
「えぇっ!?酷いっすよ!ちゃんと褒めてく~だ~さ~い!」
へらへらとしだしたギノアに何だかイラっときたクロノ。
冷めた目にも負けずにギノアはクロノに詰め寄る。
ちなみに、二人は隣に座っている。
何に邪魔される事もなく、そのままギノアは気の向くままクロノに抱きついた。
「あー、もう重いっつの」
「とか言っても離れようとしないとこが好きっす!」
「次から蹴り飛ばすか殴り飛ばせばいいんだな?」
「スミマセン」
しゅんとして大人しく離れたギノアに、クロノは少し悪い気がしてギノアの項垂れた頭をぽんぽんと撫でてやる。
途端に嬉しそうに頬を緩めるギノアにクロノは微笑んだ。
「やっぱり先輩が一番っす」
「何の事だ?」
「なでなでっす」
「お前って色んなやつに撫でられてんの?」
「嫉妬します?」
「するか」
むすっと口を尖らせて拗ねるギノア。
それでもしばらく大人しく頭を撫でていると段々と口角が上がってくる様子に、クロノは堪らず小さく吹き出した。
「ちょ、なんすか!?」
「いやっ、ぷっ、なんでも、ふはっ」
「なんでもなくないじゃないっすかぁ!」
いよいよ涙目になってきたギノアにさすがにクロノは笑うのを止める。
「悪かったって」
「む~、簡単には許さないっす」
「何が望みだよ?何でも聞いてやるから機嫌なおせ」
椅子の上で器用に体育座りをして小さくなるギノアに苦笑しながらクロノが聞くと、ぴくっとギノアが反応する。
体育座りをしたまま横目でクロノを見たギノアの目は、微かに細められていた。
「先輩、言ったっすね」
「……?」
「なんでもっすよ!絶対ですからね!」
「お、おう。出来る範囲内のことに限るけどな」
「それでいいっす!」
「何かやけにテンション高くないか?」
「気のせいです」
何にしようかとにこにこ、否、にやにやとも言える表情で考えているギノアに、クロノの背中を冷や汗が伝った。
もしかしたら、この後輩は食えない奴なのかもしれない。
一抹の不安がクロノの中に芽生えた。




